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1  後見開始の審判

(一)  審判の要件

精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況に在る者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求によって、後見開始の審判をすることができるものとする。

(二)  成年被後見人及び成年後見人        

後見開始の審判を受けた者は、成年被後見人としてこれに成年後見人を付すものとする。
   

(三)  取消権

成年被後見人の法律行為は、これを取り消すことができるものとする。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでないものとする。
   

(四)  審判の取消し

(一)に定める原因が止んだときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人(未成年後見人及び成年後見人をいう。以下同じ。)、後見監督人(未成年後見監督人及び成年後見監督人をいう。以下同じ。)又は検察官の請求によって、後見開始の審判を取り消さなければならないものとする。

4  開始の審判相互の調整

(一)   後見開始の審判をする場合において本人が被保佐人又は被補助人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る保佐又は補助の開始の審判を取り消さなければならないものとする。

(二)  (一)は、保佐開始の審判をする場合において本人が成年被後見人若しくは被補助人であるとき又は補助開始の審判をする場合において本人が成年被後見人若しくは被保佐人であるときについて準用するものとする。

5  取消権者

能力の制限によって取り消し得べき行為は、制限能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び3(三)(1)の審判を受けた被補助人をいう。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、これを取り消すことができるものとする。

1  後見

(一)  後見の開始

後見開始の審判があったときは、後見が開始するものとする。

(二)  成年後見人

(1)  配偶者法定後見人制度の廃止
民法第八百四十条(配偶者法定後見人)の規定は、削除するものとする。

(2)  成年後見人の人数制限の廃止
成年後見人の人数には制限を設けないものとする。

(3)  成年後見人の選任
ア  家庭裁判所は、後見開始の審判をするときは、職権で、成年後見人を選任するものとする。

イ  成年後見人が欠けたときは、家庭裁判所は、成年被後見人若しくはその親族その他の利害関係人の請求によって、又は職権で、成年後見人を選任するものとする。

ウ  成年後見人が選任されている場合においても、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、イに掲げる者若しくは成年後見人の請求によって、又は職権で、更に成年後見人を選任することができるものとする。

エ  成年後見人を選任するには、成年被後見人の心身の状態並びに生活及び財産の状況、成年後見人となる者の職業及び経歴並びに成年被後見人との利害関係の有無(成年後見人となる者が法人であるときは、その事業の種類及び内容並びにその法人及びその代表者と成年被後見人との利害関係の有無)、成年被後見人の意見その他一切の事情を考慮しなければならないものとする。

(4)  成年後見人の解任
成年後見人の解任の請求権者に成年被後見人を加えるものとする。

(5)  成年後見人の欠格事由
民法第八百四十六条第二号(禁治産者及び準禁治産者に関する欠格事由)の規定は、削除するものとする。

(三)  成年後見監督人

(

1)  成年後見監督人の選任
家庭裁判所は、必要があると認めるときは、成年被後見人、その親族若しくは成年後見人の請求によって、又は職権で、成年後見監督人を選任することができるものとする。

(2)  成年後見人に関する規定の準用
民法第六百四十四条、第六百五十四条、第六百五十五条、第八百四十四条から第八百四十六条まで及び第八百六十二条の規定並びに(二)(3)エ、(4)及び(5)及び(四)(2)から(4)までは、成年後見監督人について準用するものとする。

(四)  後見の事務

(1)  身上配慮義務及び本人の意思の尊重 

ア  成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならないものとする。

イ  民法第八百五十八条第二項(精神病院への入院等についての許可)の規定は、削除するものとする。

(2)  複数の成年後見人の権限行使

ア  成年後見人が数人あるときは、家庭裁判所は、職権で、数人の成年後見人が共同して、又は事務を分掌して、その権限を行使すべきことを定めることができるものとする。

イ  家庭裁判所は、職権で、アによる定めを取り消すことができるものとする。

ウ  成年後見人が数人あるときは、第三者の意思表示は、その一人に対してすれば足りるものとする。

(3)  居住用不動産の処分についての許可

成年後見人は、成年被後見人に代わって、その居住の用に供する建物又はその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければならないものとする。

(4)  後見の事務に要する費用

成年後見人が後見の事務を行うために必要な費用は、成年被後見人の財産の中から支弁するものとする。

(5)  後見の事務についての必要な処分

後見の事務についての必要な処分の請求権者に成年被後見人を加えるものとする。

第三  後見登記等に関する法律案(仮称)


