戻る

第154回国会 法務委員会 第11号
平成十四年四月十八日(木曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 四月十六日
    辞任         補欠選任
     小泉 顕雄君     片山虎之助君
 四月十八日
    辞任         補欠選任
     平野 貞夫君     渡辺 秀央君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         高野 博師君
    理 事
                市川 一朗君
                服部三男雄君
                千葉 景子君
                日笠 勝之君
                井上 哲士君
    委 員
                青木 幹雄君
                岩井 國臣君
                柏村 武昭君
                陣内 孝雄君
                中川 義雄君
                三浦 一水君
                江田 五月君
                小川 敏夫君
                角田 義一君
                浜四津敏子君
                平野 貞夫君
                福島 瑞穂君
   国務大臣    法務大臣     森山 眞弓君
   副大臣     法務副大臣    横内 正明君
   大臣政務官   法務大臣政務官  下村 博文君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局家庭局長   安倍 嘉人君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        加藤 一宇君
   政府参考人
       司法制度改革推
       進本部事務局長  山崎  潮君
       法務省民事局長  房村 精一君
       法務省人権擁護
       局長       吉戒 修一君
       国税庁次長    福田  進君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○政府参考人の出席要求に関する件
○司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正
 する法律案(内閣提出、衆議院送付)

    ─────────────
○委員長(高野博師君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る十六日、小泉顕雄君が委員を辞任され、その補欠として片山虎之助君が選任されました。
    ─────────────
○委員長(高野博師君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案の審査のため、来る二十三日、参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(高野博師君) 御異議ないと認めます。
 なお、人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(高野博師君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
○委員長(高野博師君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に司法制度改革推進本部事務局長山崎潮君、法務省民事局長房村精一君、法務省人権擁護局長吉戒修一君及び国税庁次長福田進君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(高野博師君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
○委員長(高野博師君) 司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○岩井國臣君 我が国は、正に今、大変革期にございまして、明治維新や戦後改革に匹敵する第三の改革期だと言う人も多いわけであります。私もそうだろうと思います。
 小泉改革がどういうものかいまだに分からない点が幾つかございますけれども、司法制度改革につきましても同様でございまして、今進めようとしておられる司法制度改革はどのような法哲学から成り立っているのか、私など素人にはもう一つちょっと分からないところがあります。
 政府は、先ほど、審議会の意見書に基づきまして司法制度改革の計画を閣議決定されました。意見書の段階では抽象的であったものが今回の計画ではかなり具体的になっておりますので、まあ議論の焦点がある程度ははっきりしてきたかと存じます。それでもなお、私のような法律の専門家でない者にとりましては、今度の司法制度改革が政治改革や経済改革とどう関係しているのかいないのか、その辺が分かりにくいということであります。
 そこで、今日は司法書士の問題を切り口にいたしまして、法哲学というか法文化の問題を議論させていただきたいと存じます。
 司法書士の問題は、弁護士の問題と絡んで大変難しい議論を含んでおります。したがいまして、かどうか分かりませんけれども、さきの審議会の意見ではほとんど具体的なことは触れられませんでした。司法書士の問題は、私の考えでは、二十一世紀の我が国における法文化の問題とも絡んでおり、法哲学とももろに関係していると思います。ですから、私は、司法書士の改革法案はもうちょっと後の方で出てくるのかなと、こう思っておりましたから、もう出てきたと、こういうことでちょっとびっくりしておるわけでありますが、もちろん私の場合は、今回の法案について大賛成であります。大賛成でありますけれども、法哲学なり法文化との関係で私なりに確認しておきたい点があるわけであります。
 以下、そういう質問を幾つかするわけでございますが、冒頭といいますか、一番最初にまず教えていただきたいのは、なぜ司法書士の改革法案が真っ先に出てきたのかということであります。
 審議会の意見書では、司法書士についての個別の記述はなく、隣接法律専門職種という一くくりでの記述で書いてありました。しかも、「職種ごとに実態を踏まえて個別的に検討し、法制上明確に位置付けるべき」、そうとしか書いてないんですね。内容的に今回の法案とのギャップが大き過ぎるのかなという感じもせぬでもないわけであります。
 そういうことで、法務省は相当急いでおられるというか無理しておられるのか、そんな感じもするわけでございますが、どのような考え、あるいは調整をされた結果、法案提出に至ったのか、その辺の経過も含めての御説明を願いたいと存じます。いかがでしょうか。
○国務大臣(森山眞弓君) 司法制度改革審議会におきましては、国民に身近で利用しやすい司法制度ということをうたっておられまして、その国民の期待と信頼にこたえ得る司法制度を実現するべきであるということを言っておられます。その方策についていろんな方からの意見を踏まえまして、二年間にわたる審議をしていただきまして、提言を出していただきました。昨年の六月、その提言が出たわけでございます。
 その意見の中におきましては、国民の権利擁護に不十分な現状を直ちに解消するべきということをおっしゃっておりまして、特に司法書士の皆さんがお持ちになっている専門性を活用するという立場から、司法書士に対して信頼性の高い能力担保措置を講じた上で、簡易裁判所における訴訟代理権等を付与するべきであるということをおっしゃっているわけでございます。
 先ほど先生も御指摘くださいました今年の、先生もおっしゃいました政府が閣議決定いたしました規制改革推進三か年計画におきましても、司法書士の訴訟代理権等については、司法制度改革審議会の審議結果等を踏まえて検討して、平成十三年度中に結論を得て所要の措置を講ずるということがこれにも書いてございます。
 そのようなわけで、国民に身近で利用しやすく、その期待と信頼にこたえ得る司法制度を実現するという立場から見まして、提言された改革はその準備ができ次第速やかに実現するべきであるというふうに考えまして、司法書士の訴訟代理権等に関する提言につきましてはそれを具体化していくと。幸い、準備が整いましたので、この国会に法律を提案させていただいたわけでございまして、これは司法書士だけではなくて弁理士法の改正も既にやっていただいておりまして、逐次、このようなやり方を進めていきたいというふうに思っております。
○岩井國臣君 私は、今度の司法制度改革で強く意識していただきたいのは、二十一世紀型の法文化の確立ということでございます。これからは、行政も立法もそうでございますけれども、特に司法はもっともっと国民とのコミュニケーションを重視していかなければならないと思います。司法は今まで国民との接触が極めて少なかった、これからもっともっと司法と国民との接点を増やしていかなければならない。行政も立法もそうでございますけれども、司法も国民との接点を増やしていく、そういう中で国民は行政的に、立法的に、あるいは司法的にもっともっと自律性というものを高めていかなければならないのではないか、そのように思うわけであります。
 そう考えたときに、今回の司法書士等の制度改革は大変大きな意味を持っているのではないか、そのように思います。弁護士の数が少ないからその代わりをするというのではなくて、二十一世紀型の法文化の確立という観点から、もっと本質的な意義を持っているのではないかというふうに私は考えております。
 今、私が最も注目しておる哲学者の一人で中村雄二郎先生という方がおられるわけでありますが、二十一世紀の国家像といたしまして、情報ネットワーク社会というものを展望されまして、底力のある自立した個人、そういう存在こそ重要だ、そのように語っておられるわけであります。そして、組織でありますとか場所の重要性というのはあるんですが、組織とか場所というのは積極的にそのような底力のある個人というものを育て、成長させる働きを持ったものでなければならない、このようにおっしゃっておられるわけであります。私もそう思うわけですね。
 裁判でも、底力のある自立した個人の存在というものを前提に考えた方がやっぱりいいのではないかと思います。つまり、刑事裁判は別といたしまして、民事裁判でも行政裁判でも、できるだけ本人が法廷に立つのがいい、私はそう思うのであります。私なんか法律の専門家ではございませんから、司法書士のお手伝いがどうしても要るわけでありますけれども、司法書士の助けをかりながら、できるだけ自分で法廷に立つというふうにした方がいいのではないか、このように思います。本人訴訟ということであります。もちろん、本人が法廷に出れないときも当然あるわけでありますから、そういう場合には司法書士が代理で法廷に出なければならないわけでございますけれども、本人訴訟を原則とした訴訟の在り方というものが当然あるわけであります。本人訴訟を原則とした裁判というものを普及させることによりまして、我が国に二十一世紀型の法文化というものが育っていくのではないか、中村雄二郎さんの言うところの底力のある自立した個人というものが育っていくのではないか、このように思うわけであります。
 そこで、そういうことと関連しての質問ですが、法曹人と国民との間に立つ司法書士という存在につきましては、二十一世紀型の法文化の確立という観点からも私は誠に大きな期待が掛かっているかと存じます。その点につきまして、法務大臣はどのようにお考えでございましょうか。
○国務大臣(森山眞弓君) 先生が非常に哲学的な御意見、御質疑をいただきまして、いろいろ考えさせられるところがございます。確かに、理屈、理論を申せば、本人が責任を持って自分の権利を自分で擁護する、自分の主張を自分で言うということが本来の姿かもしれないと思いますが、しかし御存じのように、法律というのはいろんなものがございまして、最近は社会の現象も複雑になっておりますし、それにかかわる専門的な知識を必要とする法律もたくさんあるわけでございまして、すべての人がすべての法律について詳しくなるというのは難しい、不可能な話でございますので、弁護士さんとかあるいは司法書士さんのお手伝いをいただいてということになるわけでございます。
 そこのところは先生も御理解いただいているというふうに承ったわけでございますが、しかし一方において、司法というものが何となく寄り付きにくい、近づきがたい、自分とは余り縁がないというふうに思っている国民の感覚というのもまだあるわけでございまして、その間をつなぐ大変大事な役目を司法書士はやっていただいているというふうに思うわけでございます。
 ですから、司法制度がもっと身近な、分かりやすいものになるべきであるということはもちろんそのとおりでありますが、しかし現実の問題として、司法書士の皆さんがもっと役目を持っていただいて、大いに活躍をしていただくということもそのために必要ではないかというふうに考えるわけでございます。
 ですから、今、司法書士の皆さんは全国にあまねく存在しておられまして、登記手続の代理業務とか裁判所に提出する書類の作成業務などをやっていただいているわけでございますが、弁護士さんはもちろん大事な存在ではありますが、弁護士さんよりも更に広く多くの国民に親しまれているということが言えるのではないでしょうか。
 今回、認めていただけるかと思いますが、簡易裁判所における代理権を有する司法書士がもっとたくさんになる、多数に増えるということによりまして、従来に増して国民の間における身近な法律家ということで、その期待と信頼にこたえていただけるものと思いますし、先生のおっしゃいます自立した個人が自分の考えで法律的な活動もするべきであるという御趣旨に沿うのではないかと思います。
○岩井國臣君 もちろん、私は、弁護士さんが本人に代わって法廷に立つというのは、これはもう原則というか基本ですよね。それはもう当然なんですけれども、それ以外にやっぱり底力のある自立した個人というものの存在がありますよと。それで、それをバックアップするような制度には一応なっていますよと。数少ないかもしれませんよ。ですけれども、やっぱりそういう制度の方が幅があっていいのではないか、このように考えておるわけであります。それが法文化、国民レベルにおける法文化とつながっていくのではないか、このように思うんですね。
 そこで、法哲学といいますか、法文化というようなことについてちょっと質問させていただきたいと思いますけれども、今進めようとしておられる司法制度改革というのはいわゆる小泉改革とどういう関係があるのか、その辺の説明をお願いしたいわけでありますが、小泉総理が司法制度改革についてどのようにお考えになっているのかというのをまず法務大臣の御認識をお伺いしたいと思います。
 その次に、護送船団型の経済や利益誘導型政治につきましては云々、いろいろ改革すべきである、いろんな議論があるわけでありますけれども、その点に関連いたしまして、法的なインフラ整備としてこの司法制度改革がやはり欠かせないのではないか、そういう意見も当然あるわけでございます。その辺のお考えをお聞きしたいと思います。
○国務大臣(森山眞弓君) 小泉総理は司法制度改革本部の本部長でございまして、非常にこの問題についても熱意を持っておられます。例えば、この国会における施政方針演説の中でも、「努力が報われ、再挑戦できる社会は、明確なルールと自己責任原則に貫かれた事後チェック・救済型社会です。この新しい社会にふさわしい司法制度を構築し、国民にとって身近なものとするため、早急に司法制度改革推進計画を策定し、改革を着実に進めます。」と述べておられるところでございます。
 我が国の経済社会の構造改革ということは、御存じのとおり今必要であるということで、特に小泉総理が強く唱えておられるところでございますが、この構造改革というのは明確なルールと自己責任原則に貫かれた事後チェック・救済型社会への転換を図るということであり、自由かつ公正で活力のある社会を形成していくために不可欠であろうかと思います。このような社会では、司法の果たすべき役割が今まで以上に非常に大変重要になってまいります。
 司法制度改革を推進するということは、小泉内閣が進めております構造改革の重要な部分であり、基本的な部分であるというふうに考えておりますし、不可欠の前提であるというふうに思います。司法制度改革の審議会の意見におきましても、司法制度改革は政治改革、行政改革等の諸改革の最後のかなめであるというふうに位置付けられておりまして、そのような認識に立っている次第でございます。
○岩井國臣君 私は小泉改革の抵抗勢力だとかマスコミからは見られているようでありますけれども、そんなことはないんでございまして、自分自身としては改革派だと、こう思っているんですね。小泉総理とは考えの違う点は当然あるわけでありますけれども、当然同じ考え方もあるわけですね。民間でやれるものは民間でやればいいではないかという考え方、そういう点については全く同感なんです。同じような感覚を実は持っておるわけであります。
 司法改革につきましても、当然、抵抗勢力というものはあると思うんですね。法の世界も右、左、真ん中というのがある。右を進めようとすれば左が反対するし、左を進めようとすれば右が反対する。そういうことで、法の世界も法道具主義という右と、インフォーマリズムという左、それからリーガリズムという真ん中、大きく分けてそんなのがあるんじゃないかな、こう私は実は思っておるんでございますけれども、私は、そういう中でやはりリーガリズムを中心に据えて我が国の司法改革をやっぱり進めるべきだ、そういうふうに思います。
 司法の世界が行政の世界や民間の世界とどのように交わるのか、その辺はなかなか難しい問題でしょうけれども、私はこれからあるべき司法の世界というものはやはり裁判に重点を置くべきだと思います。リーガリズムの立場ですね。行政でやれるものは行政でやる、民間でやれるものは民間でやる、私はやはりそうでないといかぬのではないか、それが小泉改革の基本的な物の考え方でもあるのかなと思うわけであります。
 そこで質問ですけれども、行政上の不祥事が今続いておるわけですね。私は、そもそも行政の自己管理機能が弱いというふうに考えております。審議会の意見では、昨年六月の審議会の意見におきましては、司法の行政に対するチェック機能を強化すべき、そのようにあるわけでありますが、その点はいかがでございましょうか。行政内部における自己管理機能の強化を私はまず考えるべきではないかと、そのように、ちょっと昨年六月の審議会の意見と少し私、感じが違うのかなと思っているんですけれども、その点いかがでございましょうか。
○国務大臣(森山眞弓君) 適正な行政を確保していくためには、司法の役割だけではなくて、行政自身の在り方も大変重要であるというのはおっしゃるとおりでございます。
 他方、司法制度改革審議会の意見では、司法の行政に対するチェック機能の強化につきまして、国民の権利救済をより実効的に保障する観点から、行政訴訟制度の見直しを含めた総合的な、多角的な検討が求められているところでございます。
 今後、この意見及び委員御指摘の趣旨を踏まえまして、司法及び行政の役割を見据えながら必要な検討を行っていかなければならないと思っているところでございます。
○岩井國臣君 ひとつよろしくお願いしたいと思います。
 今回の司法制度改革では、ADR、裁判所外紛争解決制度というものの確立が一つの柱になっているかと思います。その背景なり必要性について御説明をお願いしたいと存じます。
 また、あわせまして、イギリスでは、司法の世界でも民間でやれるものは民間でどんどんやっていけばいいじゃないかというようなことでいろんな動きがあるようなんでございますけれども、政府ではその辺の動きをどのように見ておられるのか、その辺も併せて御説明願えればと存じます。お願いします。
○政府参考人(山崎潮君) ただいま御指摘のADR、裁判外紛争解決手段ということでございますけれども、この特徴は、やはり厳格な裁判手続と異なりまして、利用者の自主性を生かした解決をすると。その内容として、例えばプライバシーや営業秘密を保持をしまして未公開での解決ができるという特徴、あるいは簡易迅速な解決ができるという特徴、あるいは法律上の権利義務の存否にとどまらない、実情に沿った解決が図られるというような、いわゆる柔軟な対応が可能であるという点で意義を有する紛争解決手段であるというふうに考えられております。
 我が国のADRの現状を見ますと、これ、裁判所、行政機関、それから民間団体等による多様な形態のADRが存在いたします。しかしながら、一部を除き必ずしも十分に機能しているとは言えない状況でございます。こういうような認識、状況を拝見いたしまして、司法制度改革審議会意見におきましては、国民にとって裁判を一層利用しやすくしていくことに格別の努力を傾注することに加えまして、ADRの拡充、活性化を図っていくべきものとされたわけでございます。
 ただいま御指摘のイギリスの例でございます。最近、いろいろ改革がされているようでございまして、委員御指摘のように、民間でできるものは民間でというような発想で法改正が行われているというふうに承知をしております。確かに、訴訟の事件が著しい増加をしておりまして、裁判所の負担増加等の問題に対処するという観点から行われたものというふうに承知をしております。
 この点につきまして、諸外国は、欧米諸国、様々な改正が最近行われておりまして、やはり国によって民事司法に関する仕組み、あるいは社会の状況、かなり異なっておりまして、私ども本部事務局といたしましては、こうした諸外国におきますADRをめぐる一連の動向、これを十分に参考としつつ、ADRが裁判と並ぶ魅力的な解決手段になるように今後も検討を鋭意進めてまいりたいというふうに考えております。
○岩井國臣君 ひとつよろしくお願いしたいと思います。民間でやれるものは民間でやるという小泉総理の考え方は、やっぱりこれ、一つの時代の方向を示しているのではないかというふうに思います。
 それから、そのことと関連いたしますけれども、私自身も実は経験しましたが、土地の境界紛争、これが結構多いんですね。いろんなところであります。これなんかはADR、裁判外紛争解決制度でやればいいのではないかと、そんなふうに思います。
 質問でございますけれども、今回の司法制度改革でADRが大きな柱になっている。先ほどの説明のとおりでございますが、その中で、土地の境界紛争解決にかかわるADRにつきましては、日本土地家屋調査士連合会で十年ほど前からいろんな検討を重ねてきておられます。やっと昨年から試験的に始められました。法務省では行政委員会型のADRを検討中だというふうに聞いておりますけれども、これはどうなんですかね、ちょっと私の考えでは、できればやっぱり民間型のADRに思い切ってできないのかなと、こんなふうに思うんですね。しかし、そうはいっても、総合的な検討の結果、行政型のADRがあってもいいと思いますけれども、やっぱり何か基本は民間というのがいいんじゃないかと私なんかは思うわけでありますけれども、その点はいかがでございましょうか。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、法務省としても現在、土地の境界紛争に関するADRについて検討しているところでございます。また、同時に、日本土地家屋調査士連合会においても民間型のADRを検討され、その創設の一環として境界問題相談センターというものを試行的に実施していると承知しております。
 ADRというのは、ある意味では、そういういろいろな、多様なものがそれぞれの特徴を生かして協力しつつ、社会全体として紛争を的確に解決していくというところに意義があるだろうと思っておりますので、民間型か行政型かという二者択一ではなくて、それぞれがその特色を生かしたADRを作り、協力しながら全体として境界に関する紛争を的確に解決するような仕組みにしていくということが重要ではないかと思っております。
 そういう意味では、境界問題について非常に豊富な経験と専門的知識を有している土地家屋調査士の方々が民間型ADRを創設しようということで努力をなさっているのは非常に貴重な努力だと思いますし、是非積極的にその能力を発揮していただきたいという具合に考えているところでございます。
○岩井國臣君 ひとつよろしくお願い申し上げます。
