3 補助開始の審判
(一) 審判の要件
(1) 精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求によって、補助開始の審判をすることができるものとする。ただし、1(一)又は2(一)本文に定める原因がある者については、この限りでないものとする。
(2) 本人以外の者の請求によって補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならないものとする。
(3) 補助開始の審判は、(三)(1)の審判又は二3(四)(1)の審判とともにこれをしなければならないものとする。
(二) 被補助人及び補助人
補助開始の審判を受けた者は、被補助人としてこれに補助人を付すものとする。
(三) 同意権付与の審判
(1) 家庭裁判所は、(一)(1)本文に掲げる者又は補助人若しくは補助監督人の請求によって、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができるものとする。ただし、その同意を得なければならない行為については、2(三)(1)に定める行為の一部に限るものとする。
(2) 本人以外の者の請求によって(1)の審判をするには、本人の同意がなければならないものとする。
(3) 補助人の同意を得なければならない行為について補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求によって、補助人の同意に代わる許可を与えることができるものとする。
(4) 補助人の同意を得なければならない行為でその同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、これを取り消すことができるものとする。
(四) 審判の取消し
(1) (一)(1)本文に定める原因が止んだときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求によって、補助開始の審判を取り消さなければならないものとする。
(2) 家庭裁判所は、(1)に掲げる者の請求によって、(三)(1)の審判の全部又は一部を取り消すことができるものとする。
(3) (三)(1)の審判及び二3(四)(1)の審判をすべて取り消す場合においては、家庭裁判所は、補助開始の審判を取り消さなければならないものとする。
4 開始の審判相互の調整
(一) 後見開始の審判をする場合において本人が被保佐人又は被補助人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る保佐又は補助の開始の審判を取り消さなければならないものとする。
(二) (一)は、保佐開始の審判をする場合において本人が成年被後見人若しくは被補助人であるとき又は補助開始の審判をする場合において本人が成年被後見人若しくは被保佐人であるときについて準用するものとする。
5 取消権者
能力の制限によって取り消し得べき行為は、制限能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び3(三)(1)の審判を受けた被補助人をいう。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、これを取り消すことができるものとする。
3 補助
(一) 補助の開始
補助は、補助開始の審判によって開始するものとする。
(二) 補助人及び臨時補助人
(1) 補助人の選任
家庭裁判所は、補助開始の審判をするときは、職権で、補助人を選任するものとする。(2) 成年後見人に関する規定の準用
民法第八百四十二条及び第八百四十四条から第八百四十六条までの規定並びに1の(二)(3)イからエまで、(4)及び(5)は、補助人について準用するものとする。(3) 臨時補助人の選任
補助人又はその代表する者と被補助人との利益が相反する行為については、補助人は、臨時補助人の選任を家庭裁判所に請求しなければならないものとする。ただし、補助監督人がある場合は、この限りでないものとする。
(三) 補助監督人
(1) 補助監督人の選任
家庭裁判所は、必要があると認めるときは、被補助人、その親族若しくは補助人の請求によって、又は職権で、補助監督人を選任することができるものとする。(2) 成年後見監督人に関する規定の準用
民法第六百四十四条、第六百五十四条、第六百五十五条、第八百四十四条から第八百四十六条まで、第八百五十条、第八百五十一条及び第八百六十二条の規定並びに1の(二)(3)エ、(4)及び(5)及び(四)(2)から(4)までは、補助監督人について準用するものとする。この場合において、同法第八百五十一条第四号中「被後見人を代表する」とあるのは、「被補助人を代表し、又は被補助人がこれをすることに同意する」と読み替えるものとする。
(四) 代理権付与の審判
(1) 家庭裁判所は、一3(一)(1)本文に掲げる者又は補助人若しくは補助監督人の請求によって、被補助人のために特定の法律行為について補助人に代理権を付与する旨の審判をすることができるものとする。
(2) 2(四)(2)及び(3)は、(1)の審判について準用するものとする。
