山登り
山登り
都会で働く、山川春樹さんのレポート

僕の名前は山川春樹、都会の会社に勤める31歳のサラリーマンです。満員電車に乗り、朝早くから会社へ行き、夜遅くまで働く、そんな毎日。僕の日常は、常に時間や何かに追われ、気が休まるときもない。正直、毎日が息苦しいと感じている。最近では、厳しい仕事が祟ってか、体調を崩してしまい、少しノイローゼ気味でした。そんな僕を見かねてか、会社も休みをくれました。
そして、今、僕は、上司に倉渕村の評判を聞いて「癒し」を求めに倉渕村へやって来ています。

●くらぶち村の山のぼりを体験!

僕は、リゾートホテル「はまゆう山荘」に泊っていました。すると、従業員のスタッフに「山登り体験」のツアーがあることを聞かされ、「きっと元気が出ますよ」と、スタッフの人に心配そうに言われました。よほど僕が疲れているように見えたのでしょうね。とりあえず、他にやることもないので、山登りへ参加してみることにしました。

一応、参加はすると言ったものの、山登りは疲れそうだと憂鬱だった半面、「そういえば、山登りなんてガキのころ以来だなぁ」とちょっとウキウキしていました。

上の写真は、倉渕にある「はまゆう山荘」の裏山です。今回僕が登ったのは、季節は7月、セミが鳴く、新緑いっぱいのこの山です。スタート地点は標高800Mぐらい、そこから烏川の源流に向かって登っていきました。三つ葉の原種がスタート地付近に自然発生しており、「イタヤカエデ」が見られました。
●やまのぼりや森について勉強できる

上の写真右側の方は、地元のリゾートホテル「はまゆう山荘」に勤務する塚越さんです。そして、横に写っているのは、今回のツアーで一緒になったOLの方や、老夫婦です。はまゆう山荘では、定期的に、宿泊客の要望に合わせる形で、さまざまなツアーを実施しています。今回は、裏山へ観光客を案内するというサービス。山に詳しいホテルのスタッフが一緒に同行し、山の素晴らしさを体験することができます。

山では、クマやイノシシに遭遇することもあり、非常に危険ですが、このように専門の人と同行することで、安全に登山することができたり、マナーなども学べたりできます。

例えば、山では、入山するときや見通しの悪い曲がり角では、必ず笛を吹いたり、大声を出したりして、山の動物たちへ注意を促します。こうすることで、動物たちの人に対するストレスを解消し、無駄な争いをなくす効果があります。このように山には山の礼儀やマナーがあります。

「へぇ、森の中にも礼儀があるんだぁ〜」と僕は驚きました。クマやイノシシがいるような野生の森林でも、人間社会のようにルールがあって、それを守らないといけない。妙に親近感を抱きながら、僕は、塚越さんの話に夢中で耳を傾けていました。

●同行してくれる「あたたかい倉渕の人」

ホテルのスタッフから聞いた話では、この塚越さんは村の祭りやイベントにも積極的に参加する「頑張り屋さん」です。村のイベントには必ず顔を出す、いわば根っからの「倉渕の人」。倉渕で開かれるイベントへ行けば、必ず塚越さんに会えるそうです。(笑)

塚越さんに対する僕の印象としては、「笑顔を絶やさない、田舎の少年」という感じです。やはり、倉渕の大自然に囲まれて育ったせいか、子供ころの純粋で素直な部分をそのまま持って、大人になれたような人です。もう年齢は40歳を越えているはずなのに、今でも天候や季節が大丈夫なら、週に何度か山へ登っているそうです。体力も少年並みですね。

倉渕へ行くとこうした純粋であたたかい人が出迎えてくれます。

●山は、疲れを癒し、「健康」増進!

いざ山へ入ってみると、上の写真をご覧の通り、僕たちが連れて行かれた山道は、もはや人が容易に歩ける道ではありません。

道は枯れ木や小石でデコボコだわ、沢も歩くわで、最初は、「こんな道を何時間も歩けるかなぁ」と不安でしたが、そんな道であるにも関わらず、森の中へ行けば行くほど、自然と身体が軽くなっていくのが分かりました。厳しい山道でしたが、普段の満員電車のようなべっとりとした嫌な疲れはなく、だんだんと爽やかな気持ちなっていきました。「ぜぇぜぇ」と息を上げながらも、自然と顔から笑顔が出ているのに気がつきました。やはり、きれいな空気があるところでの運動は、人間の身体に何らかの効果を与えてくれるのですね。

●あたらしい発見の連続

また、日常の世界で歩くのと比べると、森での一歩一歩は常に発見の連続でした。たとえば、上の写真は水辺で見つけた山椒魚です。休憩中に、何気なく沢の石をどかしたら山椒魚を発見!あまりにごく自然と、普段はお目にかかれない小動物に出会うことができ、驚きと共に呆れてしまいました。山椒魚は、きれいで澄んだ水のある場所にしか住めない生き物だと聞いたことがあります。そんな山椒魚が、こんな簡単に見つけられるなんて思いもしませんでした。人前であることも忘れ、子供のように大声ではしゃいでしまいました。その時の僕は、自然の中で、何一つ取り繕う必要もなくなったせいか、子供のころのように自然に笑顔を出していました。会社での僕は、常に上司や同僚に気を使い、自分の行動にも気を使っていた。いつからか、自然に笑うことを忘れていたように思います。

上の写真は、ご覧の通り帰り道に発見した山菜です。その日、夕食で頂きました。倉渕村の山では、こうした山菜の宝庫です。

今回、塚越さんに連れて行かれたコースは三時間。残念ながら山頂まではいくことができませんでしたが、確かな充実感を得ることはできました。今度来たときは、必ず頂上まで登ってやると思っています。

「ピーピー」と駅員が笛を吹き、スーツを着た人たちが電車に乗り込む。僕もその中の一人で、汗をかきながら走る。決まった時間に出勤し、夜遅くに帰る、そんな慌しい生活が、今の僕を囲んでいます。

そういえば、「倉渕村では時計を気にすることもなかったぁ」と思い返します。あそこでは何もかもが自由で、時間を気にする必要なんかなくて、ただ自然に身を任せるだけだった。雄大な自然のなかに身を置くことで、また、そこに住む素朴であたたかい人たちに会うことで、本来の自分自身の純粋な部分を取り戻せた。

「あんな体験は、会社ではできないなぁ」と改めて感じます。また都会での生活に疲れたら、必ず倉渕村へ行こうと思っています。そして、「今回は夏に行ったから、冬の倉渕村にも行きたいなぁ」なんて考えながら、働いています。

忙しい時間を忘れに、そして、その中で見失った自分を取り戻しに、また倉渕村へ行きたい、そう考えています。

自分を探せることができる空間
●時を忘れ、自分を探せることができる空間