十七歳の年が終戦だったんだよ。で、父親が、長女のあたしに
“機織りでもして、生活していけるようにしたほうがいい”って言うんで、
十五歳の頃から機織りの道に入ったんだよ。
父親が戦争にとられたら、女ばかりで家族が食えなくなるだろ。
戦争中は随分兵隊さんの国民服を織ったんだよ。
脚絆って知ってるかい?兵隊さんが足に巻くやつさ。あれも織ったよ。絹でさ。
随分たくさんの人が、それ身につけて出兵したんだよ。
生きて帰ってきた人もいたけど、亡くなった人も大勢いたのお。
機織りはそれから十年くらいしてたかの。
糸引きは嫁にきてから随分経ってだよ。
娘時代に機織りしてたからさ、どういうのが良い糸かってのがわかるんだいね。
だもの、仕事は丁寧にやるよ。

© Fujimi Kawase
絹の道|川瀬富士美|TOP EXHIBITION WORKS