 土地家屋調査士というのは、不動産登記だけじゃなくて、土地の境界確認などにつきまして、専門家として国民の不動産に関する権利保護を図るということが当然あるわけでありますが、そのほか、土地という最も基礎的な行政財産の明確化を図っていくというふうな重要な役割も持っておると、こういうことだと思います。
 いろいろと土地家屋調査士の皆さん方、御活躍であるわけでありますが、そういう中で、近年、土地家屋調査士は、司法の枠組みの中でも、例えば土地境界の鑑定人でありますとか土地境界紛争の専門調停委員というふうな形でその専門的知見や豊富な経験を生かすというふうなことでいろいろ期待もされておると、こういうことであるかと思います。
 そこで、そのことに関連しての質問でありますけれども、今回の司法制度改革に当たりましては、土地家屋調査士の専門的知見を活用するために、土地の境界紛争に限って司法書士と同様に訴訟の代理人にやはりしていくという考え方、前向きの思い切った考え方かも分かりませんけれども、そういう考え方が必要ではないかと、そのように思うわけであります。法務大臣の前向きの御回答をお願いいたしたいと存じます。法文化を育てるというスタンスから大事ではないかと、そのように考えるわけでございますけれども、いかがでしょうか。
○副大臣(横内正明君) 私から御答弁を申し上げます。
 司法制度審議会の最終意見書では、土地家屋調査士につきまして、その専門的な知見を積極的に活用していくということを述べているわけでございます。その述べた箇所を御紹介をいたしますと、「その専門性を訴訟の場で活用する必要性や相応の実績等が明らかになった将来において、出廷陳述など一定の範囲・態様の訴訟手続への関与の在り方を個別的に検討することが、今後の課題として考えられる。」というふうに述べております。
 委員も御指摘のように、土地家屋調査士さん、土地の境界問題について豊富な経験、知識を有するわけでございます。同時に、境界紛争が非常に増加をしているというのも御指摘のとおりでございまして、そういうものに積極的に活用していくということは当然将来の課題としてあるわけでございます。
 したがいまして、土地家屋調査士さんの出廷陳述権とかあるいは訴訟代理権といったものを付与するということにつきましても、その土地家屋調査士さんの専門的な能力というものを訴訟の場で活用する必要性が高いかどうかという判断。それからもう一点は、今、委員が御指摘がありました、既に土地家屋調査士さんも訴訟の場でいろんな形で活躍をしていただいております。鑑定人だとかあるいは調停委員というようなことで活躍をしていただいておりますけれども、そういった土地家屋調査士さんの訴訟の場での活躍の実績ですね、そういうふうなものを勘案をしながら将来において検討をしていく必要があるというふうに考えております。
○岩井國臣君 それでは次に、土地家屋調査士さんのお仕事との関連でありますけれども、登記手続の関係について質問さしていただきたいと思います。ITとの関係、電子政府との関係であります。
 前々回でしたでしょうか、この委員会で登記の汚れといいますか、成り済ましの話があったかと思いますけれども、権利と義務に関する場合、本人確認というのが極めて重要になってきているのではないかというふうに思います。司法制度改革を進める場合に、私は、e―Japan計画との関連もこれあり、電子化は大いに進めなければならないものと考えますけれども、一方でやはり本人確認の問題という、権利とその保護という問題があるわけでありますから、登記手続の電子化におきましては本人確認の問題はよほど注意をしていかなければならないものと思います。
 そこで、質問に入るわけでありますけれども、年間一千万件、一千万件というのは物すごい数ですね、一千万件の不動産登記のうち本人登記は現在一割もないというふうに言われておりますけれども、今後はやはり自立的な個人の増大、先ほど冒頭に申し上げましたようなことでございますけれども、そういった自立的な個人の増大とともに、不動産登記の本人登記というものも次第に増えていくのではないかというふうに私は感じておるわけであります。
 不動産登記の電子化が進んだ場合に、同時に成り済ましという不正行為も増えていくのではないか、これをしっかり防止していかないとちょっと大変なことになるなと、我が国の経済取引に大きな混乱を引き起こしかねないように思うのでございます。この問題につきまして、司法書士関係、司法書士団体の意見も十分聞くなどして、慎重な御検討をお願いしたい。拙速はやはり避けなければならぬのではないかと、そのように思うわけでありますが、その不動産登記の電子化ということにつきまして、ひとつどのように今お考えになっているのか、お聞かせいただきたいと存じます。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、登記というのは、最も国民にとって重要な財産である土地、建物、この権利義務関係を明らかにするものでございますので、これが信頼できないということになりますと経済取引の安定性が非常に害される、そういう意味では、これをどうやって信頼できるものにするかということが非常に重要な問題でございます。
 現行法では、そういう意味で、登記の正確性、それから適法性を確保するために、登記をするには当事者が出頭をしなければいかぬという当事者出頭主義、そして権利を譲り渡した者と譲り受けた者と双方が共同して申請をするという共同申請主義、それから書面できちんとした添付書類を付けて申請するという書面主義、こういうものを取ってその真実性の担保を図っているわけでございます。
 御指摘のように、現在、登記事務につきましてもコンピューターで処理をするコンピューター化、更に進みまして、その登記の申請そのものをオンラインで可能にするということを検討しております。オンラインで申請を認めるということになりますと、今申し上げたような当事者出頭主義であるとか書面主義であるというのは、これは当然取れなくなってしまいますので、従来の方法に代わる真実性、適法性の担保をどうするかということが非常に重要な問題になってまいります。
 そもそもオンラインでの申請を認めようということは、申請人がわざわざ登記所に出頭しなくても登記ができるんだという国民の利便性ということが非常に大きな考慮要素でございますので、手続としてはできるだけ利用しやすい簡単なものがよろしいわけでございます。
 ただ、一方、その簡単な手続にすることによって登記そのものが信頼できなくなってしまっては、これは登記の目的を達することができませんので、その兼ね合いをどうするかということで現在検討を進めているところでございます。
 現行の印鑑証明書とか登記済証というようなものを要求して信頼性を確保しているわけでございますが、これに代わるようなオンライン上のものとしては、例えば印鑑証明書に代わるものとしては住基システム等を基礎とする公的個人認証サービスというような電子署名あるいは電子証明書という制度が既に実用化されております。
 ただ、これを登記のオンライン化に導入するに当たって、具体的にどういう形で利用するのかというようなことを検討する必要がございますし、また、御指摘のように、御本人で申請する場合というのが数が少なくて、多くの場合は司法書士の方々が代理人となって申請をされますので、その場合の代理権の証明をどういう具合にして行うのか、こういうような問題、あるいは、登記済証というのは非常に今貴重なものとして国民の間にも定着している制度でございますが、電子的な申請にしたときに従来の登記済証に代わるようなものを一体用意する必要があるのかどうか、そういった点もございます。
 その他もろもろのことがございますので、できるだけ早くオンライン化をしたいと思いますが、同時に、安心して利用していただける登記制度にするために、今のような問題点を早急に検討してオンライン化をしたいと考えているところでございます。
○岩井國臣君 やはり、e―Japanとの関係で、これはもう積極的にオンライン化を進めなければならない。しかし、片方で本人確認の問題、これは戸籍でもあるわけですけれども、本人確認の問題がある。しかし、この登記、土地の登記について、これはやっぱり悪意を持って成り済ましてやられる方も、これは増えていくおそれが多分にあるわけですからね。そうすると、なかなか難しい問題だと思いますね。
 そこで、やはり私は、司法書士、言葉は悪いですけれども、かむ形で、いい一つの解決方法が出てくるのではないかなという感じがいたしますので、ひとつ十分、司法書士関係団体の意見も聞いていただくなどして、要するにその土地の登記について遺憾のないようにひとつよろしくお願いしたいと思います。
 小泉改革と俗に言うわけでありますけれども、橋本内閣のときには橋本改革というのがありました。あのときは、第三の民主主義改革というようなことが言われたかと思います。第三という意味は、明治維新と戦後改革に匹敵する第三という意味でありますけれども、私は、トニー・ブレアの言う第三の民主主義改革という意味合いをも感じておりました。右でもない左でもない改革、右といえば右かも分かりませんが、左といえば左かも分からない。しかし、真ん中というのが当然あるわけで、それが中心だと思います。
 行政の論理とそれから民間の論理のどちらの論理にも偏しない中立公正な論理に立って、ただひたすら人類の英知を追い求め、人類の英知を発揮する、そういう立場、つまりリーガリズムの立場を中心としてやはりやっていくのがいいのではないか。もちろん、行政の世界にやや踏み込んだ法道具主義、あるいは民間の世界にやや踏み込んだインフォーマリズムを全面否定するわけにはいかぬわけでありますけれども、そういう側面をも含む司法制度にならざるを得ないと思いますけれども、やはり私は裁判所らしいのがいいと思います。
 立法と行政と司法、三権分立ということでありますから、それぞれ独立しているわけであります。司法が行政の代わりをするというわけにはやっぱりいかないし、同時に民間のできるところまで乗り出していくというのもやはり時代の流れからしていかがなものかなと、こんなふうに思うんです。
 行政訴訟でも和解勧告というのが時々あります。私も経験したことがございますが、民事訴訟では裁判官は和解勧告というのを通常やられる。しかし、あの辺はちょっとどうなのかなという感じを私は実は持っておるわけであります。
 日本の文化というものは村社会の文化でありますから、争いというものは本来的に好まない文化なんですね。死力を尽くして戦うということは大変やらないんです。まあまあというようなところで収める。しかし、これからの時代は河合隼雄さんが言っておられますように、そういう日本文化と西洋文化の言うなれば矛盾システムを生きていかなければならない、このように思います。もはや村社会の論理だけでは駄目だということだろうと思います。やっぱり大岡裁きというのはいかぬのではないかな、もう時代の流れからしてどうかなと。裁判というものはやはり死力を尽くして戦う場だ、戦場でなければいけない、知力と言った方がいいのかも分かりませんが、やはり裁判というものは知力を尽くして戦う場だ、そのように私は思います。
 私も、水害訴訟でいろんな勉強をさせていただきました。加治川裁判、谷田川の水害訴訟、長良川の水害訴訟、そして多摩川の水害訴訟等々、重要な水害訴訟にはほとんど関係させていただきました。多摩川の水害訴訟では、一審、二審、そして最高裁からの差戻し審にも関係させていただきまして、いろいろ法務省とも何度となく協議させていただいた、大変苦労をいたしました。最終的に河川局長として最後の幕引きをやったわけでありますけれども、建設省で相当の抵抗もあったんですね。
 あれは和解じゃなくて敗訴の決断をしたと、こういうことなんでありますけれども、そういう経験からして、本当にやっぱり裁判というのは大変だな、死力を尽くして戦うというか、知力を尽くして戦う、正に戦場だなと、こう思うんですね。面白いといえば面白いですけれども、怖いといえば怖いんですよね。すごい、すごいものだというふうに私の実感であります。
 しかし、考えてみますと、立法と行政と司法、三権は分立しているわけでありますから、司法は司法でないとできないことがある。戦いなんですね。法廷で知力を尽くして戦う、そのことの積み重ねで国家の知、国家知というものが形成されていくのではないか。各国のそれらが国家知が合わさって人類の英知というものが成熟していくのではないか、このように思うんです。やはり、司法の本質は、裁判至上主義と言っていいのかどうか分かりませんけれども、裁判長がやっぱり判決を下す。和解じゃなくて判決を下すというふうなところにあるのではないかと、こんなふうに実は思っておるわけであります。
 しかし、片方で、これ考え方としては矛盾するところあるかも分かりませんが、国民とのコミュニケーションというのが非常に大事ではないかなと。今朝の日経新聞の社説にもちょっと出ておりましたけれども、国民との関係というものが極めて大事だと、そうでないとやはり法文化というのは育っていかないように思うんですね。
 そこで、最後の質問になりますけれども、大臣にお尋ねさせていただきたいと思います。
 リーガリズムの確立を図りながら国民とのコミュニケーションをどう図っていくのか。これは理性と感性の問題であり、誠に難しい法哲学の問題になるかとは思いますけれども、法務大臣の基本的なお考えをお伺いしたいと思います。
○国務大臣(森山眞弓君) 非常に深遠な哲学の課題を投げ掛けていただいたという感じでございますが、この司法制度改革ということに限定して申しますと、二十一世紀を迎えた我が国が国際社会、好むと好まざるとにかかわらず、国際社会の中の重要な一員としてやっていかなければならないわけでございまして、そういうことを考えますと、社会経済構造の大規模な転換が必要だということはどなたもお認めになることだと思います。ルールが国民に分かりやすい形で示される、行政を含めて社会全体がルールによって運営されていくということが重要なのではないかと思います。
 現在、進めようとしております司法制度改革におきましては、司法の中心である裁判などの諸制度、司法を支える法曹の在り方など、あらゆる面で見直しが行われているところでございますが、これも究極的には、申し上げましたとおり、法があまねく国家、社会に浸透して、国民の日常生活において法が息づいていくというようなそういう社会、すなわち法の支配の実現を目標とするというわけでございます。
 しかし、法あるいは裁判が国民に理解されるということは法の支配の実現の前提となるわけでありまして、大変重要だと思います。司法制度改革におきましても、国民的基盤の確立が柱の一つというふうにされておりまして、例えば国民が訴訟に参加をすることや、法令の内容や司法制度及びその運用を国民に分かりやすくするということなどが課題とされているところでございまして、先生が強調されました国民とのコミュニケーションを図っていくということは、改革を行うに当たって忘れてはならない大変大事な課題であると思います。
 私は、司法制度を所管する役所の責任者といたしまして、また司法制度改革推進の本部の副本部長という役も仰せ付かっておりますが、先生からの御指摘を踏まえまして、この実現に向けまして努力をしていきたいというふうに思います。
○岩井國臣君 終わります。
○角田義一君 民主党・新緑の角田でございます。
 今回の司法書士法あるいは土地家屋調査士法の一部改正の法律、大変私は画期的なことだと思います。特に、司法書士に簡易裁判所における訴訟代理権を付与するというようなことは、非常に今後の司法制度改革をにらんだ上でも、また国民の立場からの身近な司法の在り方という観点からも非常に画期的なことではないかというふうに思いますし、また司法書士さんにとってみても歴史的な大転換を私は迎えるときじゃないかというふうに思うわけでありまして、まず大臣にお尋ねをいたしたいのは、今回のこの制度改革、特に司法書士制度の改革の意義というようなものを全体の司法制度改革の中でどういうふうに位置付けておられるのかというような観点でまずお聞きをいたしたいと思います。
○国務大臣(森山眞弓君) この法律案は、昨年の六月十二日の司法制度改革審議会の御提言に従いまして、国民の権利擁護を拡充していくこと、司法書士のお持ちになっている専門性を活用するという観点から、司法書士に簡易裁判所における訴訟代理権等を付与するということにしたものでございます。
 司法制度の利用者である国民からいたしますと、今までは簡易裁判所の訴訟代理を依頼することができる法律専門家は弁護士さんに限られておりましたわけですが、新たに司法書士に付与される権限の範囲内では、司法書士もその範囲の中では弁護士と同様の権限を有するということになりますので、これは国民に身近な司法制度というこの司法制度改革の大きな柱の一つを実現することになろうと思うわけでございます。
 このように、国民の側の選択の幅が広がるということで、非常に司法が便利にもなるというふうに考えられるわけでございまして、この法律案は司法制度改革の一環として非常に重要な部分を担っていると思います。
○角田義一君 国民に身近で利用しやすいと、その期待と信頼にこたえる司法制度を実現するというのが審議会の一つの眼目だと思うんですが、そういうものは今度の司法書士の改正の中でどういうふうに具体的に盛り込まれておりましょうか。これは民事局長でも結構です。
○副大臣(横内正明君) 私から御答弁を申し上げます。
 委員の御指摘のように、司法制度改革審議会では、国民に身近で利用しやすく、その期待と信頼にこたえ得る司法制度を実現すべきだと、そういう視点で議論が行われてきたところでございます。そして、その結果として、国民の権利擁護に不十分な現状を直ちに解消するという必要性があるために、司法書士の簡易裁判所における訴訟代理権等を付与すべきであると、そういう提言がなされたわけであります。
 本法案は、この提言を実現することを目的とするものでございまして、従来、簡易裁判所における民事訴訟事件を弁護士さんが余り扱ってこなかったという実態が一つあるのと、同時に、司法書士さんが全国あまねく所在をしておられまして、現実に裁判所に提出する書類の作成業務を行ってこられて専門性を身に付けてきておられるという点を、そういう専門性を活用するという観点から司法書士に簡易裁判所の代理権等を付与するということにしたものでございまして、国民に身近で利用しやすく、その期待と信頼にこたえ得る司法制度の実現に寄与するものというふうに考えております。
○角田義一君 司法制度の事務局長さんにお尋ねしますけれども、今後の法曹の在り方ということで、この前ちょっとロースクールの問題等、提起を私、して、いろいろ疑問を呈してお尋ねしたんだけれども、司法書士に訴訟代理権を簡裁でも与えるということは、将来、法曹人口が増えていく、弁護士が増えていくと、その一つのつなぎのような形でやるというような私は便法ではあってはならないだろうというふうに思うんですね。将来の法曹人口は、弁護士をうんと増やしていくということも大事だと思いますけれども、じゃ、将来の司法書士さんは一体どうなっていくんだろうかと。みんなロースクールへ行ってしまって、そして法曹の資格を取る。しかし、司法書士さんの立場というのは今後どうなっていくのか。その辺、もっと全体像というものをきっちりと見ながらやっていくことも大事だというふうに思うんですね、そういう長期的展望に立って。その辺はどういうふうに考えていますか。
○政府参考人(房村精一君) 従来、司法書士の方々の果たしている役割としては、やはり何といっても登記が非常に大きいわけでございますが、それと同時に、裁判所あるいは検察庁に提出する書類の作成とか、法務局での供託関係とか、そういう国民にとって一番身近な法律的な問題、こういうものを適切に処理するために国民に手助けをすると、こういう役割を果たしてきたわけでございます。そういうことから、国民に非常な身近な存在で、全国的な分布を見ましても、弁護士の方に比べれば非常に幅広く全国に所在しているという特色があるわけでございます。
 今回、そういった分布の特色、あるいは従来培ってきた専門性、こういうものを活用しながら、簡易裁判所における訴訟代理権という新たな権限を付与することをお願いしているわけでございますが、司法書士の将来像としては、私はやはり国民にとって一番身近な法律家だということが中心ではないかと思っております。
 弁護士の方の大幅な増員ということが司法制度改革の大きなテーマとして取り上げられ、現実にそういう方向に進んでおります。また、養成制度としての法科大学院というようなものも実現に向かっているわけでございますが、そういう形で弁護士の方が増加し、国民に多様なサービスを提供するということは非常に結構なことだと思います。しかし、同時に、弁護士の方の増加が、では直ちに地方における非常に身近な法律問題の解決に手助けをしている司法書士の方々の役割に代替し得るものになるのかということですと、これはやはりなかなか簡単ではないのではないかと。
 更に言えば、これからの日本の社会では司法の果たす役割は全体として大きくなっていくだろうと思います。そういう司法全体の果たすべき役割の大きさ、あるいは従来から身近な、最も身近な法律問題を解決する手助けをしてきたという実績、こういったものを考えますと、今回新たに与えられた権限も含めまして、やはり司法書士としてはそういう最も身近な法律家で、身近な存在として国民に法的問題の解決を助けてあげる、こういう役割を担っていくのではないかと。そこは弁護士の方々と、あるいは相補い、あるいは場合によっては、場面によっては競争するということもあろうかと思いますが、そういう形で今後も社会において大きな役割を果たしていけるのではないかという具合に考えております。
○角田義一君 分かりました。
 そこで、ちょっと実態をお聞きしておきたいと思うんですが、論議に入る前に、理屈に入る前に。
 全国の簡裁の中で弁護士さんがおるところ、幾つぐらいあるかということですね。それからもう一つは、司法書士さんが事務所を構えておる簡裁の管内というのは全国で幾つぐらいあって、何%ぐらいになるか。その数字的なものを、実態というか、まずちょっと説明してください。
○政府参考人(房村精一君) 現在、簡易裁判所は全国に四百三十八庁ございます。その四百三十八庁のうち、簡易裁判所の管轄内に弁護士の方がいらっしゃる庁数は二百八十一庁で、約六四%でございます。司法書士がいらっしゃる簡裁の数は四百二十九庁で、九八%ということになります。
 ちなみに、人数でございますが、弁護士の方が一万八千八百人程度、司法書士の方が一万七千二百人程度でございます。
○角田義一君 簡裁の民事事件で弁護士が付いている割合はどのくらいですか。
○政府参考人(房村精一君) 簡易裁判所における民事第一審訴訟事件、この新受事件数が大体三十一万件程度ございますが、このうち、弁護士が少なくとも一方の代理人として関与した事件というのは約一〇%でございます。三万千二百八十一件ということになっておりますので、大体一〇%。当事者双方に弁護士が関与した事件ということになりますと四千件でございまして、全体の約一・三%ということになります。
○角田義一君 分かりました。
 必ずしも簡裁の事件にすべて弁護士さんが付かなきゃならぬということではないと思いますけれども、この数字を見た限りでは非常に少ないと思うんですね。したがって、簡裁で司法書士さんがこれから訴訟代理人になってやるということの意義は非常に私は大きいだろうなと思います。
 そこで、三つの問題について、国民のサイドからちょっと聞いていきたいと思う。
 それは、一つは、司法書士さんに訴訟の代理権を与えるということになりますから、今までの司法書士さんはどっちかというと登記とか供託とかという業務で、しかもこれは双方代理が認められているわけですね。登記をする権利者、義務者の両方を代理することができるということですけれども、弁護士は、御案内のとおり、双方代理はこれはもう禁じられておって、もう利害相反ですから、片方しか代理できない。岩井先生もおっしゃったとおり、正に戦う弁護士ですから、知力を尽くしてやるわけだから、両方代理できないんですよね、これ。片方のために頑張るわけですから。
 そうすると、全く今までとは違った業務形態になるわけですよ。今までは、双方のまあというので両方、司法書士さんのところに行って判こを押して登記してくださいというので、すっといっちゃうんだけれども、今度は戦う、どちらかの立場に立って頑張るというんですから、全然新しい業務に入るわけです。そうすると、これはもう私は司法書士さんにとっても大変なことだというふうに思うので、その研修という問題は非常に私は大事な問題になると思うんですね。その研修の制度の在り方を一つ聞きたい。
