視点 オピニオン21  上毛新聞掲載2006.5.08
小栗上野介顕彰歴史生かし地域づくり


 国道406号を倉渕郵便局の信号で烏川方面に折れると、橋の手前に「丸に立浪」の旗がひるがえり、小栗上野介の顕彰慰霊碑が見えてきます。碑文に「偉人小栗上野介罪なくして此こ所こに斬らる」と刻まれています。

 この碑は昭和四年、当時の倉田村長、市川元吉氏が委員長になり、倉田・烏渕両村の有志から寄付を募って同七年に建立したもので、碑面の文字は上野介夫人道子の妹の子、法学博士・蜷川新氏の筆になります。同十年の水害で流され、幸い碑は破損せずに発見され、翌十一年に現位置に再建されました。建立当時は、現在の場所より四十メートルほど入った河原の烏川側の最も処刑地に近い場所にあったということです。

 小栗上野介顕彰の慰霊法要は、一周忌の明治二年から毎年行ってきましたが、このころから遺跡保存を中心とした顕彰活動が始まり、昭和十二年には「遺跡保存会」ができ、同三十年から「小栗上野介顕彰会」となって機関誌『たつなみ』を発行するなどの活動をしています。

 近年では平成九年から毎年、「小栗まつり」が地域の人やボランティアに支えられて開催され、全国の小栗上野介や幕末の歴史ファンや関連する地域の人々が神奈川県横須賀市、長野県小布施町、福島県郡山市、同県高郷村(現・喜多方市)、岐阜県金山町(現・下呂市)、山口県萩市など遠方からもやってきて、交流を深めています。

 四月十六日には、横須賀市民や京浜地区の小栗上野介ファンで構成する「横須賀小栗上野介顕彰会」が発足しました。これは平成の合併により旧倉渕村と横須賀市との公的友好関係は解消されましたが、熱意のある市民レベルで顕彰・交流を継続しようとするものです。

 今年も五月二十一日に「小栗まつり」が予定されています。田植えシーズンの日曜日とあって、地元の兼業農家は大忙しですが、「倉渕のこの季節の田んぼの風景が好きで楽しみだ」と語って、毎年参加するボランティアもいます。地元民には生活のための作業が、外部の人の目からは心を癒やす一枚の絵に見えるのかもしれません。

 「小栗まつり」は公的式典だけでなく、楽しい手づくりのお祭りを目指して今年で十年目を迎えようとしています。

 私たちの団体は「まず、できることから自ら実践する」をモットーに生活文化・歴史を覚醒(かくせい)させ、これを生かして活力ある地域づくりを目指して活動しています。地域はそれぞれ自立と活性化を目指し、自ら考え、共に行動できる人を求めています。私たちは豊かな自然と歴史に恵まれた地域で、仲良く元気に助け合い、魅力ある地域づくりに貢献したいと思います。また、広範囲に多くの人たちと交流と連携を深め、この素晴らしい故郷を次代を担う人たちに引き継ぎたいと考えています。

 歴史の事実を見直すとともに、先人の思想行動に触れ、自ら参加し、自ら楽しむ人との邂逅があることを望んでいます。
昭和10年の大水害(写真で見る倉渕の今昔から)
にぎあう小栗まつり
いぼいしと田植え
手打ちそばの店(地域づくりボランティア)

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