(五) 補助の事務等
(1) 身上配慮義務及び本人の意思の尊重
2(五)(1)は、補助の事務について準用するものとする。(2) 後見の事務に関する規定の準用
民法第六百四十四条、第八百六十二条及び第八百六十三条の規定並びに1(四)(2)から(5)までは補助の事務について、第八百二十四条ただし書の規定は補助人が被補助人を代表する場合について準用するものとする。
(3) 後見の終了に関する規定の準用
民法第六百五十四条、第六百五十五条、第八百七十条、第八百七十一条及び第八百七十三条の規定は補助人の任務が終了した場合について、同法第八百三十二条の規定は補助人又は補助監督人と被補助人との間において補助に関して生じた債権について準用するものとする。
民法の禁治産及び準禁治産の制度を後見、保佐及び補助(以下「後見等」という。)の制度に改め、新たに任意後見制度を創設することに伴い、禁治産及び準禁治産の宣告を戸籍に記載する現行の公示方法に代え、次のとおりの新たな登記制度を創設するものとする。
後見等及び任意後見契約についての登記に関する事務は、法務大臣の指定する法務局若しくは地方法務局又はその支局若しくは出張所が、登記所としてつかさどるものとする。
登記所における事務は、指定法務局等に勤務する法務事務官で、法務局又は地方法務局の長が指定した者が、登記官として取り扱うものとする。
1 後見等の登記は、裁判所書記官の嘱託又は後見登記等ファイルの記録(以下「登記記録」という。)に記録されている者等の申請により、後見等の種別、開始の審判をした裁判所、開始の審判の確定年月日、成年被後見人、被保佐人及び被補助人(以下「成年被後見人等」という。)の氏名、出生の年月日、住所及び本籍、成年後見人、保佐人及び補助人(以下「成年後見人等」という。)の氏名及び住所(法人にあっては、名称又は商号及び主たる事務所又は本店)、保佐人又は補助人の同意を要する行為又は代理権の範囲、成年後見人等が数人ある場合におけるその権限行使についての定め、成年後見監督人、保佐監督人及び補助監督人(以下「成年後見監督人等」という。)の氏名及び住所(法人にあっては、名称又は商号及び主たる事務所又は本店)等の所要の事項を磁気ディスクをもって調製する後見登記等ファイルに記録することによって行うものとする。
2 任意後見契約の登記は、公証人若しくは裁判所書記官の嘱託又は登記記録に記録されている者等の申請により、任意後見契約に係る公正証書の作成年月日、本人の氏名、出生の年月日、住所及び本籍、任意後見受任者又は任意後見人の氏名、住所(法人にあっては、名称又は商号及び主たる事務所又は本店)及び代理権の範囲、任意後見監督人の氏名、住所(法人にあっては、名称又は商号及び主たる事務所又は本店)及び選任の審判の確定年月日等の所要の事項を後見登記等ファイルに記録することによって行うものとする。
3 登記記録は、法令に別段の定めがある場合を除くほか、後見等の開始の審判又は任意後見契約ごとに編成するものとする。
4 登記官は、後見等又は任意後見契約について、終了の登記をしたときは、当該登記に係る登記記録を閉鎖し、これを磁気ディスクをもって調製する閉鎖登記ファイルに記録しなければならないものとする。
四 登記事項証明書等1 成年被後見人等又はその配偶者、四親等内の親族、成年後見人等、成年後見監督人等、未成年後見人若しくは未成年後見監督人は、登記官に対し、当該成年被後見人等に係る後見等について、後見登記等ファイルに記録されている事項を証明した書面(以下「登記事項証明書」という。)の交付を請求することができるものとする。退任した成年後見人等若しくは成年後見監督人等又は成年被後見人等について任意後見契約が登記されている場合における任意後見受任者も、同様とするものとする。
2 任意後見契約に係る本人又はその配偶者、四親等内の親族、任意後見受任者、任意後見人、任意後見監督人、成年後見人等、成年後見監督人等、未成年後見人若しくは未成年後見監督人は、登記官に対し、当該任意後見契約について、登記事項証明書の交付を請求することができるものとする。退任した任意後見受任者、任意後見人又は任意後見監督人も、同様とするものとする。
3 成年被後見人等であった者又はその成年後見人等若しくは成年後見監督人等であった者若しくは相続人その他の承継人は、登記官に対し、当該成年被後見人等であった者に係る後見等について、閉鎖登記ファイルに記録されている事項を証明した書面(以下「閉鎖登記事項証明書」という。)の交付を請求することができるものとする。
4 任意後見契約に係る本人であった者又はその任意後見受任者、任意後見人若しくは任意後見監督人であった者若しくは相続人その他の承継人は、登記官に対し、当該任意後見契約について、閉鎖登記事項証明書の交付を請求することができるものとする。
5 国又は地方公共団体の職員は、職務上必要とする場合には、登記官に対し、登記事項証明書又は閉鎖登記事項証明書の交付を請求することができるものとする。
五 手数料登記の原因となった審判の申立人又は任意後見契約の公正証書の嘱託人、登記の申請をする者及び登記事項証明書又は閉鎖登記事項証明書の交付を請求する者は、政令で定める額の手数料を納めなければならないものとする。