 それからもう一つは、代理権、どこまで司法書士さんに代理の範囲を与えるかということの問題が一つ。これは非常に大きな問題である。これが二つ目。
 それから三つ目は、一番これが大事なんですけれども、報酬ですよ。どういうふうにどういう報酬を司法書士さんに払ったらいいのか、その決めはどうするんだと。その三つの問題を私はこれから順次聞いていきたいと思うんですが、すべて私の視点は国民のサイドから見た要請というか、率直な気持ちを体しながらこの三つの問題について順次聞いていきたいと思います。
 一つは、まず司法書士さんに対する訴訟の代理業務を付与する、今言ったように戦う司法書士になるんだ、今度は。両方代理じゃできないんですから、戦う司法書士になるということになると、これは、書面を作る、それから法廷で弁論をする、それから証人喚問をやる、証人喚問のときに相手が何か言ったらすぐそれは異議を出して止める。正にさっき言った、先生が言った知力を尽くして戦う司法書士だね、これは。これは大変なことだと思うんです。その養成をどうするか。短い時間でそれを習得して法廷に立たなきゃならぬということでしょう。
 まず聞きますけれども、その研修はだれがやるんですか。どういう機関がやるんですか。
○政府参考人(房村精一君) 基本的に、今回、法務省令で法人を定めまして、その法人に研修を実施してもらう。研修を実施するに当たっては、法務大臣が研修内容を審査しましてその指定を行うと、そういう形を考えております。
 法人としては、具体的には今、日本司法書士会連合会がこの法人となるべく研修体制等について準備を進めておられるという具合に承知しております。
○角田義一君 あのね、もう承知しておりますなんということじゃなくて、ほかにあるんですか。そういうふうに役人みたいなことを言っちゃ駄目だ、あんた、承知しておりますなんて。(「役人だ」と呼ぶ者あり)役人だ、ごめんごめん、典型的な、あなた、失礼、ごめんね。そんなことを言っちゃ駄目なんだよ。もうここはずばり言わなきゃ、ずばり。ずばり言わなきゃ駄目なんだ、どこでやるのか、ずばり言わなきゃ駄目なんだ。
○政府参考人(房村精一君) 最終的にはまだ省令で決めることではありますが、現段階において具体的に考えられるのは日本司法書士会連合会であると思っておりますので。
○角田義一君 それしかないんですよ。
 そこで、その研修を、指定はいつ行うんですか。その今言った司法書士会に研修をゆだねるというか指定をするというのは、いつ指定するんですか。
○政府参考人(房村精一君) この改正法が施行されまして、同時に多分、省令を制定して法人を定めるということになると思いますし、その定めた法人から研修についての指定を求められれば直ちに行うということになろうかと思っております。
○角田義一君 この法律を見ると、施行の期日は平成十五年、来年だ、来年の四月一日からになっているんですね。そうすると、今あなたがおっしゃる指定というのは来年の四月一日過ぎに指定するんですか。
○政府参考人(房村精一君) そういうことになります。
○角田義一君 本当に今、私ども一生懸命こうやって審議しているわけだ。今年は、今月はまだ四月ですよ。来年の四月一日まで何しているんですか。
○政府参考人(房村精一君) まず、研修としては、先生のおっしゃるように、従来、司法書士の方々は書面作成は業務として行われておりますが、現実に法廷に立って弁論をしたり尋問をしたり、あるいはその内容としての異議を述べたりということは経験をしておりませんし、更に言えば立証計画をどう立てるかとか、実務法律家として法廷実務を行うということについての訓練をしてその能力を身に付けていただかなければいけない。しかも、それを限られた時間でやらなければいけないということになりますと、どんな研修をするのかということを現に今検討されているようでございますが、それをまず決める必要がございますし、またそうした場合に、その事業内容を具体的にどのようなものにするのか、その教材をどうするのか。これは、今までのでき合いの教材というわけには多分いかないだろうと思いますので教材を作る必要があるだろうと思います。また、そういった教材を用いてこういった内容の授業をしていただくのにふさわしい人たちをどうやって確保するのか。もちろん、弁護士会とか裁判所とか、あるいは法務省というところの協力を得て行うことにはなると思いますが、やはり初めての研修でそれなりの人たちをそろえなければならない。場所の確保もありましょうし、そういった作業を現在、日司連においてやっているわけでございますが、これはやはり初めての試みでもありますし、ある程度の時間が掛かりますので、私どもとしては、そういった準備も含めて来年の四月の施行までには何とか体制を整えてもらって、その時点で申請をすれば直ちに承認ができるということにしたいと考えているわけでございます。
○角田義一君 役人のやることは駄目だね、私に言わせると。冗談じゃないですよ。いいですか、来年の四月一日からこれは施行して、司法書士さんを法廷へ立てる建前になっているんだ、これは。国民は、ああ、司法書士さんが法廷に立って我々の代理をしてくれるんだ、来年の四月から始まるんだなと、こう思う。四月一日になって司法書士さんのところへ行ったら、いや、まだ研修が済んでないんだ、準備中なんだと。大体終わるのが秋だと、九月ごろだと。食堂だって準備中というのは一時間もすれば始まるんですよ。お店を開くんだよ。ちょっと例は悪いけれども。これ、半年も待たされて、これでやっと研修が終わりましたのでこれから、じゃ事件をお受けしましょうなんて、そんなのは国民の立場からいったら冗談じゃないという話になるんですよ。いいですか。何でそんなのろのろした、ぐだぐだしたことをやるのか。
 これ、大臣がこれを指定すると。指定するというのは、何というか、研修を任せる団体として指定をするということですが、それは附則を改正をしなければできないの。附則を改正をして、公布はもうこれで通れば公布になるんだから、公布して速やかにその指定をすることができるということにしなければ間に合わないというのであれば、これは先生方の御理解をいただいて、別に内容へ入るわけじゃないんだから、国民のためにこれは改正して衆議院へ送ったらいいと思うんですよ、私は。そこまで考えていないんですか。
 じゃ、あなた方が今言っている司法書士さんや何か教材を作らなきゃならぬというのは、これは何、事実上やっているということじゃないですか。それは法務省は何も言えないでしょう、相談できないでしょう、事実上なら。はっきりもっとばしっと、例えばもう五月なら五月に指定して、そして司法書士会と相談をして、どういう教材がいいんだ、どういうスタッフをそろえていったらいいんだと、そして四月一日になったら店開きができるんですよ。みんな依頼者が来たら今日から代理できますよ、法廷へ立ってあげますよ、これが国民の立場に立った一つの制度改革じゃないんですか。何でそんなにぐずぐずしているんだね。
○政府参考人(房村精一君) 一刻も早く利用できるようにするということももちろん国民にとって求められていることだとは思っておりますが、しかし同時に、国民に対してその最も重要な財産の処分等にも関して訴訟代理人となるわけでございますので、その訴訟代理人としての的確な能力担保のための研修を充実したものとするということも同時に必要なことだと思っております。
 そういう意味で、日司連において今鋭意努力をされておりますけれども、日司連においてもそれなりに充実した研修体制を整えるためには相当の期間を要するということが実情としてあるわけでございますので、私どもとしては、そういった実情も踏まえてこの四月一日施行ということにいたしたわけでございますし、また事前の準備については日司連と法務省と緊密な連絡を取ってできるだけ早く研修が開始できるような努力はしたいと考えているところでございます。
○角田義一君 いいですか。じゃ、ちょっとこれは法律の理屈というのは余り僕は好きじゃないんだけれども、四月の一日に施行することができるならば、それじゃ、それ四月一日以降じゃなければ指定できないとさっきあなた言ったんだよね。指定できないものを事実上今やっているわけですよ。そういうあいまいなのじゃなくて、四月一日より前に指定をしたらいいんですよ。指定をして、きっちり指定をした上で法務省と司法書士会連合会と相談をして、どんどんどんどん仕事を進めていけばいいんだ。それを附則か何かを改正しなきゃできないというんなら、先生方の御理解を得て、理事会で私は議論してもらいたいんだけれども、ちゃんと建前上やれるようにしなきゃ、これは国民のためにならないでしょうが。あなたのようなことを言っておったんじゃ駄目、私、はっきり申し上げるけれども。何でそういう感覚なんだね。ちょっともう一遍。
○政府参考人(房村精一君) 基本的に、法人を指定するのは、法人がこういった研修を的確に行うにふさわしい法人かどうかということを判断して省令で定めるわけでございますので、実際にその法人がどういう研修を検討し、そのためのどういう体制を整えているということを確認した上でなければ最終的な省令に盛り込むことは難しいわけでございます。
 私どもとしては、ただ事実上、先ほども申し上げましたが、準備を進めているのは日司連ですし、他にそういうことを考えている法人もないわけでございますので、事前にできるだけ連絡を取って、申請があった場合に直ちに判断できるような体制を整えてできるだけ早く施行したいと、こういうことを申し上げているわけでございます。
○角田義一君 これ予算委員会だったら止めますよ。予算委員会だったらこれ止めちゃうよ、そんなこと言っているんじゃ。ここは委員長に敬意を表して私は止めないけれどもね。こんなばかな理屈ないですよ。四月一日から施行するんだから、四月一日から業務ができるようにするのが当たり前じゃないですか。そのためにどういうふうに準備をするんだと。それなら指定はもっと早くやって、できるだけちゃんと四月一日に間に合うようにするというのが国民のための司法制度改革じゃないのかね。これ、ちょっと大臣に聞きます。
○国務大臣(森山眞弓君) 御説、誠に私も同感するところがございますが、法律の建前から申しますと、先ほど来、民事局長から御説明しているような理由で、このようなやり方しかほかに方法がないのではないかと思います。
○角田義一君 これは、逆に言うと、法律もなくて訳の分からぬことをやっているよりは、これだけの法律を作るんだから、ちゃんと指定を早くやって、そして正規な形でスタートさせて、そして四月一日から店が開けるようにして、依頼者に対して、そこから、ちゃんと仕事ができるようにするのが我々国会の立場だと思うんで、後でまた理事会でよくこの問題については御協議を願いたい。
 まだ、何しろあなた方の説で言うと、来年の四月の一日からやればいいというんだから、ゆっくりやらせてもらうから。そんな何も二、三日で上げることはない。ゆっくり議論してもらって、そこのところだけはきっちり詰めさせてもらって私はやるのがいいと思う。大臣だって、法律がちゃんと、法律の中で指定するのが早くやってもいいということになればやれるんだから。ほかにないんだから、やる団体は。そして、一生懸命やってもらって、四月一日からやるようにするということが私はうんと大事だと思うんで、もうそれ以上は今日はここでは言いません。後でちょっと協議していただきたい。
 次へ行きます。
 訴訟の代理権の範囲の問題ですが、一番問題になるのは二つあると思うんですね。
 一つは、強制執行の代理権を当該司法書士さんに与えていないわけです。
 私が言いたいのは、強制執行一般について司法書士さんに代理権を与えるか与えないかというのは、相当、先行ってもいいと思うんだけれども、自分が受任した事件ですね。例えば、金銭で五十万円払えという裁判を起こした、その裁判で勝った、五十万円の判決をもらったと、ここに江田さん、裁判官でおるけれども。
 それで、先ほど岩井先生もおっしゃったとおり、何でも判決で片が付くというものじゃないと。判決を私どもは神棚に飾っておくわけにはいかないんで、その五十万円という判決をもらえば、その五十万円が聖徳太子にならなければ依頼者は満足しないわけですよ、神棚に飾ってその判決を毎日拝んでいるわけにいかないんだから。
 それで、判決までは司法書士さんが代理で勝った。いざ、それをお金に換えたいと、是非、先生これを換えてくださいと、私は訴訟代理権が認められていないんです、できないんだと、こういうことでしょう、この法律の改正。そうじゃないですか。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、今回の訴訟代理権は、簡易裁判所における訴訟事件になっておりますので、強制執行に関しては代理人にはなり得ません。
○角田義一君 どうして当該事件、いいですよ、強制執行一般について私は議論していない、自分が受任した事件までの強制執行の代理権を与えないんですか。その理由を言ってください。
○政府参考人(房村精一君) 今回、司法書士に訴訟代理権等を付与することは司法制度改革審議会で検討されたわけでありますが、そのときに付与する代理権の範囲が問題になりまして、簡易裁判所の訴訟事件については当然として、そのほか調停、あるいは即決和解、それから強制執行についてどうするかというようなことがいろいろ、あるいは家事事件もございますが、議論をされたわけでございます。
 そのうち、訴訟事件とあと民事調停と即決和解については、簡易裁判所の事物管轄を基準として代理権を付与するという結論になりまして、執行事件等につきましては、なお、これらの事件については相当高度な法律知識を必要とする事件も含まれているので、今後の検討課題として、当面、この司法制度改革審議会の意見としては、訴訟事件と民事調停それから和解、即決和解の代理権を付与するという結論に至ったということでございます。
 今回の法改正は、この司法制度改革審議会意見で出されました結論を実現するという観点で立案をいたしましたので、強制執行等は司法書士の代理権の範囲に含ませないという形で考えたわけでございます。そういうことから、たまたま個別的に自分が扱った事件であっても、強制執行については代理人になり得ないということになっております。
○角田義一君 あなた、冗談じゃないよ。いいですか、これから研修して、訴状、準備書面、証人申請書、それから弁論もやる、証拠調べでもってちょうちょうはっしやる、これ以上の高度な法律知識、だれに求めるんですか。弁護士がやることと同じことをやってもらうんですよ。いいですか、弁護士がやることと同じことをやってもらうんですよ。それ以上、弁護士さん以上の法律知識を必要とするわけね、じゃ、強制執行するのに。
○政府参考人(房村精一君) 司法制度改革審議会の御議論ということになりますが、基本的に簡易裁判所での事件については、もちろん少額、軽易であれば法律的にも常に簡単というわけではありませんが、一般的に言って、法律的に見てもそう難しい事件はないということも考慮して、簡易裁判所の訴訟事件についての訴訟代理権を認めたということになるわけでございますが、強制執行事件については、基本的には地裁で扱われる事件でございますし、中には執行異議であるとか執行抗告であるとか、それなりに高度な知識を必要とするものも当然含まれているわけでございますので、この改革審議会では、執行関係についてはなお将来の検討課題だということになったものと理解しております。
○角田義一君 駄目だ、そんなことじゃ世の中通らぬよ、通らないです。
 あなた、簡裁の事件、確かに九十万という訴額に限られていますけれども、簡裁の事件だって難しい事件一杯あるんですよ。建物収用、土地明渡しもあるだろうし、損害賠償だってあるだろうし、手形で、何でもすぐ手形持っていって勝つような事件だけじゃないんだよ、非常に複雑な事件だってあるんですよ、九十万円の訴額は訴額だけれども。それをみんなこなしてもらうんですよ。
 今、何と言った、あなた。簡裁の事件というのは割かし軽微で簡単だから訴訟代理権を与えると。そんな感覚、法務省は。どうなんですか。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、簡易裁判所においてもそれなりに難しい事件があることは事実だろうと思っておりますが、一般的に言えば、やはり簡易裁判所の事件については簡易迅速に解決する、そういう観点で手続についても特則が設けられておりますし、また簡易裁判所判事の資格についても地裁以上の資格とは異なる資格を設けている、あるいは代理人についても許可を得て代理人になることが認められているというような様々な特則があるわけでございますが、その背景には、一般的に言って、少額、軽易な事件については、地裁以上の事件に比べれば比較的軽易な事件が多いということが考慮されているのではないかと思っております。
○角田義一君 あなた、よくそれで裁判官が務まってきたね、今まで、そういう認識で。
 あのね、いいですか、依頼者にとってはどんな事件でも大事件なんですよ、深刻な事件なんですよ。一生に一遍なんです、裁判所へ行くなんてことは、普通の人は。そういう依頼者の深刻な立場というのを、あんた分かっていないんだよ。だから、そんなこと平気で答弁しているんだよ。恐ろしい裁判官だ、恐ろしい局長だ、おれに言わせりゃ。
 それと同時に──じゃ、僕、質問変えて聞きますわ。
 さっき、あなた、簡易裁判所では普通の人でも訴訟代理権を裁判所の許可があればもらえると言ったね。どういう人がもらっているんですか。
○政府参考人(房村精一君) 簡裁の実務、必ずしも詳しくないんですが、一般的……
○角田義一君 詳しくないなら調べてきてください、そんな。詳しくないなんて、それはちょっと聞けません。そんなこと、国会通らぬよ。
○政府参考人(房村精一君) はい。
 一般的には、例えば親族等の身近な方で本人が十分法廷で述べられないという場合に代理人に許可をされるとか、あるいは会社の従業員でその事件についてそれなりの知識があって手続が進行できるという方に許可を与えているという具合に承知しております。
○角田義一君 それはそう。親族だとかサラ金の業者の従業員は訴訟代理権、許可されているでしょう。どうですか。
○政府参考人(房村精一君) ですから、従業員で知識を持っている人が許可を受けているということは実情としてあると理解しています。
○角田義一君 その人は、司法書士さんのように、今度はこれから代理権をもらうんだけれども、研修受けているんですか、弁論やっているんですか、証人喚問のことやっているんですか。
○政府参考人(房村精一君) 別にそのような研修等はございません。
○角田義一君 その人は、いいですか、強制執行の代理権ありますか。
○政府参考人(房村精一君) こちらは、強制執行の関係はまた民事執行法の十三条に許可の制度がございますので、そちらを利用している場合もあると思います。
○角田義一君 民事執行法十三条で許可を裁判所へ出せば大体許可をもらって強制執行しているんですよ。サラ金のあんちゃんが、全部、裁判所から許可をもらっちゃ強制執行やっているんだよ。別に研修を受けちゃいないんだよ。これ、大問題になっているんですよ、いろいろ。問題はあるけれども、現実はそうだ。
 特別な研修受けて弁護士と同じようなことをやる人がなぜ強制執行の代理ができないの。合理的な理由の説明ないじゃないですか。
○政府参考人(房村精一君) 一般的に、今申し上げましたように、親族であるとかその会社の従業員という者に許可を与えて認めているわけでありますし、司法書士の場合には、弁護士と同じように他人の法律事務を処理するために職業として行うということで、それはそういう違いが起こり得るということだと思います。
○角田義一君 冗談じゃないよ、あんた。サラ金のお兄ちゃんはね、正に職業として強制執行ばっかりやっているんだよ、あんた。職業として強制執行ばっかりやっているんだよ。
 今度はプロが、立派な職業人たる者が、じゃ、一々今度はあれかね、裁判所の、簡易裁判所の、強制執行やるときには許可をもらうの。それが唯一の救済策か。どうなの。
○政府参考人(房村精一君) ですから、申し上げたように、司法書士の方々に今回付与されているのは簡易裁判所の訴訟事件の代理、それから調停事件、それから即決和解事件の代理権でございますので、そもそも司法書士の業務として強制執行事件について代理人となるということは含まれておりません。
○角田義一君 だから、許可をもらわなきゃできないのかと聞いておるんじゃないですか。一々許可をもらわなきゃできないのか聞いておるんだよ。
○政府参考人(房村精一君) ですから、今回の法律では、司法書士の業務として強制執行事件について代理人になるということが含まれておりませんので、司法書士の業務として行うということはこの法律で想定されていないということでございます。
○角田義一君 じゃ、サラ金のお兄ちゃんは、商売のようにばんばんばんばん強制執行できるけれども、司法書士さんが、じゃ、今、法律で大変だからといって、強制執行の許可をもらいたい、強制執行の代理の許可をもらいたいと、裁判所は許さないわけ。サラ金の業者のお兄ちゃんには執行権を許して司法書士には許さないんか。そういうことになるよ、あなたのことでいったら。
○政府参考人(房村精一君) 裁判所の許可の問題ではなくて、この司法書士法の業務範囲の問題でございますので、司法書士法で今回新たな業務として認めたのが司法制度改革審議会の意見に沿った代理権でございますから、それ以外の、今回認められていない強制執行の代理人となるのは司法書士の業務に入っていないということを申し上げているわけでございます。
○角田義一君 冗談じゃないよ、あんた。サラ金のお兄ちゃんが仕事としてどんどんどんどん強制執行やって、民をいじめると言っちゃ悪いけれども、やっていてだよ、それを認めておいてだな。
 いいですよ、じゃ。訴訟の代理権しかないにしても、許可があれば強制執行代理権を与えることができるんだから、民事執行法は。じゃ、民事執行法の十三条には、司法書士にはその強制執行の代理権は与えない、排除すると明文があるんかね、明文があるんですか。明文が、排除する明文があるのかね。私の言っていること分かる。
○政府参考人(房村精一君) いや、ですから、強制執行法の十三条で許可を与えるかどうかというのは裁判所の権限でございますので、それは、その許可が与えられた場合に民事執行法上代理権があるかどうかということでございます。
 こちらの司法書士法の方は、司法書士が業務としてそれを行えるかどうかということでございますので、その業務範囲に入っていなければ業務としては行えない。場合によりますと、それが法律事務であって、他人から報酬を得ていると弁護士法七十二条の問題が生ずるという、そういう関係でございます。
○角田義一君 あのね、じゃ、あれですか、司法書士さんは今度の法律で強制執行の代理人は認められていないけれども、民事執行法の十三条の許可ももらえないということ。
 私は、いいですか、本当ならこれは改正した方がいいと思うんですよ。改正して、委任を受けた者については強制執行を認めるというふうに法律を改正した方が依頼者の立場から見れば親切なんですよ。
 せめて、それがもし仮にできない──これもまたちょっと理事会で私は議論してもらいたいと思うんだけれども、こんなの難しい改正じゃないんですよ。せめて、もしそれができないんならば、民事執行法十三条において裁判所が執行を許可すると。これを排除する明文は全くないんだから、運用はそれでやる以外ないんですよ、運用は。そうじゃないの、あなた、こっくりしているけれども。
○政府参考人(房村精一君) ですから、先ほどから申し上げておりますように、民事執行法十三条の許可を司法書士に与えられないという明文の規定があるわけではございません。
 申し上げているのは、今回の改正で新たに付け加わる業務の中に強制執行の代理人になるということが規定されておりませんので、その十三条の許可を得て行った場合に、弁護士法七十二条についての問題が生ずるということを申し上げているわけでございます。
 また、弁護士法七十二条と隣接法律専門職種の業務との関係につきましては、司法制度改革審議会の最終意見で、弁護士法七十二条については、少なくとも、規制対象となる範囲、態様に関する予測可能性を確保するため、隣接法律専門職種の業務内容等の実態も含めて、その規制内容を何らかの形で明確化すべきであるという提言もされているところでございますが、私どもが申し上げているのはそういうことでございまして、民事執行法上、司法書士に許可が与えられないとか、あるいは民事訴訟法上許可が与えられないということを申し上げているわけではございません。