民法の禁治産及び準禁治産の制度を後見、保佐及び補助(以下「後見等」という。)の制度に改め、新たに任意後見制度を創設することに伴い、禁治産及び準禁治産の宣告を戸籍に記載する現行の公示方法に代え、次のとおりの新たな登記制度を創設するものとする。

一  登記所

後見等及び任意後見契約についての登記に関する事務は、法務大臣の指定する法務局若しくは地方法務局又はその支局若しくは出張所が、登記所としてつかさどるものとする。


二  登記官

登記所における事務は、指定法務局等に勤務する法務事務官で、法務局又は地方法務局の長が指定した者が、登記官として取り扱うものとする。

三  後見等の登記、任意後見契約の登記等

1  後見等の登記は、裁判所書記官の嘱託又は後見登記等ファイルの記録(以下「登記記録」という。)に記録されている者等の申請により、後見等の種別、開始の審判をした裁判所、開始の審判の確定年月日、成年被後見人、被保佐人及び被補助人(以下「成年被後見人等」という。)の氏名、出生の年月日、住所及び本籍、成年後見人、保佐人及び補助人(以下「成年後見人等」という。)の氏名及び住所(法人にあっては、名称又は商号及び主たる事務所又は本店)、保佐人又は補助人の同意を要する行為又は代理権の範囲、成年後見人等が数人ある場合におけるその権限行使についての定め、成年後見監督人、保佐監督人及び補助監督人(以下「成年後見監督人等」という。)の氏名及び住所(法人にあっては、名称又は商号及び主たる事務所又は本店)等の所要の事項を磁気ディスクをもって調製する後見登記等ファイルに記録することによって行うものとする。

2  任意後見契約の登記は、公証人若しくは裁判所書記官の嘱託又は登記記録に記録されている者等の申請により、任意後見契約に係る公正証書の作成年月日、本人の氏名、出生の年月日、住所及び本籍、任意後見受任者又は任意後見人の氏名、住所(法人にあっては、名称又は商号及び主たる事務所又は本店)及び代理権の範囲、任意後見監督人の氏名、住所(法人にあっては、名称又は商号及び主たる事務所又は本店)及び選任の審判の確定年月日等の所要の事項を後見登記等ファイルに記録することによって行うものとする。

3  登記記録は、法令に別段の定めがある場合を除くほか、後見等の開始の審判又は任意後見契約ごとに編成するものとする。

4  登記官は、後見等又は任意後見契約について、終了の登記をしたときは、当該登記に係る登記記録を閉鎖し、これを磁気ディスクをもって調製する閉鎖登記ファイルに記録しなければならないものとする。


四  登記事項証明書等

1  成年被後見人等又はその配偶者、四親等内の親族、成年後見人等、成年後見監督人等、未成年後見人若しくは未成年後見監督人は、登記官に対し、当該成年被後見人等に係る後見等について、後見登記等ファイルに記録されている事項を証明した書面(以下「登記事項証明書」という。)の交付を請求することができるものとする。退任した成年後見人等若しくは成年後見監督人等又は成年被後見人等について任意後見契約が登記されている場合における任意後見受任者も、同様とするものとする。

2  任意後見契約に係る本人又はその配偶者、四親等内の親族、任意後見受任者、任意後見人、任意後見監督人、成年後見人等、成年後見監督人等、未成年後見人若しくは未成年後見監督人は、登記官に対し、当該任意後見契約について、登記事項証明書の交付を請求することができるものとする。退任した任意後見受任者、任意後見人又は任意後見監督人も、同様とするものとする。

3  成年被後見人等であった者又はその成年後見人等若しくは成年後見監督人等であった者若しくは相続人その他の承継人は、登記官に対し、当該成年被後見人等であった者に係る後見等について、閉鎖登記ファイルに記録されている事項を証明した書面(以下「閉鎖登記事項証明書」という。)の交付を請求することができるものとする。

4  任意後見契約に係る本人であった者又はその任意後見受任者、任意後見人若しくは任意後見監督人であった者若しくは相続人その他の承継人は、登記官に対し、当該任意後見契約について、閉鎖登記事項証明書の交付を請求することができるものとする。

5  国又は地方公共団体の職員は、職務上必要とする場合には、登記官に対し、登記事項証明書又は閉鎖登記事項証明書の交付を請求することができるものとする。


五  手数料

登記の原因となった審判の申立人又は任意後見契約の公正証書の嘱託人、登記の申請をする者及び登記事項証明書又は閉鎖登記事項証明書の交付を請求する者は、政令で定める額の手数料を納めなければならないものとする。

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