| エッセイを書いていこうというコラムです。"Forum"というコンセプト ですから、同好の友人や、未知の人からのメールなども ご紹介いたします。
全く抽象的な記号である文字をひとり営々と紡いでいく作家、いつの間にか精神の中に新しい現実を作り直されてしまう読者。 …続きはまた後で。 ヒマラヤ・エヴェレスト三題 ■『神々の山嶺(いただき)』上下 集英社 エヴェレストに関し、いつかまとめて読もうと買っておいた本を数冊重ねて積んでおいた。それに加えるべく気になっていた本があった。夢枕獏『神々の山嶺』。この上下二巻をある日BookOffで発見した。もともと定価の半額のところ、なんとこの日は書籍2冊で¥1,000のセールの日であった。¥3,524が¥1,000だ。店内CMのとおり新本同様の良好な状態。ついでに『小川国夫』全集の第6巻、沢木耕太郎『彼らの流儀』と合わせて即購入。帰ってすぐ読み始めた。得した上に面白い。幸せな日々が始まった。 夢枕獏という作家については、『陰陽師』シリーズなどが引っかかって、どうも私の好みではないが、この本については別と考えていたので、いつかはと思っていたのである。だからあえて新本ではなく、BookOffに出るまで待っていたのだ。万一外れてもまあ何とか気を取り直すことができる。それが、文庫版の新本価格より安くて読みやすいオリジナル版だ。それがまずハッピーな気分にしてくれる。 読み進むうち、調査と取材に時間をかけて書き上げたことがわかる。エヴェレスト(チョモランマ)登頂については歴史的な背景、事実関係をおさえ、それと矛盾させずにフィクションとしてしっかり構成されている。まあ、エンターテイメントとしての作品なので、ストーリーの展開が都合よすぎるところはあちこちにあるのだが、そんなところではいちいち立ち止まらないほうが楽しめる。 エヴェレストの初登頂については、有名なジョージ・マロリーの謎があるが、この本でもそれが出てくる。主人公がマロリーの遺体と遭遇するのだが、その状況が後に発表されるものと違っている。それは、著者がこの本を書いた時点では遺体がまだ発見されていなかったからで、その部分は想像するしかなかったはずで、仕方がない。ただし、マロリーが持って登ったはずのカメラに関しては、『そして謎は残った―』と一致しており、作者が事実には敬意を払っていることがわかる。むしろこっち方が詳しく書いているので、嬉しいような気分になる。 そのうちつづく 関連して今回読んだのは以下の本。 ■『そして謎は残った―伝説の登山家マロリー発見記』
1999年に組織された調査隊の記録。1924年に消息を絶って以来謎とされてきた伝説のクライマー、マロリーの遺体が発見された状況を写真とともに詳しく記述したドキュメンタリー。ただ、マロリーがアーヴィンとともに頂上に到達したのかどうかについては、謎のままとしている。決定的証拠となるはずのカメラも発見されていない。『神々の山嶺』でもこのカメラが問題の発端となるのだが、こっちでは発見されたことになっている。ただしフィルムは見つからないのだ。 本来のテーマは調査記録だが、エヴェレストをはじめとするヒマラヤ登山が実際にはどのように行われるものか、1921年のイギリス隊以来の歴史的な変遷と現状について、また、BBCなどメディアのかかわりなど、内側の事情にも詳しく触れている。 「そこに山があるから」という言葉に象徴されるような、純粋な冒険とロマンは、残念なことにもう無いようだ。その時、その場では、過酷な自然環境と人間の野心という現実がむきだしの姿を露呈する。 ■『凍』 もともと雑誌「新潮」に掲載されたものだが、その時新聞の書評に短くコメントされていたのが気になり、本屋に行ってみたが売り切れだった。いずれ単行本として出版されるだろうと思っていたところ、思いのほか早くで出た。10月8日、碁会所へ行くついでに普通の本屋で内容を確認し、購入。(タイトルが変更されていた) 沢木耕太郎の本はかなり読んでいるが、これも期待にたがわずじっくりと取材に時間をかけてまとめた力作。昨夜一度寝た後、なぜか目が覚めたので、そのまま明け方まで後半を一気に読んだ。 ■『氷壁』 初めて読んだのはだいぶ前、40年も昔のことだ。文庫だが、そのカバーの写真に惹かれるものがあり、以来登山というロマンチックな行為になんとなくあこがれを持つことになった。パートナーどうしの絶対の信頼関係を結びつけるザイルをキイとするミステリー・ロマン、と今なら言ってしまうが、この作品、その中の人物関係は『神々の山嶺』を読みながらずっと念頭にあった。時代も背景の山(こちらは穂高や谷川岳など)も違うけど。 ■「National Geographic」誌 エヴェレスト特集 映画(LD, DVD) ■「K2」 ■「クリフハンガー」 株式会社 情報デザイン mailto: ryoksmt@mail.wind.ne.jp Copyright by Joho Design, Inc. 1998-2007. All Rights Reserved. |