○角田義一君 だから、運用としてやらざるを得ないということでしょうよ。運用として裁判所が許可することまで否定できないでしょう、局長、どうなの。そこだけ念押ししておきます。
○政府参考人(房村精一君) ですから、それはあくまで裁判所の御判断でございますので。
○角田義一君 これはまた後で協議してもらいたいと思うんですけれども、私は欠陥だと思うんですね。この法律改正案の一つの欠陥だと思います。
 それからもう一つ。裁判を簡易裁判所でやったと。勝った負けたになるということもあるわけですね。当然、裁判ですから勝った負けたになる。負けた、控訴したいと。本人はもちろん控訴できますけれども、その控訴の代理権、これは与えられていますか。
○政府参考人(房村精一君) 今回の改正法では控訴の代理権は与えられておりません。
○角田義一君 控訴の代理すら与えない合理的理由を言ってください。
○政府参考人(房村精一君) 今回の意見書では、要するに簡易裁判所における代理権を付与するということになっております。控訴の提起というのは控訴審に対する訴訟行為ですので、基本的に簡易裁判所の審級における代理権には含まれないわけでございます。その点は民事訴訟法においても審級代理の原則が取られておりますので、受任した事件について控訴を提起するためには特別の委任がなければならないという規定が、民事訴訟法のたしか五十条だったと思いますが、規定が、五十五条ですね、失礼しました、ございますが、そういうことから、一般的に審級代理の代理権の範囲としては上訴の提起は含まれないということになっております。
 そういうことからすると、今回の簡易裁判所の訴訟代理権の範囲として上訴を含める、上訴権は含まれないということになろうかと思います。
 また、現実的な問題といたしましても、控訴状を提出いたしまして、例えば上級審で控訴状の補正を命じようと思いましても、既にそれはもう完全に控訴審での訴訟活動ということになりますので、代理人としてはそれに応ずるわけにもいきませんし、また代理人として表示された控訴状が相手方に行きますと、控訴審においてもその人が代理人として活動するという誤解を招きかねないと。そういう観点から、今回、代理権の範囲としては控訴の提起は除いてございます。
 ただ、どうしても急遽、控訴だけはしておきたいという、当事者が希望する場合には、司法書士は裁判所に提出する書類の作成権限は与えられておりますので、それは控訴状を作成して本人がそれを提出するということは可能でございます。
○角田義一君 要するに、あんたの答弁は、ずっと聞いていると国民の立場、依頼者の立場、市民の立場というのが欠落しているんですよ、私に言わせると。本質的に欠落している。
 これは、控訴審はいいですよ、弁護士さんがやればいいんだ、地裁になっちゃうんだから。代理権ないんだからできないんだ。だけれども、現実は、例えば二週間なら二週間という期限しかないわけだから、その間に控訴するかしないか悩む、迷うわけだ。本人も迷うんですね。弁護士さんに頼む、今度、弁護士さんに頼まにゃならぬ。しかし、確定してしまったら負けちゃうわけだから、確定はしないうちに控訴だけはしておこうかと。それで、控訴だけしておいて控訴審は、じゃ別の弁護士さんに頼もうかと、そういうこと一杯あるわけですよ。
 それだから、新たにやっぱりそれは控訴するだけの代理権ね、これは、じゃ法律にそのことを書けばいいわけでしょう。代理権だけ付与することもできると書けばいいわけでしょう。人間の社会というのは絶対ということはないんだ、人間のやることなんだから。依頼者にとって一番便利なように法律を作ってやればいいんですよ。どうなの。
○政府参考人(房村精一君) それは、法律で控訴の提起の代理権を与えれば、それは司法書士にはそういう権限が帰属します。
○角田義一君 これは一つ課題として提起しておきます。今のままだと、これはもう、変な話だけれども、本人が迷ったときに司法書士さんが書いてやって、これを本人が持っていけということになるんだね。本人が裁判所へ持っていけということになる、代理人が持っていけないんだから。そういう、利用者の立場に立てば不便なんですよ。これは今後、ちょっと先生方に是非お考えをいただきたいと思います。
 それからもう一つ、報酬の問題について聞きたい。
 今度の、これは土地家屋調査士の方はちょっと任務分担していますので千葉先生がお聞きになると思うんですが、司法書士の関係の報酬についてお聞きしますが、この報酬の定めというのは今度の法律ではどんなふうな扱いになるんですか。
○政府参考人(房村精一君) 報酬に関する規定は、従来、司法書士会あるいは土地家屋調査士会の会則事項として法律で定めておりましたが、今回の改正によりまして、会則記載事項から報酬に関する規定を削除することといたしております。
 その理由といたしましては、規制改革推進三か年計画、これは十三年の三月三十日の閣議決定でございますが、ここにおきまして、資格者間における競争を活性化する観点から、資格者における報酬基準を削除するとされております。これを受けて行ったものでございます。
 なお、同様の専門職種としては、行政書士それから弁理士が同様に会則事項から報酬規定を削除していると承知しております。
○角田義一君 私は守旧派なんですよ、保守派。保守派ですよ。もう典型的な保守派だよ、僕は。さっき言ったその規制緩和三か年計画で何とかという、その報酬を自由化してやればいいというのは私は反対。なぜそんなものが通って、みんなで満場一致で来たんだかちょっと分からぬ。私は、党議拘束がなければ、この報酬規定をなくすというのは私は反対です。
 なぜ反対かというと、今度、司法書士さんは弁護士と同じに訴訟代理権をいただいて裁判に立つわけです、法廷に立つわけです。すると、依頼者の立場としては、悩んで、そして司法書士さんのところへ訪ねていくわけだ、何とかしてくださいと。二つ悩みがあるんですよ、依頼者というのは。事件の悩みとお金、弁護士さんと今度は司法書士さん。幾ら払う、まあ取られると言うとちょっと語弊があるんだけれども、幾ら払うかと、幾ら取られちゃうのかと、これがまた悩みなんです。事件で悩んで、幾ら取られるか、幾ら払わなくちゃならないかで悩んだら寝られなくなっちゃうんだよ。私は弁護士やっていて、このごろ全然実務やっていませんけれども、そういう相談なんだから、先生は幾ら払ったらいいんですか、幾らと。最大の悩みなんですよ、ある意味では。
 それで、逆に言うと、変な話だけれども、一流の弁護士さんというものは上手に上納金をちゃんともらう。冥加金じゃないけれども、喜んで、ああ有り難いといってお出ししてもらってもらうというのがこれが最高の弁護士なんです。本当なんだよ、これ。それ、嫌み言われながらこんな金もらっていては駄目なんだ。それは一流の弁護士じゃないんだよ、まだ。と同時に、今度は司法書士さんもそうなるんだよ。ところが、報酬規定は一切ない。その悩み、どう解決するね。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、弁護士あるいは司法書士を利用する場合に、一体この事件を依頼して幾ら払わなければいけないかというのは、利用する国民にとって非常に大きな関心事だろうと思います。そういう意味で、従来、会則で報酬基準が定められていたということは、利用する国民にとってそれなりの目安となるわけでありますので、利用者にとって大きな役割を果たしていたのではないかと私どもも思っております。
 ただ、申し上げましたように、この資格者間における競争を活性化する観点から、資格者における報酬基準を削除するという、要するに、会がそういう報酬基準を決めるのは競争制限のおそれがあるということでございます。
 ただ、利用する立場からいえば、それは事前に利用したときにどういう報酬になるかということを明らかにしておいてもらわなければならないわけでありますので、今後の問題といたしましては、会が一律にそういう基準を作るということは、今回、会則から削除されましたのでなくなるわけでありますが、少なくとも個々の司法書士の方々は、自分を利用した場合にどういう報酬の基準になるのかということを利用者に当然示していただかなければならないでしょうし、そういう意味で、個々の資格者がそういった報酬基準を事務所に掲示するというようなことを会則で義務付けるということは十分あり得るわけでございますし、また、会の方が自己の会員のそういった報酬基準を調べまして、平均的な報酬基準はこういうことで定まっているという事実をインターネット等で公開するということは当然あり得る、あるいは現実にどのくらい取られるといったようなことを公開することもあるいは考えられるかもしれません。報酬の定め方という基本的な考え方を公表するということも考えられると思います。
 私どもとしては、この閣議決定の競争を活性化するという観点と並んで、利用する国民が自分が利用する場合にどの程度の報酬を支払わなければならないかということを事前に分かるような、そういう安心して利用できる制度にする必要があるだろうと思っておりまして、その競争活性化と矛盾しない範囲でそういった工夫をしていきたいと。また、会においてもそういうことをお考えになっていると承知しております。
○角田義一君 あんたね、あんたねなんて言っちゃ悪いけれども、あなたよ、霞が関にいて雲の上にいるとそういうことになっちゃうんだよ。霞が関にいて雲の上にいるとそういうことになっちゃうんだよ。全然庶民の感覚が分かっていない、あんた、失礼だけれども。
 いいですか、自分の事務所の報酬の表示をしろというんだよ、それは基準じゃないんだよ。自分がこれだけもらいたいというのが張ってあるだけの話なんだよ。そうすると、依頼者は、ああ、この先生はこの程度かと。スーパーで物を買うんじゃないんだよ。一軒一軒、じゃ、司法書士さんのうちを回って、ここのうちはどうなんだ、ああ、ここのうちはこれは安いと。一軒一軒回って、安い、一生懸命やってくれるかなと選んで、全部回って決めるのかい。そんなばかなことできないでしょう。
 いいですか、競争原理、競争原理と言うけれども、競争原理になじむこととなじまないことがあるんだよ、世の中。なじまないことは、競争原理になじまないことまで競争に持っていっちゃ駄目なんだよ。少なくとも、目安、それは基準なんだよ。そのものは、それは事務所にちゃんと表示されてしかるべきなんだよ。私はこれだけもらいたいというのは、それは標準でも何でもないんだよ、目安でも何でもないんだよ、それは自分の欲望だ、はっきり言えば。そんなもので世の中通らないんですよ。
 だから、私はこの報酬規定を削除するというのはどうにも理解できない。私は保守派だからね、守旧派だから言うけれども、駄目だ、これは。これは、立場に立ってごらんなさいというんだよ。あなた、偉くなっちゃって霞が関の上に行っちゃっているから庶民感覚全く分からないんじゃないの。どうなんですか、私の言っていること、間違っていると思うの。全然暴論で、とんでもないこと言っていると思いますか。
○政府参考人(房村精一君) この規制改革推進三か年計画の基本的考え方が、正にそういう会、資格者団体が基準を定めるということが競争を活性化する観点から問題があるということでこういう閣議決定に至っているわけでございますので、私どもとしては、それを尊重して、会が基準を決めるということについては会則事項から落とすということにいたしているわけでございます。
 ただ、利用者の目から見て分かりにくいというのは御指摘のとおりだろうと思いますので、個々の方にやっていただくと同時に、資格者団体において、そういった平均的にどの程度の報酬額の定めになっているかというようなことをインターネット等を通じて公開することによって、利用者が個々の事務所を見てその報酬基準を幾つも見比べなくても、自分が依頼しようとする人がどの程度の報酬なのかということが分かるようなことは可能ではないか、そういったことを会等においても検討しているのではないか、その方法が競争を活性化するという観点と利用者の安心して利用できるということとの調和を図る方法ではないかということを申し上げているわけでございます。
○角田義一君 あのね、基本的にこういうことなんですよ。それは、事件をやって処理するんですから、しかるべき報酬をもらわなきゃならないのは当たり前なんです。生活もしていかなきゃ、事務所も運営していかなきゃいかぬと。だけれども、弁護士さんなりあるいはこれから訴訟代理権を受ける司法書士さんの真の競争というのは、さっき岩井先生が言ったとおり、依頼者のためにどれだけ戦って頑張ってくれるか、そしてどういう成果を上げてくれるかと、そういう信頼関係がある人が生き残っていくんだよ。それが真の、要するに我々のそういう法曹社会での競争なんですよ。銭じゃないんですよ。お金は、それはしかるべき報酬をもらうのは当たり前なんですけれども。
 だから、それは私は、ある一定の幅があっていいと思うんです。ぴたっとじゃなくてもいいと思うんですね。上限下限があってもいい、幅があってもいいんです。その幅ぐらいは、ちゃんとそれは会で決めたってちっとも悪くないんです。あとはその先生の力量、人格、それでもって勝つか負けるかということが、その世界で生き残れるか生き残れないかというだけだ。安かろう悪かろう、変な話だけれども、安かろう悪かろうが一番困るのは依頼者なんですよ。安かったけれども、ろくなことをしてくれないったら、どうなっちゃう。
 そういう根本を掘り下げて、そんな何とか三か年計画で、審議会になったからそのとおりやりゃいいんだというようなことじゃお役所は要らないんだ、審議会にやってもらいなさいよ。そういう審議会の議を経た上でどういうのが一番いいのかというのを判断して出してくるのがあなた方の役目と違うのかい。
 私は、もうこれ以上は、演説ぶつと時間になるから、最後、ちょっとあなたから聞いて、大臣に、私がいろいろぶってきた、ぶってきたなんて言っちゃいけないけれども、ぶってきたことに対する感想を聞きたいですよ、感想を。
○政府参考人(房村精一君) お客の信頼、満足というのはお金でないというのはもうおっしゃるとおりだと思います。
 ただ、報酬の関係は、先ほど来申し上げておりますように、平成十三年三月三十日の閣議決定されました規制改革推進三か年計画、これにのっとって今回の法案も考えているということでございます。
 同時に、御指摘のような利用者の立場での不安を払拭するため、これについては資格者団体とも協議をして、安心して利用していただけるような仕組みをできるだけ構築していきたいと考えております。
○角田義一君 最後に大臣、私がいろいろ問題提起したことについてどんなお感じを持っていますか、副本部長だから。
○国務大臣(森山眞弓君) 大変いろいろと鋭い御指摘をいただきまして、参考になりました。
 身近で利用しやすい、分かりやすい、信頼できる司法制度というものを作っていくということが司法制度改革の一番の目標でございますので、そのような観点から、先生の御指摘も十分参考にしながらこれからも努力していきたいと思います。
○角田義一君 私は終わります。
○千葉景子君 今、同僚の角田委員の方からそれぞれ質問がございました。私も、率直に言いまして、その質問そして御答弁を聞きながら、ちょっと私の通告している部分とは若干違いますけれども、改めて感じたんですけれども、一体今回のこの司法書士法の改正、そして土地家屋調査士法の改正、何をしようという気持ちでこの改正が行われるのか、そこが結局はっきりしていないのではないか、こういう気がするんです。
 というのは、これから本当に司法書士の皆さんに、弁護士に準じ、そして司法の充実、その一翼を本当に担っていただこう、そして市民にとっても利用しやすい司法というものを充実をしていこうという本当にそこの観点に立って今回の法律が組み立てられたのかどうか。どうも訴訟代理権、これを是非付与してほしい、こういう声もあるから、何かそこだけちょっと取り上げて法律を作っておこうかと、こんなことを考えたのではないかと思わざるを得ない、こんな気がいたします。
 先ほど指摘があった幾つかの問題点は、そういう基本をどこに置いてこの法律が作られたのか、そして今後、司法改革、そして司法の充実ということを考えて、本当に先ほどの答弁で納得されるのかどうか、ここを改めて考えておいていただきたいというふうに思います。
 まだ、参考人の質疑もさせていただいて、そしてその上でこの法律をどう仕上げるかという最後の質疑の機会もあろうかというふうに思いますので、そんな折に、今日の本当に疑問を呈せられた部分がはっきり私たちにも納得いかないようでございましたら、本当にこれは修正をしなければいけないとか、そういうことにもなりかねませんので、是非そこは改めてきちっと整理をしておいていただきたいというふうに思っております。
 さて、それにかかわりましてですが、私は今日は土地家屋調査士法の改正を中心にいたしまして何点かお聞きをさせていただきたいというふうに思いますが、やはりここでも同じように報酬の問題がございます。
 もう今既に司法書士法の関連で角田議員からも質疑がありましたけれども、私は決して抵抗勢力、守旧派とは自分では思っておりませんけれども、この報酬の部分に関しましては、やはりいささか疑問を感ぜざるを得ないところでもございます。
 同じことの繰り返しになろうかというふうに思いますけれども、この土地家屋調査士法の関連でも、今回は報酬基準を会則から除くということになっております。これも先ほどお話がございました、同じお答えが返ってくるんだろうというふうに思うんですけれども、さて本当にそれでいいのだろうか。
 私は、下手をすると、例えば業務をやっておられる側も、報酬の目安のようなものがないと、いや、あっちの調査士さんは相当報酬を減額しているんでないか、じゃ私もそのままじゃ仕事がなかなか来なくなるかもしれない、こんな要らぬ競争心といいましょうか、ところに気を回さなければいけない、こんなことが起こりかねない。
 そして、利用者の側は、やっぱりこれもなかなか選ぶわけにはいかないんですね、調査士さん、あるいは司法書士さんもそうですけれども。これまで弁護士だってそうだと思います。やっぱり、ちょうど前に紹介をいただいた、あるいはいろんな形で知ったその業務をなさっているところに駆け込んで、そしてお願いをするということが多いわけです。そうなると、その報酬ですね、それもどっちが適切かとか、どちらの方が格安にと言ったら変ですけれども、やってもらえるかなんということは考えておられないと、こういうことになるわけでして、そういう意味では、この報酬額の目安というのが全くないということについては私も非常に混乱を招くのではないかというふうに思っています。
 規制改革の観点からと言いますけれども、何の業務でも、そしてどんな分野でも、競争させりゃそれで済むというものではないというふうに思うんですね。そういう意味で、やはりこの土地家屋調査士の皆さんの部分でも、この報酬基準の在り方ということをどうすべきか考える必要があるのではないかと思いますけれども、同じ質問のようになりますけれども、改めてお聞かせいただきたいと思います。
○政府参考人(房村精一君) 繰り返しになりますが、私どもとしても、利用する国民の立場から見て、自分の依頼しようと思っている事件についてどのくらいの報酬が取られるのかということが分からなくては、それはもう本当に不安だろうと思うんですね。ですから、その点は何らか、そういう安心して利用できるような仕組みを作る必要があるという具合には思っているわけです。
 ただ、その仕組みとして、従来用いられておりました、会が会則としてその基準を定めるということがやはり競争制限的に働くという指摘がされているわけでございますので、それはやはり会則で決めるということはやめようと。ただ、それに代わって、じゃ利用するときに自分の依頼する人がこのぐらいだというだけではやはり不安ですから、全体としてどのくらい取られるのか。先ほど御指摘がありましたように、何軒かを見て回ればどこが高い安いというのは分かるわけですが、現実にそれを個々の利用者が行うというのは非現実的でありますので、そういう意味では、例えば、会が調査をして、自分のところの会員が大体どのような報酬基準を定めているんだろうか、多くの会員はこんな形の報酬基準を定めている、あるいは非常に高い方ではこういうものがある、低い方ではこういうものがある、平均的なところではこういう、あるいは現実にどのくらいの報酬が支払われているというようなことを会でお調べになって、例えば、会のホームページに知らせる、載せるというようなことは十分考えられるわけであります。
 また、少なくとも個々の人につきましては、自分の考えている報酬基準、これは当然それぞれ幾つもの事件を扱ってそれについて報酬を要求するわけですから、個々の人はそれなりの報酬基準を持っているんだろうと思います。
 従来はそれを、会の基準をそのまま使えばよかったわけですが、今後はその会の基準がなくなりますので、従来のものを参考にしてそれぞれの人が工夫をすることになると思いますが、そういったものを定めて、これは例えば事務所内に掲示していただくとか、そういう利用者がこの人に頼んだときに幾ら取られるということが分かるような仕組みは絶対必要だと思いますし、また平均的にどうなっているということが分かるような仕組みは、会においてそういったことを当然考えられるのではないかという具合には思っております。
○千葉景子君 今、お聞きしていますと、そうすると、それと、これまでのように会で、会則で一定の基準を決めていたということと実質的にどう違ってくるんですか。
 それと、それから、これまで会則で報酬額の基準を決めていた。それによって非常に不都合な問題があったとか、それからそれによって全体として適切な報酬額が高額になり過ぎて批判があったとか、そういうことが何かあるんでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) やはり、会則で決めますと、一般的に言って会員は会則の遵守義務がございますので、それは拘束力があるものと受け取られやすい、それだけ競争制限的に働くということは言えるだろうと思います。ですから、それが言わば実情、事実がこうですよという単に情報を伝達するだけの役割のものと、やはり会則までいきますと、そこはある意味で規範的な意味が出てくるだろうと思いますので、それは違いがあるだろうと思います。
 それから、具体的に不都合があったのかという点でございますが、これは正にそういう会が定めるということが競争制限的であるという、そういう御指摘があって今回やることになっているわけでございまして、それ以上に具体的な不祥事があったというようなことではございません。
○千葉景子君 今、本当にお聞きすると、やっぱりよく分からないんですよね。
 ただ、規制改革にのっとって報酬額の基準を会則から除いて、しかしそうはいっても、ただ勝手にやってもらったんでは利用者にも困るから、じゃ、また、会の方で全体の報酬額がどのぐらいかというのを調査をして、そして皆さんにお知らせをすると。こういうことをやったらどうかというんですけれども、それだったら本当に会則なりで、報酬額、幅があろうとも一定の、ここいらが適切に仕事もでき、そして利用者にも安心して利用していただける目安かなと、こういうのを作るということで本当に私は問題ないのではないかというふうに思います。
 何か、ただ規制改革だから取っ払えばいいという発想で安易にこの報酬の問題が今度の法律でも使われたんではないかと、そんな気がいたしますけれども、改めてここも、利用者にとって、そして業務をなさる側にとっても安心して仕事ができるような、そういう方策を改めて考えておいていただきたいというふうに思っております。
 さて、今回の土地家屋調査士の皆さんのこの法律の作り方が極めて何か分かりにくい、そして不親切だと私は思っております。
 お聞きをいたしたいんですけれども、今回は土地家屋調査士法人を作ることができるということになりました。土地家屋調査士の行える業務と、それから土地家屋調査士法人の行える業務というのは同じですか、違いますか。
○政府参考人(房村精一君) 業務、調査士に認められた独占業務という意味での業務範囲は、法人であっても調査士であっても同じでございます。
○千葉景子君 そうしますと、土地家屋調査士の業務というのは、法の三条に一号から三号で記載をされております。土地家屋調査士法人の業務というのは二十九条で範囲が示されております。「調査士が行うことができるものとして法務省令で定める業務」ということになっているんですね。
 そうすると、調査士の業務と、ここの法人の行う業務ということで「法務省令で定める業務」ということがここで使われておりますけれども、これは土地家屋調査士の業務にも掛かるわけですね。
