3日目は、潮周りを考え、通常は9時の出船のところをタミーにお願いして7時に出船した。この時間ではチャーター会社の弁当は間に合わないので、ホテルで用意してもらった。この時も、船に乗り込む前に弁当の中身を覗くことを怠らなかった。以前、シドニーでボートチャーターをしたとき、ホテルの豪華弁当を船に持ち込んだ。どういうわけか、午前中は全くのあたり無し。あきれて、ランチにしようとバスケットを開けたら、中から他のフルーツに混じって、バナナが出てきた。キャプテンと顔を見合わせ「パン・ナン・ナー」と思いっきりハモッてしまった。西洋の船釣りではバナナはジンクスとされるので、ホテル弁当を持ち込むときは、先ず、バナナが入っていないことを確認した上で乗船することをお勧めする。 今日の目的地はウーロン島界隈。この海域ではイルカやマダラトビエイに時々出会う。僕らはダイバーではないので、「出会う」という意味は水面上での話になる。2001年の釣行記でも紹介したが、マダラトビエイ(パラオの海の女神)は空中高くジャンプする。その姿を漁師が見た日は必ず大漁になる。若しくは、いいことが起こる。これは迷信なんかじゃない。真実だ。パラオの漁師にとって、バナナとイーグル・レイは反意語ということになる。 |
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ガイドのタミー(左)とキャプテンのジャスティン 二人は幼なじみで気が合うらしい。 バウデッキでファイト中 Tシャツには Life's Short, Fish Hard. と書いてある、 パラオ・GTフィッシング倶楽部のメンバーTシャツ ジャイアント・トレバリー23kg 使用タックル: ロッド:フィッシャーマン GT・Game・T リール:ダイワ・ソルティガZ6000GT ライン:バリバス・アバニMaxP・GT5号 リーダー:140Lb ポッパー:ザウルス・トビポップ 嬉しい外道・セイルフィッシュ35kg 使用タックル: ロッド:フィッシャーマン GT・Game・T リール:ダイワ・ソルティガZ6000 ライン:バリバス・アバニMaxP・GT6号 リーダー:140Lb ポッパー:スカジット・デザインズ・パンプキン |
天気は快晴。キャプテンのジャスティンとガイドのタミーは暑さに弱い。昨日のランチ時間は無人島で「アツイ、アツイ」といいながら、だるそうにしていた。群馬県の内陸で真夏の40度を経験している斉藤君と僕にとって、32度くらいは心地よい暑さだ。今回は乾季でスコールには出くわさなかったが、以前、スコールに遭った時、この二人は「サムイ、サムイ」と震えていた。彼らが生存できる気温の範囲は摂氏26度から33度位までだと思う。 8時には浅瀬が限り無く広がるウーロン島付近の海域でポッパーを投げていた。ボートは右舷からの心地いい風を受けながらドッドッドッドとゆっくり走り続ける。左舷11時方向にキャスティングを続ける。10投目くらいでトビポップに10kg位のGTが飛びついてきた。僕は今回、23本のポッパーを持参したが、トビポップは1本しか持って来なかった。トビポップは初心者向けのポッパーと侮っていた。僕の弟子の斉藤君は1日目、2日目とトビポップで好調にサカナを捕っている。やっと判ったことだが、パラオに限らず、トビポップはGTにとって一番おいしいポッパーらしい。飛距離こそ月並だが、上手に引くと非常にいいポップ音を発する。テクニックを必要とする玄人好みのポッパーでもあることにやっと気が付いた。スプラッシュは横に広がらず、狭く縦に上がる。ちょうど、高飛び込みの着水のようないい音と狭いスプラッシュを上げる。投げ始めてから20分位ごとに、カスミやGTが上がった。一時間後に左の23kのGTが上がった。パラオとしてはこれも大物の部類だ。 場所を移動する。今日は、移動で時間をロスしたくないので、この海域で1日過ごす。移動といっても2〜5分位だ。左5m位のところで女神が跳ねた。2mは水面から上がったろうか。パラオの女神は1回転して着水した。そろそろ、何かが出る。キャスティングのパターンは同じ。ボートを低速で進めながら、思いっきり11時方向に投げ、ロングジャークを繰り返し、ルアーが9時方向15m位に来たところで回収を始める。いつも思うことだが、一箇所一投で上に上に登るこの釣は、渓流でのフライフィッシングに似ている。ドライ・フライの超大型バージョンだ。水面でサカナがルアーを追うのを目で見て楽しみ、ヒットする瞬間水面が盛り上がり、大きくスプラッシュを上げて飛びつく姿を見て興奮する。慌てる気持ちを抑えて、1テンポおいてアワセを思いっきり入れる。慣れないうちは、目であわせてしまうが、それではのらない。サカナの重みがライン、ロッドを伝わって手元に届いてから、アワセを3回位思いっきり入れる。 左前方にロングキャスト。何かがいる。サメか?ルアーが20m位のところで背びれが見えた。サメのそれとは違う。マリーンとだれかが叫んだ。15mくらいのところでワンバイト、がフックオンならず。10mのところでもう一度バイトした。アワセを入れた瞬間、ジャンプ。その全形を見せた。セイルフィッシュだった。ドラグを閉めようとする僕を見て、タミーが後ろでドラグを閉めるなと叫ぶ。これからは、ガイドとキャプテンと釣師のチームワークだ。このサカナは捕りたいと誰もが思った。ジャスティンは僕の真後ろで僕をアシストしながら、タミーにラインの角度を知らせる。タミーはラインのテンションと水面との角度を見ながら、慎重に船を寄せる。10分か20分か分らない。もう限界かと思った時、相手も限界に達した。巻ける。最後の5m位を巻いてタミーがビルを持った。大物をチームが捕った。キャスティングでは、パラオで今年初めてのセイルとのことだった。 |
この時は、ソルティガZ6000GTからパワーギヤのZ6000にリールを変えていた。通常ギヤー比の低いリールはGTFに使わない。トルクの低いハイスピードタイプで巻ききれた自信はない。マダラトビエイを見たこと。比較的近くで掛かったこと。この日に限り早く出船していたこと。この偶然のどれか一つでも欠けていたら、日本の釣師が南の広い海で、この美しいサカナに「出会う」ことは無かったろう。 | |
それにしても、どうしてこんなに美しく進化したんだろう。 |