甲状腺のしこり と 腫大  甲状腺ホルモンの病気   

日常よくみられる代表的なもの

甲状腺腫 Thyroid adenoma   腺腫様甲状腺腫Adenomatous Goiter

甲状腺にできる良性の腫瘍です。 腺腫は比較的形の整った楕円形のしこりで くりっとした比較的軟らかな腫瘤です。 徐々に大きくなることがありますが、多くは問題ありません。  一方、腺腫様甲状腺腫は形がいびつでやや硬く、多発することもあります。 いずれも小さなものは経過観察とします。  悪性が疑われる場合や短期間で大きくなるものは癌との鑑別のため、組織診や細胞診を行います。  良性でも大きさがおおむね3-4cm以上で、特に圧迫感や症状があるものは手術を考慮します。   (手術の適応は必ずしも大きさだけではありません) 定期的な検査をすすめます。(4-6か月毎  変化ないものは1年毎)

甲状腺のう胞 Cystic disease

甲状腺にふくろのようなしこりができます。中に甲状腺の分泌液がたまって、徐々に大きくなることもありますが、おおくは無症状です。 多発することもありますが、ホルモンへの影響や機能低下など症状はほとんどありません。 治療の必要はありませんが、ある程度定期的な検査(半年から1年毎)をおすすめします。

特に大きい場合は 穿刺して中の水分を抜いたり、経皮的エタノール注入療法を行うことがあります。

橋本病 (=慢性甲状腺炎 HasiomotoDisease) 

甲状腺の自己抗体により慢性的な変性、リンパ球浸潤が起こり、腫れが起こります。甲状腺全体の硬さ、あるいは腫れが症状です。 軽度のうちは甲状腺機能は正常ですが、長い経過のうちに甲状腺機能低下をきたすことがあります。ホルモンが低下してくると、疲れやすい、むくみ、便秘、月経異常、不妊症、寒気、意欲低下 など様々な症状が出ることがあります。 甲状腺ホルモン剤を内服することで軽快します。
また まれに一過性に炎症を起こし増悪することがあり、ホルモンが高い状態になることもあります。 食べ物は ヨードの取りすぎに注意してください。(海草、のり、昆布、ヨード卵、ポピドンヨードを含むうがい薬など)。  機能低下のままですと、不妊症の原因になったり、妊娠しても胎児の発育不全になったりします。妊娠した場合は特に甲状腺ホルモンを正常に保つ必要がありますので、産婦人科との連携が必要です。

甲状腺機能低下症 Hypo-thyroidism 

慢性的に甲状腺ホルモンが低い状態です。  ほとんどは橋本病が原因ですが、先天性や続発性のものもあります。 疲れやすい、だるい、むくみなど全身症状がつよければ ホルモン補充療法をおこないます。

甲状腺機能亢進症 (ほとんどはバセドウ病 、まれに機能性腫瘍あり) Hyper-thyroidism  

バセドウ病が有名ですが、みずからの甲状腺を刺激する自己抗体により甲状腺のホルモンが分泌過剰になり、代謝が亢進し、様々な症状がでます。軽症では無症状ですが、進行すると、甲状腺腫大、動悸、頻脈、発汗、眼球突出、手のふるえ、いらいらなど。 さらに心房細動などの不整脈、体重減少、など全身症状が強く出ます。放置した場合、心臓疾患や血栓症、脳梗塞の原因になります。 バセドウ病甲状腺機能亢進症は必ず治療が必要ですので、抗甲状腺剤の内服と定期的な検査をします。 手術療法や放射線療法が適応になることもあります。 また、女性の場合、不妊や早産、流産の原因にもなります。まれに妊娠早期に一過性の甲状腺機能亢進症をおこすことがありますが、つわりの強い場合は要注意です。

頻度はまれですが、機能性(ホルモン産生性)の腫瘤もあります。 内服あるいは手術が適応です。

亜急性甲状腺炎 Sub Acute thyroiditis  

一過性の甲状腺炎です。多くの場合、カゼ、上気道感染症、咽頭炎、インフルエンザなどから続発性に甲状腺が炎症を起こした状態です。通常、軽度ですがホルモンが高い機能亢進症を起こします。 甲状腺の軽度の腫れと痛みを伴います。 治療は、一時的に抗炎症薬やステロイド剤などで様子をみることが多く、バセドウ病のようなホルモン抑制の治療は行いません。  亜急性 の意味通り、数週間から数カ月で治癒します。

             ☆           ☆

甲状腺は前頚部の喉頭(のどぼとけ)のやや下にあり、ふつうは触れません。しこりや腫れが起こると硬くなるので触診でわかります。 甲状腺ホルモンを分泌し、体温調節や代謝、自律神経などに関わる働きをしています。甲状腺ホルモンの多い、あるいは少ない状態でも腫れが起きたり、硬くなります。甲状腺のしこりは一般的な健康診断や人間ドックでの診察では、早期にみつけることはなかなかできませんが、丁寧に触診することによって発見されやすくなります。 最近では血管年令のための頚部動脈エコーでたまたま指摘されることも多く見られます。  
甲状腺がんの早期発見にはエコーによる検査が有効です。
当院では 甲状腺専用のエコーによる診断と細胞診などの精密検査を行っています。   


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