○政府参考人(房村精一君) 三条で調査士のいわゆる独占業務を規定しております。それで、自然人の場合でありますと、この調査士としての独占業務以外にこれに関連するものについては、法で禁止されていない限りは同時に行うことができます。ところが、法人ですと法人の目的の範囲内でしかこういう能力が与えられませんので、調査士の業務を目的として設立された調査士法人については、特段の手当てをいたしませんと、普通の自然人であれば当然できることが法人だと目的の範囲に入ってこないのでできないということになってしまいます。そういうことから、今回、二十九条では、法人については特に、調査士の業務を行うほか、定款で定めるところにより、一定の法務省令で定める業務もできると、こうしたわけでございます。
 これは、調査士法人はやはり調査士の業務を行うことを目的とするのが中心でございますので、自然人としてできることをすべて調査士法人にやらせる必要はないだろう。したがって、調査士が本来の自分の独占業務と関連して通常やっているようなことは調査士法人にも認めるべきではないかと。その範囲は様々ありますので、実際の調査士の実態を見て適切に対応できるように省令に委任をしようと。その省令に定められた範囲を定款に掲げれば法人の目的に入りますので、法人としてできるようになるという、そういう考え方で今回できております。
○千葉景子君 そうしますと、今回の、今回のというか、この土地家屋調査士法の三条で一号から三号が定められておりますけれども、それ以外に自然人として当然行える業務が何か制約を受けたということではないわけですね。例えば、これまでも相談業務等やっておられますけれども、そういうところが、何か三条がいかにもそれは掲げていないので制約をしたというようなことではないと考えてよろしいですね。
○政府参考人(房村精一君) 従来から調査士業務に関する相談は当然、業務の一環として行い得ると、それに関して報酬を得ることも当然、調査士として行えるというのが一貫した解釈でございます。今回の改正でもその点は何ら変更はございません。
○千葉景子君 分かりました。是非、そこいらも誤解のないように、解説などにしておいていただきたいというふうに思っております。
 次に、やはり同じようにこれも分かりにくい規定の仕方で、それぞれ業務を行う皆さんもちょっと戸惑われるのではないかという部分がございます。それは改正法の六十八条にかかわるところでございまして、これは非調査士等の取締りの部分です。これも非調査士が調査士業務を行ってはいけないということですが、要するに、そうなると、普通ですと調査士の業務というのは、先ほど申し上げましたように、三条で記載をされているんですから、三条の業務を非調査士がやったらば、これは違反として取り締まられますよと。三条を引いて私は法が作られるのが分かりやすいと思うんです。ところが、ここでは六十四条が引用されると。
 六十四条というのは公共嘱託の条文なんですね。なものですから、この非調査士等の取締りというか、非調査士が行って取り締まられる業務というのは、公共嘱託にかかわることをやったら取り締まられるんじゃないかと、こういうふうにちょっと受け止められるというか、読まれやすい感じがします。
 まあ、本当にその条文を更に引用したものを更に引用して読めば分からないわけではないんですけれども、ここも要するに、従来どおり調査士のそのものの業務を非調査士がやった場合の規定というふうに考えてよろしいわけですね。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、六十八条、ちょっと一見読みにくいような規定になってしまって申し訳ないんですが、中身としては従前と変わりありません。基本的に調査士の業務に属することを他人がやってはいけないということでございます。
 ただ、ここを書き下ろそうといたしますと、直前の六十四条にあります「第三条第一号並びに同条第二号及び第三号(同条第一号に掲げる調査又は測量を必要とする申請手続に関するものに限る。)に掲げる事務」と、これだけのことを書かなければならない。たまたますぐ前に全く同じ文言を使った条文があるものでございますから、同じ文言を繰り返すよりは「六十四条第一項に規定する事務」、正に今読み上げた部分がこの「掲げる事務」として書かれたところなんですが、それを使ってしまったわけでございますが、確かに余り本来の非調査士の取締りと関係のない、協会の業務を定めた条文の中からたまたま文言が同じだということで持ってきたものですから、やや誤解を招きかねないということで、その点は私どもも反省しておりますが、法律の解釈としては今申し上げたとおりの読み方しかできませんので、それは誤解の余地はないだろうと思っています。
 ただ、確かに、一見分かりにくいものですから、この趣旨は私どもとしてできるだけ誤解を招かないように、広くそこは解説をしていきたいと思っております。
○千葉景子君 要するに、法律としては誤りでもありませんし、それから法律の作り方みたいなものがあるかもしれませんけれども、これはその仕事をやる方あるいは利用する方、やっぱり分かりやすくなくちゃ混乱のもとなわけですよ。私たちの責任でもあるかもしれませんけれども、ここで、これを条文をこっち引いてこっち引いて、ああ、やっと分かったということではなくて、やっぱり本当に法律というのがだれにとっても分かりやすいものにする、そういう書き方をするというのも重要なことだというふうに思います。
 誤りではありませんから、じゃ今、条文を作り替えろとは申しませんけれども、やっぱり解説なり、あるいはこの適用に当たってのきちっとした説明を分かりやすく浸透させておくということだけはしていただきたいというふうに思っております。
 さて、公嘱登記についてもちょっとお尋ねをしたいというふうに思っております。
 この制度は、私も、大量の、公共事業等を含めて大量に登記事務、登記手続が公官庁などから必要になるときに、この公共嘱託登記という形で協会に委託をするというようなことが行われてまいりました。この受託対象なんですけれども、これからいろいろな行政改革あるいは行政の見直しのようなこともあり、独立行政法人などの設立なども今後見込まれております。これまで公官署という形で受託の範囲といいますか対象が定められておりましたけれども、今後、独法などについてはどんなふうな位置付けになっていくのでしょうか。その辺について御説明いただきたいと思います。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘の公共嘱託登記土地家屋調査士協会、この制度は、いわゆる公共事業等に伴いまして大量の不動産の表示に関する登記の嘱託が生じます。これを協会が組織的に受託することによって、複雑かつ大量の公共嘱託登記事件を適正迅速に処理することを可能とすると、こういう目的で設立が認められた法人でございます。
 こういう、今後、その官公署以外に独立行政法人になっていくところがあるわけでございますが、その場合も、この独立行政法人が、今申し上げましたような公共事業等に伴って大量の表示に関する登記の嘱託を行うかどうかということを判断いたしまして、そういうところについては当然この協会の受託先として認められてしかるべきであろうという具合に考えております。
○千葉景子君 すべてが登記が必要な業務をするかどうかというのは別ですから、独法も、全くそういうものに縁のない独法もあると思いますので、それは当然のことながら必要であればそこも受託対象として考え得るのだというふうに受け止めさせていただきたいと思います。
 さて、先ほど司法書士に関する研修の問題がございました。この研修につきましては、また機会がありましたら司法書士に関連しても私もお尋ねをしたいところございますけれども、今日は時間の関係もございますので、土地家屋調査士の研修についてお尋ねをしたいというふうに思っております。
 やはり、今後、法人化が進み、そしてさらに司法改革の充実の面でその一翼を更に担って頑張っていただこうということになりますと、やはりこの研修というものが非常に重要になってまいります。土地家屋調査士の皆さんに対する研修については、どんなふうな位置付け、そして考え方に立たれているのでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 今回の改正法案でも、二十五条に研修の規定を新たに設けまして、「調査士は、その所属する調査士会及び調査士会連合会が実施する研修を受け、その資質の向上を図るように努めなければならない。」としているところでありまして、やはり何といっても国民に安心して利用していただくためには、この研修によって資質の向上を図っていただきたいと思っております。
 特に、調査士の場合には、その業務の特殊性、これは、例えば境界標の設置において地方によってそれぞれ異なる慣習があるとか、そういう地方ごとの特色もございますので、そういった点についても、今後、法人化等によって調査士の方々がいろいろなところに行くということもあり得るわけでございますので、そのときに、その地方のそういう慣習に習熟しないために誤った処理をするということのないように、この二十五条の二項で、「その業務を行う地域における土地の境界を明らかにするための方法に関する慣習その他の調査士の業務についての知識を深めるよう努めなければならない。」という、特にその業務の特殊性に配慮して力点を置くべきところも法律において明らかにしてございます。
 このようなことで、今後、土地家屋調査士の方々がより一層の資質の向上を図っていただければと思っております。
○千葉景子君 分かりました。
 私もいろいろお話をお聞きしてみると、やっぱり土地の調査、測量等をやるに当たっては本当に、その地域の慣習とか、測量の起点をどう取るかとか、非常に地域の特質というのがあるということを承知をさせていただいております。
 そういう意味では、例えばこの土地家屋調査士法人ができ、多少、これまで地元だけで仕事をしていたのが、法人化をすることによって地域的にも広範囲な仕事をするというようなケースも出てくるのかと思いますけれども、そういう際にも、やはりその法人としてそれぞれの地域の特質、そういうものを十分熟知するような研修に協力をする、あるいはそれに積極的に研修を受けるというようなことは法人としても当然すべきことだというふうに思いますけれども、そのように考えてよろしいですね。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のとおりだと思っております。
 特に、法人が地方に事務所を出す場合には、その事務所に社員を常駐させると、しかもその社員はその事務所所在地の調査士会の会員になるということにしてございますので、当然そういう方々はその地方の慣習についてそれなりにしっかりした勉強をしていただけるという具合に思っております。
○千葉景子君 さて、ちょっと今日はなかなかまとまった質問にならなくて申し訳ないんですけれども、この調査士の皆さんもこういう研修を更に積んで研さんを深めようと。先ほど司法書士の皆さんの研修の問題、非常に私も大変なことだというふうに思います。
 それで、さっき、冒頭、私が申し上げたのは、やっぱりこれからこういう業務に就いて、本当に司法改革の大きな一環として、それから司法の充実という意味で一翼を担っていただくと、そのために研さんを積んでいただこうというのであれば、この研修について、やっぱりそれぞれの皆さんに任せるということではなくて、やっぱりそれをサポートする、とりわけ財政面などで何らかサポートをしていく必要があるのではないかというふうに思います。
 権限も上げます、だから研さんに努めなさい、そのためには少し自分で負担するぐらいは当然でしょうと、こういう立場でいいのかどうか。やっぱり、これからそれが国にとっても大きな財産になっていく、そして利用者にとってもそこが本当に大きなよって立つところになるとすれば、この財政などにも一定のやっぱり国としての配慮、こういうものが必要になってくるのではないかというふうに思うんですけれども、その辺りはどんなふうにお考えでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 基本的に、専門職業の方々の行う研修というのは自己の能力を高めるということを目的とするものでございますので、もちろん社会的に非常に有用なことではございますが、やはりその能力を高める主体である方々の負担で行っていただくということが原則ではないかという具合に思っております。
○千葉景子君 一般的に、自ら研さんに努めて能力を高めて、そして皆さんに安心していただこうと、これは自らやることは当たり前なことだと思います。ただ、今回の、特に司法書士の皆さんの研修というのは、やっぱり権限ですね、新たなる権限の付与と、この条件として行われる研修なわけですよ。そういう意味では、資格者が自らの研さんを深めようというものとはまたちょっと質的に違う研修だというふうに思うんですね。
 そういう意味で、今おっしゃったように、それは、自らが研さんをする、そのために自己投資をすると、これはいいですよ。ただ、やっぱりこれを制度として、資格付与の一定の条件としてこのようなことをやる。
 まあ自分のことを言うのはなんですけれども、弁護士あるいは法曹三者と言われるところは、国のやっぱり費用によって研修をし、そして資格を得ると、それで法曹としての力を付けていくということなわけですから、そういうことと比較いたしますと、余りにもそっけないというか気の毒な今の御答弁じゃないかというふうに思います。この辺りはいろんな財政問題もあると思いますが、その辺の配慮ということを念頭に置いておいていただきたいというふうに思います。
 もう時間になりましたので、また機会があるかと思いますので、その際にまたその余の部分もお聞かせいただきたいと思います。
 ありがとうございます。
○委員長(高野博師君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。
   午後零時十九分休憩
     ─────・─────
   午後一時三十分開会
○委員長(高野博師君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 本日、平野貞夫君が委員を辞任され、その補欠として渡辺秀央君が選任されました。
    ─────────────
○委員長(高野博師君) 休憩前に引き続き、司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○浜四津敏子君 公明党の浜四津でございます。
 今回の司法書士法改正、また土地家屋調査士法改正の各改正案で、それぞれ法人化を認めることとしております。一人で業務を担うよりも、複数で行う方がより業務の継続性あるいはチームプレーまた安定性を確保できる、また依頼者にとりましてはより安心という面もあるかと思いますが、今回それぞれ法人化を認めることとした意味はどこにあるのか、法人化のメリットについてどのようにお考えか、お伺いいたします。
○国務大臣(森山眞弓君) 専門資格者である司法書士、土地家屋調査士が法人化されますと、業務の共同化が図られまして、その結果、業務の分業化、専門化が進みまして、利用者に質の高い多様なサービスを安定的に提供することができるということになります。また、法人が受任主体になりますので、仮に担当者が亡くなるというようなことがありましても引き続き法人によって事務が処理されますので、依頼者の地位も安定強化されるというふうに考えられます。
 以上のように、法人化は一層の国民の権利の保護又は不動産に係る国民の権利の明確化に寄与することができるものと期待している次第でございます。
○浜四津敏子君 それでは次に、司法書士法人の業務の範囲についてお伺いいたします。
 法案二十九条一項一号で、「司法書士法人は、第三条第一項第一号から第五号までに規定する業務を行うほか、定款で定めるところにより、次に掲げる業務を行うことができる。」としておりまして、一号で、「法令等に基づきすべての司法書士が行うことができるものとして法務省令で定める業務の全部又は一部」と規定してございます。
 ここで言う「法務省令で定める業務」とは何か、具体的にどのような業務を考えておられるのか。具体的に、例えば成年後見事務あるいは財産管理事務、遺言執行事務などは含まれることになるのかをお伺いいたします。
○政府参考人(房村精一君) ここで考えております事務といたしましては、自然人である司法書士の方が業務に関連して通常行っているような事務、これを司法書士法人にも可能にするというために省令でそれらの事務を規定することを考えておりますので、ただいま御指摘の成年後見事務等は、この省令で定めようとする事務に入っております。
○浜四津敏子君 この成年後見制度につきましては、実施されてからちょうど二年が経過いたします。司法書士の方々が中心となりまして熱心に取り組んでこられた業務の一つとして、これを司法書士法人としても行うことができるというのは、よりニーズに合った後見事務を遂行できることとなると考えております。
 この成年後見事務は、司法書士及び司法書士法人が行うことができるこの成年後見事務というのは、法定後見、つまり家族などが家庭裁判所に申し立てて法定後見人が選任されて財産管理が行われるという法定後見と、それから元気なうちに自分で任意後見人を決めるという任意後見とがありますけれども、これは双方とも含むと考えてよろしいんでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 双方とも含めるつもりでございます。
○浜四津敏子君 この司法書士及び法人が後見事務としてなし得る業務の範囲でございますが、法定後見につきましては裁判所が認める事務の範囲、任意後見につきましては契約によって定まる範囲と、このように考えてよろしいんでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のとおりでございます。
○浜四津敏子君 成年後見事務は、大別していわゆる身上監護と財産管理とに分かれます。その双方を行うことになるわけですけれども、例えば身上監護に関しましては、後見人はヘルパーやあるいは訪問看護婦を探して頼むことや、あるいは介護、医療など多岐にわたる事務に関与することになります。厳密に見ますと、この二つの分野、つまり身上監護と財産管理の分野に必ずしも入らないものも本人の権利保護のためには必要となってくることが現実には様々起こってまいります。
 こうしたいわゆる付随事務についても省令に明記すべきと考えますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 成年後見事務を司法書士法人の取り扱える業務に含める場合には、御指摘のような付随事務は当然含まれるものと考えておりますが、それをどのような形で省令に明確化するかということは、御指摘の点も踏まえて検討していきたいと思っております。
○浜四津敏子君 この成年後見制度、法定後見及び任意後見の実施状況について最高裁にお伺いいたします。
○最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 御説明申し上げます。
 ただいま委員御指摘のとおり、成年後見制度がスタートいたしまして二年を経過したわけでございます。この間の事件の受理状況等概要を御説明申し上げたいと思いますが、まず申立て件数でございますけれども、平成十二年四月の施行時期から一年間の総合計、これは今御指摘の法定後見、任意後見、合わせたものでございますが、合計が九千七件でございまして、これは対前年、これは旧制度による禁治産宣告等の時代でございますが、対前年比で二・五倍という数字になっております。そしてさらに、それが平成十三年四月からこれは本年の二月まででございますけれども、十一か月間の件数にいたしますと九千九百四十九件でございまして、これは対前年比一・二倍という状況でございます。
 また、既済件数の関係でございますけれども、平成十二年の一年間におきましては五千百八件でございましたが、これが平成十三年四月からの十一か月間におきましては九千百九十七件となっているところでございます。
 なお、申立てがあったうちどの程度のものが認容されているかということについて見てみますと、平成十二年におきましては、すべての事件を通して見たところでは六八・八%が認容されております。これが、平成十三年の関係、これは今年の二月までの十一か月分でございますけれども、七六%が認容されている、すなわちほとんどのケースが認容されている、こういう状況にあると言ってよろしいかと考えております。
 また、審理期間の関係について見てみますと、平成十二年におけます平均審理期間は三・七月でございましたが、平成十三年四月から本年二月までの平均審理期間は四・六月となっているところでございます。
 さらに、先ほど来出ております成年後見人の関係でございますけれども、どういった方がなっているかという点について状況を見てみますと、平成十二年の一年間におきましては、親族がなっているケースが九〇・九%でございまして、その他親族以外の方がなっているケースが九・一%でございます。その内訳でございますが、弁護士がなっているケースが四・六%、そして司法書士等がなっているケースが三・二%でございました。これが平成十三年の関係、今年の二月まででございますけれども、見てみますと、親族がなっているケースが八六・二%であるのに対しまして、その他のケースが一三・八%ということでございまして、その他のケースが増えている現状があるように見られます。その内訳につきましても、弁護士がなっているケースが七・七%、司法書士等の方がなっているケースが四・六%、こんな状況でございます。
 以上でございます。
○浜四津敏子君 ありがとうございます。
 この二年間の実施期間を経まして現場からは様々な問題提起がなされております。
 例えば、その一つは、この制度の周知がまだまだ不十分ではないかという点がございます。また、二番目には、市町村長の申立てが制度として認められているわけですけれども、この件数が極めて少ない。これは申立ての要件である、その福祉を図るため特に必要があるときというこの要件の解釈がかなり厳しく解釈されている市町村長が多いということもあると伺っております。また、費用の問題もあるということが指摘されております。また、三番目には、本人の費用負担がかなりに上るのではないか。これは、例えば公正証書の費用とか、あるいは後見人、後見監督人の報酬等、本人の負担がかなり重いという声もあります。また、四点目といたしまして、職業後見人あるいは後見監督人の報酬が低過ぎるのではないか、どうも苦労が多くてなかなかそれに報われるような報酬になっていないのではないかという声もあります。
 これらの点を含めまして、法務省としてこの二年間、実施の中でとらえておられる問題点及びその対応についてお伺いいたします。
○政府参考人(房村精一君) まず第一に、周知徹底の点でございます。
 これは平成十二年四月に制度がスタートしたわけでございますが、法務省としては、その制度導入の前後を通じまして、制度の周知定着を図るために、法務局あるいは司法書士会等へパンフレットの配付を行うなどいたしました。また、ホームページにもこの成年後見制度についての解説を登載して国民に広く知ってもらうというための努力をしたところでございます。なお、まだ今後もこのような周知の努力を続けていきたいと考えております。
 それから、市町村長の申立てのことにつきましては、ちょっと直接の所管ではないので私どもとしては何とも申し上げようがないのですが、制度としてこういう市町村長の申立てというものも作っているわけでございますので、適切に御利用をしていただければという具合には思っております。
 それから、費用負担の点でございますが、これにつきましては、成年後見制度の趣旨が、本人の利益保護の観点から本人の財産管理等を適切に行うために利用されるものであるということから、成年後見人等の後見事務等に要する費用、報酬に関しては、基本的には本人がその財産の中から支弁すべきものということで立法をされたわけでございます。
 しかし、他方、社会福祉分野においては、低所得者も含めまして日常生活に必要な援助を行うための利用者支援の取組について、成年後見制度との連携あるいは補完を視野に入れながら検討が進められることが必要であるということから、関係省庁において、市町村が行う成年後見制度利用を支援する事業に対して補助を行うなどの努力をしているものと聞いております。今後、そのようなことによりまして、この後見制度がより国民にとって利用しやすいものになっていくようにと思っております。
 それから、後見人の報酬でございますが、これは、その性質上、一律に決定するということは適当ではなくて、後見事務の内容、その難易度であるとか在職期間であるとか、あるいは成年後見人あるいは成年被後見人の資力なども考慮して、家庭裁判所において決定されるという仕組みになっておりますので、このような中で適切に判断をしていただければと、こう思っているところでございます。
○浜四津敏子君 これまで法定後見人、また法定後見監督人として家庭裁判所から選任されている法人というのはどのくらいあるんでしょうか。また、どういう法人が選任されているのか、お伺いいたします。
○最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 平成十二年度の数字でございますけれども、法人が後見人あるいは後見監督人等に選任された事案は合計十四件でございました。内訳でございますけれども、司法書士会から成るリーガルサポートは六件、社会福祉法人が五件、家裁調査官のOBから成る家庭問題情報センターが三件でございます。
 以上でございます。
○浜四津敏子君 今お答えの中にありましたリーガルサポートというのは、一九九九年十二月に法務省の許可を受けて設立された、司法書士の方々が設立にかかわり、またその後の実務にかかわっておられるわけでございますけれども、この成年後見制度に関する司法書士の方々の取組、ある方の表現をかりますと、成年後見制度と司法書士制度とは車の両輪であるということを言っておられる方もおられますが、この司法書士の方々の成年後見に対する取組、活動状況を法務省としては把握しておられるのかどうか。また、その取組をどう評価しておられるのか、お伺いいたします。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、司法書士が中心となりまして、社団法人成年後見センター・リーガルサポートを設立しております。これは、司法書士約三千百名が正会員となりまして、その会員の会費を主な財源として活動をしております。同法人では、全国五十か所に支部を設置いたしまして、成年後見制度が施行されてから、任意後見契約の締結あるいは家庭裁判所による成年後見人の選任等によりまして約一千百件の事件を処理していると聞いております。また、同法人が委託者になりまして、資力に恵まれない利用者に対する後見人報酬を助成するために公益信託成年後見助成基金の設立も行っております。そのほか、後見人養成のための講座等も同法人で開設して、後見人の資質の向上に努めておられると聞いております。
 私どもとしては、司法書士が国民に身近な法律家という自分たちの持っている能力を活用して、このような形で成年後見制度の充実に取り組んでいただいているというのは非常に評価をしているところでございます。
○浜四津敏子君 先ほどもお伺いいたしましたが、この後見人の報酬でございますが、専門家として携わる職業後見人、成年後見人の報酬が低いという声が聞かれます。この報酬につきましては、平成十三年四月からは介護保険制度の仕組みの中で、介護保険制度を利用する人に限りまして成年後見制度利用支援事業が厚生労働省の予算事業として実施されておりますが、こうした成年後見に係る費用あるいは報酬につきましては何らかの公的支援がもう少し必要ではないかと考えております。
 その一つとして、今後、成年後見事件は法律扶助協会の扶助の対象とするということも考えられますが、法務省、いかがでしょうか。
○政府参考人(吉戒修一君) お答え申し上げます。
 成年後見に関します家庭裁判所に対する申立て手続、これは家事審判法九条に基づきます後見の開始、保佐の開始、補助の開始、それから任意後見監督人選任に関する審判でございます。これらいずれも、民事法律扶助法第二条に基づく家事事件として民事法律扶助の対象になると考えております。現に、実際、援助開始決定がなされているというふうに承知しております。
 具体的な件数でございますけれども、これ、ちょっと統計的に家事事件の中にすべて含まれておりますために把握しておりませんけれども、この制度の重要性にかんがみまして、これから増えていくという可能性があるというふうに認識しております。
○浜四津敏子君 次に、土地家屋調査士法の改正についてお伺いいたします。
 法案の二十九条、業務の範囲が定められておりますが、ここには、「調査士法人は、調査士の業務を行うほか、定款で定めるところにより、法令等に基づきすべての調査士が行うことができるものとして法務省令で定める業務の全部又は一部を行うことができる。」と定めてありますが、この「法務省令で定める業務」というものはどういうものを予定しておられるのか。
 例えば、土地の境界に関する業務として、鑑定あるいは境界標などの資料の管理、境界紛争等に関する調停、あっせん、仲裁等が考えられますが、これらが具体的にこの範囲に入るのかどうか。また、二点としまして、地図の作成及び管理。三点目に、地籍明確化に関する調査、測量、地図作成等。四点目、不動産に関する調査、測量業務。五点目、地図の情報化に関する業務、またこれらの相談業務、また付随業務、こうしたことが入るのかどうかについて、これは政務官にお答えいただければと思います。
○大臣政務官(下村博文君) 私の方からお答えをさせていただきたいと思います。
 改正後の土地家屋調査士法第三条に規定する業務は、第六十八条により調査士等でない者が業として行うことが禁止されている業務ということでございまして、調査士等の独占業務と言うことができるというふうに考えられます。これらの業務に関する相談、この相談にはこの業務が含まれるというふうになると思います。
 一方、鑑定ということでございますが、この鑑定については必ずしも調査士だけが行うことができるというものではございませんので独占業務とは言えませんけれども、調査士が当然行うことができる業務であるというふうに解されます。
 また、土地家屋調査士法第二十九条に規定する法務省令で定める業務といたしまして、一つには境界標及び境界に関する資料についての業務管理、二つ目として不動産登記法第十七条地図、これは測量図でございますが、この作成等に関する業務、また調査士業務に関連する出版物の刊行などが考えられると思います。
○浜四津敏子君 この業務を法務省令で定めるに当たりましては、土地家屋調査士会などの関係者の方々の御意見を十分に聞いて、それを取り入れるべきものは取り入れる、こういう用意がおありかどうかを、これも政務官にお伺いいたします。
○大臣政務官(下村博文君) 先生のおっしゃるとおりでございまして、調査士法人が行う業務を法務省令で定めるに当たりましては、現に調査士が行っている多種多様な業務の内容を踏まえるとともに、調査士法人に期待されるニーズにこたえることができるということが必要であると考えておりまして、これらの事情を熟知されている土地家屋調査士会の意見を十分にお聞きする必要があると考えております。
○浜四津敏子君 土地家屋調査士法改正案六十八条についてお伺いいたします。
 これは非調査士等の、非調査士活動の禁止に関する規定でございますが、ここに、「調査士会に入会している調査士又は調査士法人でない者は、第六十四条第一項に規定する事務を行うことを業とすることができない。」とあります。六十四条を見ますと、これは協会の業務を定めた条文でございまして、いわゆる公嘱協会は、「前条第一項の目的を達成するため、官公署等の依頼を受けて、第三条第一号並びに同条第二号及び第三号(同条第一号に掲げる調査又は測量を必要とする申請手続に関するものに限る。)に掲げる事務を行うことをその業務とする。」と、こうあります。
 これ、六十八条と六十四条を両方読んでみますと、大変ややこしいといいますか、非常に誤解されやすい規定のされ方になっているかと思います。この六十八条で六十四条第一項を引いてきているわけですけれども、これは端的に、第三条第一号並びに同条第二号及び第三号そしてまた括弧書きという規定にすべきではなかったのかというふうに考えますが、ともかく、この六十八条に言う六十四条一項に規定する事務とは何なのか。これ、官公署等の依頼を受けたものばかりでなく、民間及び個人の依頼を受けてなす業務というものも六十八条に入るのかどうかをお伺いいたします。
○政府参考人(房村精一君) 六十八条の規定でございますが、調査士の業務は第三条に書いてございまして、一号として表示に関する登記について必要な調査、測量、それから二号がその表示に関する登記の申請手続、三号がそれに関する審査請求の手続と、こうなっております。このうち、二号、三号につきましては、実は、調査又は測量を必要とする申請手続に関するものにつきましては正に調査士の独占業務でありますが、そのような調査、測量を必要としない不動産の表示に関する登記につきましては司法書士も申請権限が与えられております。
 そういうことから、非調査士との関係で独占業務として規定するためには、今申し上げましたような、二号、三号につきましては第一号に掲げる調査又は測量を必要とする申請手続に関するものに限るという、そういう限定を付す必要がございます。そういう条文を書きますと、正にこの六十四条に記載されております「第三条第一号並びに同条第二号及び第三号(同条第一号に掲げる調査又は測量を必要とする申請手続に関するものに限る。)に掲げる事務」という書き方をこの六十八条でもう一度繰り返すことになるわけでございます。たまたま同じ文言がその直前の六十四条にそのままあるものですから、同じものを繰り返すよりはそれを書いた方がより簡明ではないかということでこういう書き方をしたわけでございます。したがいまして、この六十四条の官公署の依頼を受けてという部分は、もちろん六十八条で言っている六十四条第一項に規定する事務には入りません。
 したがいまして、法律の解釈としては紛れはないと思いますが、御指摘のように、やや分かりにくかったかということは反省をしておりますが、中身としてはそういうことでございまして、誤解のおそれはないと思っております。
○浜四津敏子君 この六十四条に出てまいります「官公署等の依頼を受けて、」と、こうありますが、これは公嘱協会の受託対象が官公署等の依頼を受けて行う事務と、こういうことになっているわけですが、この「官公署等」の「等」というのは何が入るのか。例えば、独立行政法人は入ることになるのか、第三セクターは入ることになるのか、非常にあいまいなんですが、これは政令で限定列挙をするということになっておりますので、これにつきましては随時、実情に即して臨機応変に見直しをしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 正に御指摘のように、この「等」というところにつきましては政令で定めております。
 今後、独立行政法人として定められるものがこの公嘱の対象であります公共事業等に伴う大量の表示登記等の嘱託を行うということであれば、当然それについてはこの対象として含めることを検討すべきであると考えております。
○浜四津敏子君 公嘱協会の業務についてでございますが、従来、公嘱協会は不動産登記法第十七条地図、いわゆる十七条地図の作成に従事してこられたわけですが、この改正後も公嘱協会が十七条地図の作成に携わることに何ら問題はない、従来どおり行うことができると、こう理解してよろしいんでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 公共嘱託協会の持っております専門的知識を活用していただくということから、従来から不動産登記法十七条地図の作成に関しては協会に協力を仰いでいるわけでございますが、今回の法改正によりましてその点については何らの変更もございませんので、従前どおりでございます。
○浜四津敏子君 この不動産登記法第十七条では、不動産登記には地図を備えるべしと、こういうことになっているわけでございますが、現状では、日本の全面積の約五〇%は旧公図でございます。この十七条地図の早期整備が急がれるわけでございますが、それは一つには、これが整備されていないことによる支障といたしまして、登記上の土地が現地で特定されないという点が挙げられます。また、二つ目には、それが特定されませんと売買等の所有権の移転ができない、また土地の処分ができないために不良債権の処理も進まない。三点目としましては、建物を新築いたしましても地図上の特定ができないために建物の新築の登記ができないという点が挙げられます。また、四点目としましては、買収地の特定ができないために国の公共事業に支障を来す。こういった様々な深刻な問題を抱えております。
 この地図の混乱解消のための十七条地図整備の予算は、現在わずか、これは法務省関係だと思いますが、わずか九千万円でございまして、この事態を早急に打開するには非常に不足しております。この早急な措置が急務であると思いますが、この点につきまして、当局の対応状況をお伺いいたします。
○政府参考人(房村精一君) 不動産登記法十七条は、近代的な測量技術によりまして正確な地図を作って、それを法務局に備え付けて土地の所在等を明らかにするということを考えております。
 御指摘のように、なかなか正確な地図を作るというのは大変なものですから、どうしても整備状況が遅れております。そのため、現在はやむを得ず、正確な十七条地図がないところについては昔から整備されております公図を使いまして、それなりに土地の特定等の機能を果たしているところでございます。
 ただ、近代的な正確な地図をできるだけ早く整備するというのは、正に国民の権利関係を明確にするためにも必要なことだと思っております。これにつきましては、現在、国の事業として行われております国土調査、これの成果を法務局が受け入れまして十七条地図とするという方法と、それから法務局が独自にやはり調査を行って地図を作る、その双方を活用しながら整備を進めているところでございます。
 特に、法務局関係の地図整備予算、御指摘のように非常に少額で、私どもとしてもこの充実のために今後とも努力をしてまいりたいと考えております。
○浜四津敏子君 次に、司法書士法人及び土地家屋調査法人双方に共通した問題点について何点かお伺いいたします。
 司法書士法人法改正案第四十二条、土地家屋調査士法改正案三十七条には、それぞれ競業避止義務が規定されております。例えば、弁護士法人の社員につきましては競業避止義務というのは規定されておりませんので、弁護士法人の社員たる弁護士は個人事件を受任することが認められております。これに対しまして、司法書士法人又は土地家屋調査法人の社員につきましては個人受任ができないとされていると解釈しておりますが、その理由についてお伺いいたします。
○政府参考人(房村精一君) 司法書士あるいは土地家屋調査士の方が法人を設立してその社員となった場合に、法人の仕事とは別に自分個人で司法書士業あるいは土地家屋調査士業務が行えるということになりますと、法人とその個人の方が恒常的に競業関係に立つ、利益相反の関係に立つわけでございます。そうなりますと、精力の分散も招きますし、また利益相反ということで依頼者に思わぬ損害を与えかねないということが心配されるわけです。そういうことから、司法書士、土地家屋調査士の両法人についてその制度の健全な発展を図るということから、競業については絶対的に禁止をするということにいたしました。
 これに関しまして、御指摘のように、弁護士法人においては、他の社員が承諾した場合には例外的に弁護士業を個人として行えるということを認めておりますが、これは、弁護士の場合には、事件の中には非常に高度の専門性があって、この弁護士の方でないとできない、あるいは依頼者とその弁護士との非常に個人的なつながりがあって、法人としてではなくこの人にやっていただきたいんだというようなこともございますし、また弁護士の方の考え方によって、事務所としてはできないけれども自分としてはどうしてもやりたいんだと、こういったこともございます。
 この場合に、そういう弁護士の方の特別な状況を考えますと、他の社員の方全員が了解すれば、これはあえてそういう場合にも絶対的に禁止をしなくてもいいのではないかということから、弁護士法人についてはそのような競業禁止の例外が認められたという具合に聞いておりますので、やや司法書士法人、土地家屋調査士法人とは実情が異なるためではないかと思っております。
 ちなみに、税理士法人それから監査法人におきましても、社員になった方については絶対的に競業が禁止されております。
○浜四津敏子君 済みません、先ほどの質問の中でちょっと誤りがありましたので、一点だけ訂正させていただきます。
 弁護士法人の社員につきましても原則競業避止義務が規定されておりまして、例外として個人事件を受けることができる。私どもも、例えば刑事の国選弁護の事件等もありますので、そういう必要性から例外が認められているということでございますので、先ほどの質問の中での一点、訂正をさせていただきます。
 次に、司法書士法人法改正案四十五条、土地家屋調査士法改正四十条には合併についての規定がございます。いずれも、司法書士法人は司法書士法人同士の合併ができる、土地家屋調査士法人は同種の土地家屋調査士法人とは合併ができる、こういうことになっておりまして、隣接他業種法人との合併は認められないということになっております。
 ただ、恐らく現在でもそうしたニーズはあり、将来的にはそのニーズはより大きくなっていくのではないか。いわゆる総合法人制度、ワンストップサービスというのが必要となってくるのではないかと考えておりますが、法務省の見解をお伺いいたします。
○政府参考人(房村精一君) 今回の司法書士法人あるいは土地家屋調査士法人は、いずれもその社員となる者は、司法書士法人については司法書士に、土地家屋調査士法人については土地家屋調査士に限るものとしております。
 これは、司法書士であるとか土地家屋調査士のように法律で認められた職種でその業務についてはその職種が独占をしている、こういうものにつきまして、仮に司法書士法人について司法書士以外の人が社員になるということを認めますと、場合によりますと司法書士でない人が司法書士に対して指揮監督をする、あるいは命令をするということになりまして、独占資格を認めている資格制度の趣旨に反する事態が起こり得るということからそのような限定を付しております。
 現在、日本で設立が認められております弁護士法人、税理士法人、特許業務法人、監査法人、いずれもやはり専門資格を持った人だけが社員となれるという仕組みを取っているのは同じような問題があるからでございます。
 ただ、御指摘のように、利用者から見れば、各種の専門職種の人が集まって総合的なサービスを提供してもらう方が便利であるということはそのとおりであろうかと思いますが、現状では、法人ではなくて同一の事務所を借りてそういう総合的なサービスを提供するというところまでは認められておりますが、同一法人にするということになりますと、今言った監督権の問題とかいろいろな問題が生ずるものですから、そこまで行っておりません。
 今後、ニーズを見、また、かつ、そういう資格法制の在り方ということを踏まえた専門業種の動向も見つつ検討をしていきたいと思っております。
○浜四津敏子君 次に、司法書士法人法改正案四十七条、四十八条、土地家屋調査士法改正案の四十二条、四十三条、いずれも懲戒の規定についてお伺いいたします。
 これはいずれも、例えば司法書士法改正案四十七条は司法書士個人に対する懲戒、四十八条は法人に対する懲戒をそれぞれ定めております。
 この四十八条の一項を見ますと、司法書士法人が命令違反をした場合、その主たる事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長が処分をすることができると、こうなっております。二項では、従たる事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長も処分をすることができる定めになっております。これは、従たる事務所、すなわち支店の業務に不正があった場合に、主たる事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長及び従たる事務所、支店の所在地のこうした監督権を持つ人の双方の二重の懲戒になるのではないかと考えられますが、実務上の取扱いはどうなるんでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 今回の法案では、司法書士法人、土地家屋調査士法人でも同じでございますが、が主たる事務所以外に従たる事務所を置くことを認めておりますので、その従たる事務所が主たる事務所と管轄を異にする地に置かれた場合に、そこの従たる事務所で違法行為が行われた場合、従たる事務所所在地の法務局長あるいは地方法務局長の方がその違法行為についての実情を容易に把握し得るということから、従たる事務所の活動に起因する懲戒権をそこの法務局長にも与えるということにいたしました。主たる事務所の所在地の監督権者である法務局長あるいは地方法務局長は、当然その主たる事務所をヘッドとする全体の事務所の活動についての懲戒権も持ちますので、御指摘のように、従たる事務所で生じた違法事由についての懲戒権というものが、二つ、それぞれの地方法務局長あるいは法務局長が持つということが法律上起こり得ます。
 ただ、実際には同じ法務局の組織でございますので、当然その懲戒事由についての情報を交換し合って適切な処理ができるようにするということで、そのための省令で連絡調整についての定めを置く予定でございます。
○浜四津敏子君 次に、司法制度改革の中で、裁判外紛争解決制度としてADRの設置がこれから進むと、こういうことになっておりますが、是非とも司法書士の方々、また土地家屋調査士の方々の専門家の活用をこのADR設置については図っていただきたいと思っておりますが、それについてはどのようにお考えでしょうか。
○副大臣(横内正明君) 司法制度改革審議会の意見書におきましては、隣接法律専門職種のADRにおける活用が提言をされているところでございます。そして、その審議会の答申を受けました本年三月十九日の閣議決定をされました司法制度改革推進計画にも盛り込まれていることでございます。すなわち、ADRを含む訴訟手続外の法律事務に関して、隣接法律専門職種等の有する専門性の活用を図ることとし、遅くとも平成十六年三月までに所要の措置を講ずるというふうに司法制度改革推進計画にも既に盛り込まれていることでございます。
 したがいまして、御指摘の司法書士及び土地家屋調査士につきましても、ADRにおいて積極的に活用をしていく方向で検討をしておりまして、現在、司法制度改革推進本部におきましてADR検討会が設けられて検討をされておりますけれども、その中での重要な検討事項だというふうに思っております。
○浜四津敏子君 それでは最後に、大臣にお伺いいたします。
 これまでの質問で出させていただいただけでも、例えば司法書士につきましては後見事務の業務がますます今後拡大していくだろうと思います。また、簡裁事件の訴訟代理権が認められると、こういうことになっております。また、土地家屋調査士の方々につきましては、公図の作成あるいは境界の確定あるいは十七条地図の作成など、それぞれ大変大事な任務を果たしておられ、また今後ますますその重要性は増していくものと考えておりますが、司法書士の方々、また土地家屋調査士の方々のこれからの活躍、どのような活躍を大臣としては期待しておられるのか、お伺いいたしまして、質問を終わらせていただきます。
○国務大臣(森山眞弓君) 先生御指摘のとおり、司法書士、土地家屋調査士、それぞれなさっておられます専門の仕事が、ますますこれからの世の中で求められることが多くなる、活躍の場は大きく広がっていくだろうというふうに思います。しかも、その司法書士、土地家屋調査士、いずれも全国にあまねくおられまして、国民が頼りにさせていただいている大事な専門家方でございます。
 ですから、それぞれの業務上の専門的な知識、豊富な経験などを生かしていただきまして、裁判外の紛争解決あるいはその基盤となる様々な資料の整備等につきまして大いに活躍をしていただきまして、これからの司法制度改革の重要な柱である、身近で親しみやすい便利な司法制度というもののために貢献をしていただきたいと思っております。
○浜四津敏子君 ありがとうございました。
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 今日は、司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案の審議ということでありますが、やはり朝からの質問を聞いておりましても、これはやっぱり二つの法律だなという感じがするんです。登記に関係するとか法人の問題があるということで一つの法律で提案をされたわけでありますが、大部分はかなり違う問題でありまして、これはやはり二つの、それぞれの法律としてしっかり審議をすることが必要ではなかったのかなという御意見だけ申し上げておきます。
 今回、司法書士の皆さんが簡裁での訴訟代理権も認められる、弁護士さんなどが余りいない地域でも非常に裁判が身近で便利になるという点では国民にとってプラスでありますから、賛成であります。
 簡裁での訴訟代理権を得て、裁判、司法の一翼を担うということになるわけでありますから、やはり重大な職責の変更だと思うんですね。
 裁判というのは、憲法の、憲法事項でありまして、憲法七十七条では最高裁の規則制定権を定めまして、弁護士に関する事項については規則を定める権限、それから、検察官も規則に従わなくてはならないと、こう記述をしているわけであります。弁護士法の第一条では、「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。」という、こういう使命規定も置いているわけであります。
 司法書士法の場合は二条に「職責」という規定がございますが、こういう使命規定はありませんし、今回の改正でも、第一条の目的条項に「適正」という文字が挿入をされ、「権利の保全」という言葉が「権利の保護」に替わったということであります。しかし、やはり新たに簡裁代理権を得るという新たな職責、大きな変更という中でいいますと、私は使命規定なりをこの法の中に置くべきではなかったのかなと思っておるんです。
 大臣は、新たにこういう簡裁代理権を得るという下での司法書士の皆さんの今日的使命についてどのようにお考えか。また、それを法に入れるべきではなかったのかと。この点について御所見をお願いいたします。
○国務大臣(森山眞弓君) 先ほど来の御質問にお答えしておりますとおり、司法書士の皆さんは全国にあまねく存在していていただきまして、その専門的な知識を生かして国民のために大変頼りになるサービスを今までもしていただいてまいりました。
 今、問題になっております司法制度改革の大きな眼目が、国民にとって身近で分かりやすくて頼りがいのある便利な司法制度ということでございますので、そのような目的に向かって大いに働いていただく立場にいらっしゃるというふうに思いまして、その御活躍を期待するわけでございますが、この司法書士、第二条の、「常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正かつ誠実にその業務を行わなければならない。」との職責規定がございますし、それとともに、第一条の目的規定から、登記、供託とともに、簡易裁判所の代理権行使を含めまして、訴訟に関する手続の適正かつ円滑な実施のために国民の権利の保護に寄与するという使命を持っていただくということでございます。
 ですから、今回の改正におきましても、あえてこれらの規定に加えたり、更に使命規定を設けるという必要はないのではないかというふうに思ったわけでございます。
○井上哲士君 新たなこの簡裁代理権を得るわけでありますが、その点での非常に研修が大事だと思っております。
 私、京都で司法書士の方の事務所にお伺いしていろんなお話も伺ったんですが、やはり弁護士事務所とかなり造り自身が違います。それぞれの方が向かい合って座って、真ん中に司法書士さんが座ってお話を伺う。正に、双方代理をするような相談の場所になっています。弁護士事務所に行きますと、大体、個室で一対一でやるということを比べましても、随分違うなということを改めて思いました。やはり、関係者双方から信頼を受けて、そしてそういう信頼を基礎にした業務をされてきたんだなということを非常に痛感をしたわけです。
 弁護士の場合、民事訴訟の代理業務の基本はこの双方代理を絶対してはならないということでありますから、これはどちらが上、下ということではなくて、要するに性格の違うことをやってこられたと思うんですね。ですから、双方代理行為にならないように事前にチェックをできるような能力をしっかり身に付けていくことなど、大変研修でも大事だと思っております。
 これまで司法書士会で随分、独自研修を熱心にやられてきたということも私、承知もしておりますし、今回の改正で試験に憲法が入るということも会からの要望であったということはあるわけですが、逆に言いますと、これまで現在の司法書士の皆さんはそういう憲法の試験を受けずに資格を取っていらっしゃるということもあるわけですが、そうした場合に、今後の研修でこうした基本的な人権の問題、職務倫理の問題、こういったものがどういうふうな位置付けで研修が行われることになるんでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、正に憲法、国の基本であると同時に、法律家として行動する場合にはやはり一番最後のよりどころは憲法でございますので、そういう憲法に定める基本的人権等についてもこの研修で触れていく必要があるだろうと思っております。
 それから、特にいわゆる法曹、訴訟代理人となった場合の倫理、これについては、御指摘のように、従来の登記申請が依頼者双方からの信頼を得て双方のために登記申請を行うというものであったのが、訴訟代理になりますと、一方の側に立ってその利益、適正な利益のために努力をするということでございますので、相当ある意味では大きな意識の転換も必要になろうかと思います。
 そういう点で、この訴訟代理人となった場合の心構えあるいは法曹倫理というようなものについても当然この研修の中で身に付けていただく必要があるという具合に考えております。
○井上哲士君 研修は百時間というふうに言われているわけですが、そういう中で、いわゆるそういう基本的な言わば総論的な問題、それからもう少し少人数でディスカッションなどもしながらやっていくこと、それから模擬裁判等などの実地のものもあるとお聞きをしているんですが、大体の柱と割合というのは現在はどういうような検討になっているんでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、正にそういう法曹倫理であるとか、具体的な証人尋問技術であるとか、事実認定の手法であるとかというようなものを取り上げるということが考えられております。また、その方法としても、セミナーもありましょうし、あるいは実際の法廷傍聴、場合によれば、そういう実務の方々の話を個別に聞くというようなことも含めていろいろな検討がされているところでございます。
 まだ具体的な時間割等まで煮詰まっているわけではございませんが、日司連においても、裁判官、弁護士、法律学者から構成されます司法書士特別研修制度検討会を設けて検討しておりますので、法務省としてもこれに協力して、できるだけ訴訟代理人としてふさわしい能力を身に付けるような研修の内容を固めていきたいと思っております。
○井上哲士君 今回の改正でやはり一番期待されていますのは、弁護士さんなどが余りいない地方で身近な相談相手として司法書士の皆さんが力を発揮されるということかと思うんですが、逆に、こうした地域の方こそそういう非常に研修が受けにくい条件があるかと思います。しかも、お仕事をされているわけでありますから、仕事と生活を維持をしながら研修を受けていく、大変困難があろうかと思うんですが、その辺はどのような工夫が今考えられているんでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、正に各地で実際に仕事をしている司法書士の方々に研修を受けていただかなければならないものですから、そういう地方の司法書士に受講の機会が均等に与えられるということを念頭に置いて、現在、中央発信型やあるいはそれぞれの地域ごとに集合する地域集合型というようなものも含めまして、様々な検討がされていると承知しております。
○井上哲士君 例えば、いわゆる土、日を活用するとか、そういうこともかなり考えられたんでしょうかね。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のとおり、平日にということになるとなかなか負担が重くなりますので休みの日を活用するとか、あるいは地方で集まっていただいて、例えばインターネットを使って講義ができないかとか、様々な今検討がされているようでございます。
 私どもも、できるだけ協力して充実した研修にしていきたいと思っています。
○井上哲士君 今、インターネットというお話もありました。新聞報道でもインターネットを活用した研修ということが出されておるようなんですが、どの程度こういうインターネットの活用をするのか。しっかり受講をされているというような確認も必要かと思うんですが、その辺はどのような検討がされているんでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 正に、離れた場所でリアルタイムでやり取りをするという意味ではインターネット、非常に便利な道具でございますし、質問等もインターネットであれば同時にできるということがありますので、インターネットの活用の方法というのを現に検討しているわけでございますが、ただ同時に、おっしゃるように、それを受けている人が本当に本人かということも、そういう方は余りいらっしゃらないとは思いますが、その確認方法も含めて、インターネットを利用した場合の問題点といったことで現在検討しているところでございまして、まだ私も具体的にこうだと御説明できるほど煮詰まっているわけではございませんが、ただ、大学等においても通信講座で今インターネットを使ったりした例も多くありますので、そういったものも参考にして今後急いで中身を詰めていくことになるだろうと思っております。
○井上哲士君 いわゆる衛星通信などで聞くというだけではなくて、双方向でやるということを想定をしていると考えたらいいんでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) できればそういう方法でインターネットを活用したいと思っております。
○井上哲士君 そういう研修の上で考査があるわけですが、先ほどもありましたように、現在、仕事をされている司法書士の皆さんは憲法の試験を受けていないということは非常に考慮されるべきだと思うんですが、今考えられているその試験の柱がどういうふうになるのか。それから、論文試験をするのかという質問に筆記試験だという答弁が何度かされておるわけですが、これはいわゆる論文試験というふうに理解をしたらよろしいんですかね。
○政府参考人(房村精一君) 試験の内容としては、その研修で教えられた内容が十分身に付いているかどうかということを見るような試験ということで考えておりますので、研修科目等が固まってくればその試験についても明確にできると思っております。
 試験の方法としては、やはり何といっても書いていただくという意味で筆記と申し上げておりますが、論文かどうかという点につきますと、例えば私どもの関係で言いますと、裁判の一番の基本というのは要件事実ではないかと思いますが、その与えられた事実を要件事実に分解したときにどうなるかというのは必ずしも論文式になじまない面もありますので、論文式とあらかじめ決めておくのではなくて、やはりその試そうとする能力に最もふさわしい内容のもの、しかし多分それは筆記試験でいろいろな形で行うことになるだろうと、こういう趣旨で筆記試験と申し上げております。
○井上哲士君 いわゆる小論文的なものというふうに理解をしたらいいのかなと思いますが、いずれにしても能力や職務倫理というのをしっかり担保をしていくという点でのしっかりとした検討をお願いをしたいと思います。
 次に、懲戒処分の問題でありますが、今回、懲戒申出制度や処分の官報公告などが盛り込まれるわけでありますが、これまでは登記中心ということで法務局や地方法務局の監督ということになっておりましたが、この点については変わらないわけですね。ただ、やはり法廷の場に入っていかれるということになるわけで、最初に申しましたように、裁判というのは憲法事項でありまして、それぞれの弁護士さんにしても裁判官にしても、その処分というのは非常に独立性を持ってやっていくわけですね。同じ法廷に立って向かい合う者が違う機関に処分をされるということになるわけですし、行政機関である法務局などが処分をするというのがちょっと私はいかがかなというふうに思うんですが、この点は改善が必要ではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、現在、司法書士に対する懲戒権は法務局あるいは地方法務局の局長が行っております。これは、業務の中心が登記であるというようなことと、それから司法書士の実情、これを最もよく知り得る立場にあるのが司法書士会と緊密な連携のある法務局であるというようなことを含めまして、その監督権を適切に行使し得るということを考えて法務局長にその懲戒権を与えているわけでございます。
 今回、簡易裁判所の代理権が与えられるわけでありますが、基本的には司法書士の業務形態が大幅に変わるということではありませんし、また司法書士に関するそういった様々な情報を知り得るという面でいきますと、やはり法務局、そこの長が最もふさわしいのではないかと思っております。
 行政機関が訴訟代理人となる人間について懲戒権を持つことについての御疑問も指摘されておりますが、基本的に簡易裁判所において行政訴訟は扱いませんし、また国を当事者とする訴訟というものも余り考えにくいところであります。そういう点で、法務局長が懲戒権を行使しているから司法書士が法廷で何らかの心理的圧迫を覚えるというようなことはないだろうと思っておりますので、現在の、今までの実績からしても、法務局、地方法務局長が公正に懲戒権を行使するということは十分可能だと思っております。
○井上哲士君 今後、訴訟代理権の拡大ということも将来の問題としては議論になろうかと思うんですが、やはりそのときにはこの問題が併せて議論をされるべきだということは申し添えておきたいと思います。
 司法書士の皆さんが弁護士さんと比べて地方に非常に分散をしているということが今回のこの法改正でも大変着目をされたわけですが、統計によりますと、最近はむしろ司法書士の皆さんも都市部では増加をして地方では減少をしておるということを聞いております。
 いただいた資料では、例えば九四年から九八年で、神奈川では六十五人増えたが、福島では三十三人減ったと。しかも、地方の方の方が高齢化をしておって、同じ神奈川でいいますと四十代、五十代が中心だが、福島などは六十代、七十代が圧倒的で、かつ、いわゆる大臣の認定組の方が多いというようなことも伺いました。
 それに加えまして、いわゆる登記所の統廃合というものがあります。今、司法書士の方の皆さんの多くが法務局のそばに事務所を開いていらっしゃって、これが統廃合するのにつれて一緒に行くということで減っていきますが、いなくなる場所が出てくるというようなことがあるわけですね。
 今後、先ほどの年齢構成のこと等を見ますと、むしろ都市集中は司法書士の場合も加速度的に進むんではないかという指摘もあるわけですね。そうしますと、今回の法改正で着目をした本当に身近な司法の窓口としての機能というのが損なわれていくかと思うんです。これは会員の方でも独自のいろんな努力をされているとお聞きをしたんですが、法務省としてこういうことに着目をしてどう支援をしていくのか、この点どうでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 新規登録等を見ますと、確かに大都市に集中し、大都市の司法書士の方の割合が増えているということは事実だろうと思っております。
 ただ、私どもとしますと、やはり司法書士の方々が例えば登記所の近くに事務所を構えるというのは、申請事件について、補正その他、近くにいるとやはり圧倒的に便利だということがあってだろうと思っておりますが、そういう意味で、現在、作業を進めております登記申請のオンライン化、これが完成しますと、必ずしも登記所のそばでなくともオンラインで申請もできますし、また申請の補正等もオンラインで直ちにできるということになりますので、依頼者の近くに事務所を構えて依頼者と密接な連携を取りつつ、多少離れていても登記所とはオンラインでやり取りができるということになるのではないか、そうなれば必ずしも地方にいるから不利だということにはならないのではないかと思っております。
 また、そういう今、様々なところでIT技術を使ったオンライン化の努力が進んでおりますので、今後、司法書士の方々が利用者である国民の身近にいながら、なおかつ仕事に関しては、そういうIT技術を活用して、多少離れたところであっても仕事は的確に処理できると、こういう体制を私どもとしてもできるだけ努力をして整備したいと思いますし、多分、社会全体としてそういう方向に動いているのではないかと。
 そういう点で、現状としては都市集中ということもございますが、同時に、それをしなくても大丈夫のような仕組みも徐々に整いつつあるのではないかという具合には考えております。
○井上哲士君 次に、いわゆる弁護士会の照会制度との関係でお聞きをするんですが、簡易裁判所での訴訟代理権を認める以上、司法書士の皆さんもそれにふさわしい機能を持つことが要請をされると思います。弁護士の皆さんが持つ機能との違いの一つにこの弁護士会の照会制度があるわけですが、司法書士にはこれがないと。今後、法廷で、片や代理人は弁護士、片や司法書士というケースも出てくるわけですね。そうしますと、その条件に大変差ができてくるということになります。これは、利用者の側から見ますと大変不都合なことになろうかと思うんです。
 衆議院でも議論がされておるわけですが、当然そういう能力があるから代理権を認めたわけですから、これは私はやっぱり照会権についても認めるべきだと思うんです。その認めることによる何か不都合というものを法務省としてはお考えなんでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 照会権のお話でございますが、まず第一に、実際に訴訟が裁判所に係属した後、言わば両当事者が法廷に臨むという段階になりますと、裁判所による調査嘱託という制度がございますので、これは代理人が弁護士の方であっても司法書士の方であっても同じように、訴え提起後はその裁判所の調査嘱託権を活用して必要な情報を入手することは可能となります。したがって、差が付くのは、裁判所へ訴え提起する前に弁護士の方はそういう弁護士会を通じた照会制度があるのに対して、司法書士にはそれがないということだろうと思います。
 私どもとして考えましたのは、まず第一に、簡易裁判所における民事訴訟事件、少額、軽易な訴訟が多いということで、実際に訴え提起前にその照会制度を利用しなければならないような事件というのがそうあるだろうかということがまず第一点でございます。
 それからもう一つは、この弁護士法の照会制度、弁護士法二十三条の二に規定しておりますが、これは照会を受けた者に一定の回答義務を負わせるということになっております。したがって、弁護士法も、この照会は必要な場合に限って認めるべきであるということから、必要性について個々の弁護士の判断にゆだねるのではなくて、弁護士会がその弁護士の申出を受けてその必要性を判断した上で、適当でないというときにはこれを拒絶する、適当と認めた場合に弁護士会から照会をするという仕組みにしております。
 この照会が本当に必要かどうかということについては、やはり当然、訴訟実務が分かっておりませんとこの照会が必要かどうかという判断は的確に行えないわけでございます。
 それで、個々の司法書士の方については、もちろん研修を受けていただいて認定をしてやっていただくわけでありますから、訴訟代理人としてのそれなりの能力は身に付けていただいているわけでございますが、まだ現状では、司法書士会全体として見ますと圧倒的に訴訟実務に精通している方は少ないわけでございますので、弁護士会と同じような仕組みにしたときに、司法書士会として現段階でその照会の必要性について的確に判断できるかという点に疑問があるのではないか。
 そのような必要性と判断の的確性と、そういう点を考えまして、今回、私どもとしては、この制度については見送って、なお司法書士の方が訴訟代理人として活動していく中で、本当にやはりこういう照会制度がないと不都合であるというような事情があれば、それは私ども、それを踏まえて検討したいという具合に考えております。
○井上哲士君 司法書士会にそれだけの力がまだないんじゃないかというお話ですが、しかしその司法書士の皆さんに今回の代理権を与えたことによる研修を行うのは、それぞれの司法書士会なわけですよね。
 ですから、これ考えますと、やっぱりある程度のそういうものがあるということで今回、付与するわけですから、これは私、可能だと思うんですが、その点いかがでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 私どもとしても、できるだけ早くそういう訴訟実務に精通した司法書士の方々が増えていただきたいと思っております。また、そういう方々が研修での講師も務めるようになっていただきたいと思っておりますが、現段階で研修を例えばするときに、やはり訴訟実務について直接教えることのできる方というのは限られているのではないか。だからこそ、この研修については、訴訟実務に精通した人の多い弁護士会であるとか裁判所であるとか、あるいは法務省というようなところも協力を願って、充実した研修にしたいと考えているわけでございます。
○井上哲士君 次に、民事扶助の問題についてお聞きをいたします。
 どの地域に住んでいても気軽に司法を利用できるという今回の改正の一つの精神とともに、お金に左右されることなく裁判を受けれるという点でいいますと、国民の裁判を受ける権利を守るという点で共通の問題があろうかと思います。
 この間、民事扶助制度、非常に利用が急増をしていて、財政難から一部、利用制限をせざるを得ないというふうなことが報道もされておりました。この間、予算、補助金自身は増えまして、今年度で三十億ということでありますが、欧米の一千億以上と比べますとはるかにけたが違うという状況が今もあります。
 民事法律扶助法ができまして、いわゆる書類作成援助という新しいサービスも実施をされましたので、随分、司法書士会の皆さんも、独自にこの普及のための取組もされておりますし、寄附の予算化もするなどの努力もされているとお聞きをしています。
 ただ、今回、こういう簡裁での代理権を得るということになり、より司法が身近になっていくということでいいますと、一層この申請が伸びるんではないかと私は思うんですが、その辺の見通しと、そしてこういう財政難で、せっかく申請をしている人を制限をせざるを得ないということがあってはならないと思うんですが、この点での補助金の拡大など、法務省としてのお考えをお願いをします。
○政府参考人(吉戒修一君) 改正後には、司法書士の簡易裁判所の代理ということが可能になります。これにつきましても、当然、民事の法律扶助の対象になります。
 その利用件数でございますが、これを今の段階で具体的に想定するのは非常に難しゅうございますけれども、ただ、今、委員御指摘のとおり、法律扶助法が平成十二年の十月から施行されておりまして、書類作成援助というものが認められておりますけれども、これらのほとんどが司法書士さんが利用されております。これは相当伸びております。したがいまして、簡裁の訴訟代理に関しましても、相当数の件数が出てくるのではないかなというふうに考えております。
 それから、一般的に申し上げまして、民事法律扶助事業全体の予算規模といいましょうか、今後の推移でございますけれども、これは御案内のとおり、最近の経済不況の中で非常に自己破産事件が増えております。その中で、自己破産状態に陥った方々の最後のセーフティーネットとして非常に法律扶助事業が重要な役割を果たしております。
 したがいまして、非常に厳しい行財政事情の中ではございますけれども、今後ともこの事業の適正な在り方を見据えて、その充実に努めてまいりたいというふうに考えております。
○井上哲士君 土地家屋調査士の法のこともあったんですが、時間ですので火曜日に回しまして、質問終わります。
○福島瑞穂君 社民党の福島瑞穂です。
 まず、法務省は、司法書士の将来像に関してどのようにお考えなのでしょうか、教えてください。
○政府参考人(房村精一君) 司法書士は、御承知のように、登記業務あるいは裁判所への提出書類の作成というような業務を通じまして、国民の最も身近な法律家として活躍をしてきていただいております。
 今回、簡易裁判所の代理権というものを与えていただければ、更にこれを活用して、司法書士として最も身近な法律家ということで国民の法的なニーズに広い範囲でこたえることができるようになっていくという具合に考えております。
○福島瑞穂君 今、司法制度改革が議論になっておりますが、従来の司法試験と併用して、あるいは特にロースクール構想が出てきております。そうしますと、従来の五百人、八百人、千人といった司法試験の合格者とは違う数の合格者が出るわけですが、その司法制度改革あるいはロースクール構想と司法書士をどういうふうに法務省が、法務省が位置付けるかという質問は変かもしれませんが、どういうふうに司法制度改革、ロースクール構想、弁護士、裁判官、検察官の数の増加、特に弁護士の数の増加と司法書士の業務をきちっと位置付けるということについてはどのように考えていらっしゃるのでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、司法制度改革では、弁護士の人口の増加を図っておりますし、その教育を充実するために法科大学院ということも設立に向けて準備が進められております。そういうことで、今後相当の弁護士人口の増加が起こると思っておりますが、しかし同時に、弁護士人口が増加しても直ちに地方にまで弁護士の方々が進出していただけるかということになると、これはなかなか難しい問題もあろうかと思います。その点、司法書士の方々は、やはり弁護士の方に比べれば圧倒的に全国的にあまねく存在しておりますので、やはりそういうことで、司法書士の方々の果たすべき役割というのは弁護士人口が相当増えてもなお、特に地方においては大きな意義があるだろうと思います。
 それから、業務内容にいたしましても、やはり司法書士の方々については、今回、簡易裁判所の代理権も与えられますが、やはり特別の分野として登記というそれなりに特別な知識と訓練が必要な分野を抱えておりますので、実際に登記を適切に処理するということになりますと、なかなか弁護士の人でもちょっと複雑な事案になると手を焼くというのが実情ではないかと思っております。
 そういうことに関してこれだけの蓄積のある司法書士の方々は果たすべき役割としてもありますので、そういう意味で、弁護士の方々がこれから増加しても、司法書士の方々は、従来から持っている自分たちのそういう専門的な能力あるいは国民に一番身近な存在であるという、そういう地位を活用して、弁護士の方々と補い合い、あるいは場所によっては競争し合って、国民のために充実した法的サービスを提供する役割を担えるという具合に考えております。
○福島瑞穂君 将来、司法書士像がどうなるのかということをお聞きしているのは、例えば、「司法書士職能の裁判事務関与について」、これは神奈川県司法書士会が出している提言です。こういう様々な司法書士会が出している資料を見ると、司法書士界全体をかさ上げをして地位の向上を図るという考え方と、資格内資格、資格を与えてその人間には一部に訴訟代理権を与えるという、大きく流れが二つあるというふうに考えています。
 神奈川の司法書士会のこの文案を見ますと、例えば、
 現行司法書士制度の改革も射程に入れて、改革された司法書士試験合格者には当初から簡裁代理権を付与(当然、試験科目に憲法を加えたり、論文式を導入するなどの試験科目・実施方法の改革のほか、司法書士法の大幅な手直しが必要となる)することになる。そうだとすれば、資格内資格制度は、既存の司法書士を救済するための単なる過渡的・経過措置的な制度と位置付けられることになる。
というふうに例えばあります。
 私も、やはり司法書士全体のかさ上げというか、地位の向上、格上げをする方が長期的に見れば制度としていいのではないかというふうに思っているのですが、いかがでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 国民のための法律家ということを考えますと、法的紛争の最終的解決は裁判所で行われるわけでありますので、やはり訴訟代理権まで持っていることが望ましいということは御指摘のとおりだと思っています。
 ただ、司法書士の方々については、そういう点で、従来、試験もあるいは研修制度も行われておりませんでしたので、それを一気に認めるということは、それは到底できませんので、今回の司法制度改革審議会の意見では、信頼できる能力的担保措置を講ずることによって、それを受けた司法書士の方に訴訟代理権を与えていくということを選択したのであろうと思っています。
 私どもとしては、これはあくまで個々の司法書士の方の選択の問題ではありますが、できるだけ多くの司法書士の方がその道を選んで、国民のために訴訟代理人ともなり得るという形で十分な法的サービスを提供できるようになっていければと思っております。そういうことで、この研修については、日司連に努力をしていただくのはもちろんですが、法務省としてもできるだけの協力をしていくつもりでいるわけでございます。
 そういうことで、ほとんどの司法書士の方がその代理権を、認定を受けて代理人になり得るというような状態になれば、これは、将来的には司法書士の試験そのものの在り方も当然検討の対象になるだろうと、こういう具合に思っています。
○福島瑞穂君 先ほど、井上委員の方から懲戒権の問題が質問がありました。私も同じ質問をしたいと思います。
 簡裁代理関係業務に関する懲戒を法務局長が行うことはやはり非常に変だと思います。登記に関しては確かに法務局が担当主管なわけですけれども、簡裁の訴訟代理権を持つわけですから、法務局長がそのことについて起きた様々な問題について懲戒権を持つことはやはりおかしいと。それは、弁護士会の懲戒権は自律的に、原則として自律的に行われているのですが、私は今後、司法書士あるいは土地家屋調査士ということを考えれば、自律的な懲戒制度、それがやはり地位の向上や自律性を高めるという点から良く、なぜ法務局長が簡裁代理関係業務に関する懲戒を行うのか。それは、法務局長は登記やそれについてはプロかもしれませんけれども、訴訟の在り方については全く関係ないわけですから、これが法務局長が行うことはおかしい、法務局の縛りからこれは外すべきだ、法務局から司法書士会をある程度少し解放すべきじゃないかと考えますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) まず、懲戒権でございますが、これは違法な行為をした場合に当然、行使が問題になるわけでありまして、訴訟追行が上手かどうか、その適否を判断するわけではありませんので、そういう違法な行為を司法書士が行っているかどうかという点に着目するわけでございます。
 それと、従来から司法書士の業務としては、裁判所あるいは検察庁へ提出する書類の作成ということも業務になっておりまして、それも含めて法務局長の懲戒権の下に置かれていたということもございます。もちろん、今回新たな権限として訴訟代理業務が入ったわけでございますが、全体としての司法書士の活動についての監督ということであれば、やはり従来から実績のある法務局長あるいは地方法務局長がこの懲戒権を行使することが適当であろうという具合に考えております。
○福島瑞穂君 冒頭、質問した司法書士の将来像に関してどう考えるかということとやはりつながっていくと思います。
 今回、簡裁代理関係業務を行うわけで、やはり法務局に縛りを掛けるというのは従来の司法書士の業務にとらわれ過ぎていると。法務局は司法書士が担当する仕事の一部しか担当しないわけですから、懲戒権を持つところはやはり非常に大きいわけで、弁護士の懲戒権に関しては原則として自律的にやっている、それが弁護士自身の地位の向上や自律的な議論や内部での解決ということについては力があるわけです。
 そうすると、私は、やはり司法書士会、土地家屋調査士会による自律的懲戒制度、これをきちっと確立をして、一部のところからはやはり解放すべきだというふうに考えますが、繰り返しになって済みません、いかがでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 司法書士、土地家屋調査士というような国家資格を与えた者に対する懲戒権の行使というのは、これは公権力の行使でございます。したがいまして、公権力の行使を国の機関が行うというのが原則でございます。
 これは、他の例えば税理士であるとか弁理士であるとか、そういう国の専門資格については共通の性格でございます。ただいま御指摘を受けております弁護士法が弁護士自治を認めて、いわゆる国の懲戒の下に服さないというのがある意味では唯一の例外ではないかと思っております。
 そういう点で、今回考えました司法書士及び土地家屋調査士につきましても、公権力の行使である懲戒をいかなる者に行使させるのが最も適切であるかという観点から検討を加えたものでございまして、そういう点でいえば、やはり従来から最も司法書士、土地家屋調査士の実情に明るい法務局の法務局長あるいは地方法務局長にその懲戒権の行使をゆだねるのは国の公権力の行使という観点からは最も適切であると、こういうことでございます。
○福島瑞穂君 ただ、登記のことだけではなく、今後は代理関係、要するに訴訟の担当をやって、その解決について評価をされるわけですから、法務局は簡易裁判所における訴訟の代行権については関係ないわけですよね。ですから、私は強く、法務局長が懲戒を行うのではなく、それが法務大臣がいいのかどこがいいのか、ちょっとまだ分かりませんが、個人的には、自律的な懲戒権の道を探るべきだし、少なくとも司法書士の権限を拡大していく過程において法務局長が懲戒権を持つというのはもう合わないというふうに考えております。是非、今後再考してくださるようにお願いいたします。
 では次に、特認制度についてお聞きをいたします。
 司法書士試験が国家試験となった昭和五十四年以降の司法書士資格取得者の事由別割合、国家試験、大臣認定について教えてください。
○政府参考人(房村精一君) 昭和五十九年以前の統計がないものですから、昭和六十年から平成十三年までで申し上げますと、この間に司法書士となった者のうち司法書士試験に合格した者が約六九%でございます。それから、法務大臣により認定された者が約三一%でございます。
 なお、ちなみに、平成十四年の四月四日現在の司法書士の全国の会員数が一万七千百九十九名で、そのうち特認を受けた会員数は三千九名という具合に日本司法書士会から聞いております。
○福島瑞穂君 特認制度が、大臣認定で認められる司法書士の割合が三一%というのを多いと見るか少ないと見るかは人によって様々かもしれません。
 ただ、私自身は、業界の地位向上ということであれば、特認制度で認められるよりはやはり一律に試験などで認められるという、国家試験合格者の数を増やしていくべきだ、要するに特認制度というのが、悪い言葉で言えば、ちっちゃな天下りということになりかねないので、この三一%という数字は実は非常に高いのではないかというふうにも思っております。
 特認制度は将来的には廃止をする必要があるのではないか。副検事、検察事務官と司法書士の仕事の関連性というのはあるのでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) まず、一般的に特認制度の趣旨でございますが、これは、法務事務官等、職務に長年従事したということによりまして培われた知識及び能力、こういうものを社会的に活用しようということから特認の制度を認めているわけでございます。
 特に、登記に関して申し上げれば、もちろん司法書士の方々は試験を受けて適切にその事務を処理していただいているわけでありますが、登記所においても、新たに入った職員については、それぞれ必要な研修等を加えつつ、その法律的な事務処理能力の向上を図っているところでございまして、そういったことで、長年経験をして能力を身に付けたということであれば、その能力を社会的に活用するということにはそれなりの意義があるだろうと思っておりまして、今後ともこの特認制度を維持していくべきものと考えております。
 御指摘の副検事、検察事務官でございますが、これは司法書士の職務として検察庁あるいは裁判所に提出する書類の作成ということも業務に入っておりますので、その限りで全く関係がないわけではございませんし、こういう方々は法律的な事務を職業として行ってきたわけでございますので、その一定の能力に達している方であれば、司法書士としてやはりその能力を振るっていただくということが相当ではないかと思っております。
○福島瑞穂君 長年、能力を持って働いてきて、それを社会的に役立てたいというのであれば、試験を受けてなるべきではないですか。
○政府参考人(房村精一君) 試験といいますのは、基本的に能力を大勢の人に関して判定するために最も能率的な方法ということでこれが取られているわけでございますが、ただいま申し上げたような、現実に例えば登記の事務処理を行っているということであれば、その職員の登記の事務処理に関する能力等は十分見極めが付いているわけでございますので、これを改めて試験をするまでもなく認定ができるということがそもそもこういう制度の基本的考え方ではなかろうかと思っております。
○福島瑞穂君 能力が客観的に明らかであれば、試験にすればもっとはっきりするじゃないですか。能力があるんだったら試験を受ければいいわけで、ごめんなさい、だから試験を受ければいいという言い方もちょっとひどいんですが、例えば弁護士事務所でも、秘書や事務の人たちは登記の手続などもやってくれたり、能力が高い人もたくさんいます。でも、その人たちは試験を受けて司法書士になりますし、現在、司法書士は非常にやはり難しい試験になっています。
 もちろん、実務をやってきた人たちの能力が高いことはよく分かりますし、認めます。でも、そうであるならば、私は試験はすごく残酷、形式的なようで、恨みっこなしで単一的だというふうに思うんですね。ですから、きちっと特認制度みたいなバイパスをいろんな制度で認めるのではなく、試験やっちゃえばいいというふうに思うんですが、いかがでしょうか。能力があればほとんど通られるんじゃないでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) その点は繰り返しになりますが、やはり実務において磨いた能力というものを直ちに活用していただくという趣旨で、それなりにこちらも特認を認める職員については内規等を作って、単純に何年いればということではなくて、それなりの経歴を踏んだ、経験を積んだ人を認定しているわけでございますので、その点をあえて試験を受けさせるまでのことはないのではないかという具合に考えているところでございます。
○福島瑞穂君 例えば、公証人についても、試験をやると書いてあって一度も試験を行ったことがないと。今、やはり国民の目は厳しくなっているので、公務員の優遇策みたいなことはもうこれから維持できないんではないかと。
 要するに、さっき試験が難しいという声もありましたので、試験をどうするかという問題はもちろんあるわけですが、本当に公平に試験をやって、それで試験の中身についてはいろいろ改革をするなり、それはあればいいと思うんですね。でも、公務員については、長年勤務したということだけで優遇するというのはもう理解を得られないんじゃないかと考えますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 長年勤めただけで認めているわけではございませんで、それなりに当然、公務員の場合には研修等で能力を身に付けてもらうという機会を与えると同時に、日ごろの勤務ぶりを見つつ、能力のある人間についてはそれなりに責任のあるポストに回すという形で人事管理が行われております。
 そういう形で、長年掛けてその能力が実証された者を特認として認めていくということで運用をいたしているわけでございますので、確かにそういう、それなら試験受ければという御意見はあろうかと思いますが、私どもから見ればそれだけ時間を掛けて能力の判定をした上で認定をしておりますので、あえて試験を受けさせるまでのことはないのではないかということでございます。
○福島瑞穂君 いや、試験でやった方が一律で、非常に簡単で、勤務成績がいいから試験なくていいというのは、ちょっともうどうなのでしょうか。いや、もちろん、試験をやればほとんどそれだけおっしゃるように優秀であれば通られると思うので、と思います。
 それで、続けて税理士の特認制度についてお聞きをいたします。
 税理士の、税理士試験を受けてなる人と、それから税務署の職員として働いてきた人の割合、パーセンテージを教えてください。
○政府参考人(福田進君) お答え申し上げます。
 税理士資格の取得事由には、今、先生御指摘のように、税理士試験合格、税理士試験免除のほか、弁護士、公認会計士資格取得があるとか、昭和二十六年の税理士制度創設以降、資格取得制度の改正が行われておりますので、なかなかその把握は難しいわけでございますが、一つの見方といたしまして、平成十三年三月末現在、税理士として登録をされている者のうちで、短期間でも職員であった者で、その後試験を受けられたり、あるいは弁護士になられたりとか、そういった者を含んでおりますが、いずれにしても元国税職員の占める割合は三七・六%ということでございます。
○福島瑞穂君 税理士試験に一本化するということはいかがでしょうか。要するに、税務署の職員を長くやっていれば税理士になれるわけですよね。ですから、その特認制度についての見直しについてはいかがでしょうか。
○政府参考人(福田進君) 今、先生御指摘の、国税職員が税理士となるために必要な学識や応用能力を有していると認められまして、税理士試験の試験科目の全科目を免除されるためには、国家公務員の採用試験に合格し、職員として採用された上で、二十三年以上の実務経験、それから監督的職務への五年以上の在職、並びに国税審議会の指定した高度の研修の修了、こういった要件を満たすことが必要でございまして、ただ単に勤務していればいいということではございませんで、一言付け加えさせていただきたいと存じます。
 今申し上げましたように、行政の専門実務家に対しまして、その実務経験を通じて得られる知識を尊重して、その分野における資格取得に必要な試験の免除を認めることは、今御議論されておりますように、例えば弁理士、行政書士など、我が国の他の公的資格、あるいは主要国の職業専門家にも多く見られるところでございまして、私は、その考え方自体十分な合理性があると認められているのではないかというふうに考えております。
○福島瑞穂君 ただ、税理士会も司法書士会もそうだと思うんですが、試験を受けてなった人と、それから公務員をやってその業績の結果なっている人との間の溝というのはあると思うんですね。しかも、公務員で長年やって、もちろん優秀で能力を発揮されてきたというのはよく分かりますが、やはり基準が分からない、はっきりしない。私自身は、優秀でその問題についてプロであるのであれば、やはりきちっと試験を受けて入ってくるという方が、業界全体の透明性を高めるとか、格上げということには役立つというふうに思っております。
 ですから、是非、税理士の特認制度について今後検討の余地はあるのでしょうか。お願いします。
○政府参考人(福田進君) 繰り返しで恐縮でございますが、行政の専門実務家に対しまして、資格取得に必要な試験の免除を認めること、これ自体合理性があると認められていることを御理解願えればと存じます。
 いずれにいたしましても、税理士について申し上げますと、税法も会計制度も御案内のように年とともに改正されておりますので、試験の合格者であれ免除者であれ、税理士の方々は実務経験と自己研さんを通じて常に税理士としての使命を果たされているものと私どもは承知しております。
○福島瑞穂君 特認制度については、本当に公平なのかどうかということについて、今後も是非検討をよろしくお願いします。
 土地家屋調査士の特認制度はどうなっているでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 土地家屋調査士につきましても特認制度は認められておりますし、今回の法改正でもその点について別段の変更は加えておりません。
○福島瑞穂君 何年やれば土地家屋調査士になれるのでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 法律上の規定としては、十年間勤めればということになっております。
○福島瑞穂君 十年きちっと働いてきたという業績は分かるんですが、今どこの資格試験もとてつもなく難しくなって、希望が非常に多いと。そうすると、若い人から見れば、公務員になったら割とバイパスで入れるみたいな、それは長期的に見て業界全体にとっても実は良くないと思いますし、もう少し透明、公平、一律、画一、きちっと研修もやりというふうに思います。是非、今後この点について再考していただけるようにお願いいたします。
 それで、土地家屋調査士について、表示に関する登記のうち申請義務を課している手続に要する報酬の基準などについて、公共性を踏まえた上で分かりやすい方がいいのではないかと。今回、報酬規定については、司法書士及び土地家屋調査士の業務に係る報酬規定が会則から削除されることに伴うわけですが、適切な報酬設定が行われるよう周知徹底などは必要だと考えますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、今回の改正で報酬規定につきましては、司法書士会、土地家屋調査士会とも会則事項から落としております。
 そういう場合に、利用する国民の立場から見て、その依頼した事務に対してどの程度の報酬を払わなければならないのかということが分かりにくくなっては、これは利用する立場の国民が不安に駆られますので、その点については利用する国民の立場に立って、どの程度の報酬を請求されるのかということが分かるように、それぞれの各資格者が報酬基準を定めまして自分の事務所内に掲示するというようなこと、あるいはそういった会員の報酬基準の定め方が大体どの範囲なのかというようなことを、それぞれの会において広報していただくというようなことを是非実現していただきたいという具合には考えております。
○福島瑞穂君 司法書士会の特別研修の内容や期間や内訳についてはどうお考えでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 司法書士会の研修でございますか。──基本的に司法書士の方々は現在、裁判所に提出する書類の作成はできることになっておりますので、今回与えられる代理権の行使については、現実に法廷に出廷して訴訟代理人として活動するということが新たな業務になりますので、その点について、弁論技術であるとか証人尋問技術、あるいは事件についての争点の把握の仕方、あるいは立証計画、こういったような正に法廷実務家として要求される能力を身に付けるような、そういった研修内容。方法としては、もちろん講義、セミナー、あるいは法廷傍聴、模擬裁判、そういった多様な方法を組み合わせて、今言ったような能力を身に付けていただきたいと思っております。
○福島瑞穂君 特殊法人改革と司法書士会及び土地家屋調査士会との関係について教えてください。
○政府参考人(房村精一君) 特殊法人改革におきましては、日本司法書士会連合会あるいは日本土地家屋調査士連合会との関係では、平成十三年十二月十九日に閣議決定されました特殊法人等整理合理化計画において、業務、財務等についてホームページへの掲載等、情報公開を一層推進すること、それから公正有効な競争の確保の観点から、単位会を含め、報酬規定を会則記載事項から削除すること、独占禁止法上問題となるおそれのある広告規制は行わないこと、こういうことが求められております。
 今回、私どもの提出しておりますこの改正法は、いずれもこの特殊法人改革の方向に沿ったものでございますので、これ以上について特殊法人改革と各会との関係の検討はいたしておりません。
○委員長(高野博師君) 時間です。
○福島瑞穂君 はい。
 じゃ、時間ですので、終わります。
○委員長(高野博師君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後三時十五分散会